【23号】神話時代の同窓会-桜岡会のこと-/古賀逸策、斉藤忠夫、川上潤三

同窓会もお陰様で会員数4,000名を越え、益々盛大なものになっておりますが、戦後生まれの会員も1,000名に達し、同窓会が現在の姿になるまでの経過などについては、ほとんど知らない世代が増加しております。そこで、この際、同窓会が現在の形になるまでについて、わかる範囲でまとめてみました。何分古い事で、当時の書類等の多くが散逸してしまい、推測に頼る部分が多く、誤りがあるかも知れません。本稿をお読みになって、訂正すべき点がございましたら、同窓会事務局までお知らせ下されば幸いに存じます。

1.桜岡会まで

明治30年頃から、当時教室の最長老教授であった中野先生を中心に、電気工学科の卒業生と在校生が懇親会を開催し、同窓会誌を発行していたようであるが1)、この集まりはむしろ在校生を中心としたようで、現在の同窓会とは性質が異なっていたと思われる。したがって、現在我々が知りうる範囲では、桜岡会が現在の同窓会の前身と考えるべきであろう2)。この会は、中野初子先生の亡くなられた大正3年2月16日以降、大正4年または5年から、毎年3月14日に開かれていたようである。この会の名称は、中野初子先生が故郷佐賀県小城の地名に因んで、「桜岡」と号しておられたことに由来する。この会は中野先生を記念するためのもので、卒業生全体を対象としたものではなかったようではあるが、昭和9年3月23日に開かれることになった。第一回同窓懇親会の準備段階における書状(図1)をみると、この桜岡会が発展解消して同窓懇親会になったことがわかる。現在教室には、第16~18回桜岡会の出欠調査のための往復はがき(図2)が残っているが、これから推測すると、卒業生が会社単位で幹事を引き受けていたことがわかる。なお表1は、この桜岡会関係の年表であるが、第1回を大正5年としたのは、この葉書から逆算したものである。

<参考資料>

  1. 電気工学科同窓会編:東大電気工学科の生い立ち(第1集)、昭和34年3月、p.40~p.49、回顧(其の一)、渋沢元治
  2. 星合正治:“仮題”、理事長挨拶、電気・電子工学科同窓会報、No.16、昭和47年4月

図1 第1回同窓懇親会の準備段階の書状

書状の内容を以下に再掲

拝啓 時下春暖の候貴下益々御清栄の段奉賀候
陳者例年三月十四日を期して故中野初子先生を記念する櫻岡會を開き兼ねて東大電氣学科出身者の懇親を計り居り候處昨年の同會に於いて故山川鳳雨先生に対しても適当の方法を講じて記念する為め此際同會の趣旨、期日、名称等につき考慮すべき申合せ有之東大電氣工學教室の吾々に原案を作成し適当なる委員會を組織して将来の具体的方法を決定すべき旨委嘱せられ候

依て去る二月廿八日本学科卒業生の各クラスより一名つつ三十余名の御會合を乞ひ御相談の上左の如く決定致し候間何卒御諒承下され度候

一、毎年一回東大電氣工學科卒業生相集り、物故されし諸先生に慕謝の意を表すと共に相互の懇親を計ること

二、右會合には、エアトン、志田、藤岡、中野、山川、鳳六先生の御寫眞を掲げて禮拝すること
(註)委員會に於いて吾々の教を受けし諸先生は右の諸教授の他講師、他学科の教官非常に多数に上るも代表的の意味にて工部大学校創立当初の教官エアトン先生と電氣工學科の教授たりし五先生とすることに決定せり

三、會合の期日は電氣デー(三月廿五日)に近き適当なる日を幹事において選定すること
(註)明治十一年三月廿五日エアトン先生は当時の学生たりし志田、藤岡、中野諸先生を助手として木挽町に新設せる中央電信局の開業式祝宴を工部大学校に開くに當り、同校の晩餐會場の燈火用としてグローブ電池を使用して蛍光灯を點せしと云ふ(工部大学校史書による)

四、會の名称は本年は東大電氣工學科同窓懇親會とし追て適当の會名を選定すること

五、會合の通知は東京付近在住の卒業生全部に郵送すること
但し当日地方より上京中の方にも成るべく繰り合せ来會を望むこと

尚本會は物故諸先生に敬意を表するを趣旨とするも追弔の意味を濃厚にして會を湿やかにすることは諸先生の霊も却って喜ばれざるべきに付き恰も記念日の會合に類するものと看倣し興味ある講演又は肩のこらぬ漫談などを催し在天の諸先生も来會遊され吾々と共に歓談せらるゝ気持ちにて一夕の歓を盡す様致し度との希望多く有之候就いては何卒奮って多数御参會下され本會合を盛大に且つ有意義になされ度希望致し候

昭和九年三月    世話人

図2 第16回桜岡会の案内状

表1 桜岡会、同窓懇親会関係年表

大正5年 第1回桜岡会 推定3/14
大正6年 第2回桜岡会 推定3/14
大正7年 第3回桜岡会 推定3/14
大正8年 第4回桜岡会 推定3/14
大正9年 第5回桜岡会 推定3/14
大正10年 第6回桜岡会 推定3/14
大正11年 第7回桜岡会 推定3/14
大正12年 第8回桜岡会 推定3/14
大正13年 第9回桜岡会 推定3/14
大正14年 第10回桜岡会 推定3/14
大正15年 第11回桜岡会 推定3/14
昭和2年 第12回桜岡会 推定3/14
昭和3年 第13回桜岡会 推定3/14
昭和4年 第14回桜岡会 推定3/14
昭和5年 第15回桜岡会 推定3/14
昭和6年 第16回桜岡会 3/14
昭和7年 第17回桜岡会 3/14
昭和8年 第18回桜岡会 3/14
昭和9年 第1回同窓懇親会 3/23
昭和10年 第2回同窓懇親会 3/25
昭和11年 第3回同窓懇親会 3/26
昭和12年 第4回同窓懇親会 4/27
昭和13年 第5回同窓懇親会 4/28
昭和14年 第6回同窓懇親会 4/21
昭和15年 第7回同窓懇親会 4/26
昭和16年 第8回同窓懇親会 4/25
昭和17年 第9回同窓懇親会 4/24
昭和18年 第10回同窓懇親会 4/26
昭和19年
昭和20年
昭和21年
昭和22年 第11回同窓懇親会 5/21
昭和23年 第12回同窓懇親会 11/6
昭和24年 第13回同窓懇親会 6/5
昭和25年 第14回同窓懇親会
昭和26年 第15回同窓懇親会
昭和27年 第16回同窓懇親会
昭和28年 第17回同窓懇親会
昭和29年 第18回同窓懇親会
昭和30年 第19回同窓懇親会
昭和31年 第20回同窓懇親会
昭和32年 第21回同窓懇親会
昭和33年 第22回同窓懇親会
昭和34年 第23回同窓懇親会
昭和35年 第24回同窓懇親会
昭和36年 第25回同窓懇親会
昭和37年 第26回同窓懇親会
昭和38年 第27回同窓懇親会
昭和39年 第28回同窓懇親会
昭和40年 第29回同窓懇親会
昭和41年 第30回同窓懇親会
昭和42年 第31回同窓懇親会
昭和43年 第32回同窓懇親会
昭和44年 第33回同窓懇親会
昭和45年 第34回同窓懇親会
昭和46年 第35回同窓懇親会
昭和47年 第36回同窓懇親会
昭和48年 第37回同窓懇親会
昭和49年 第38回同窓懇親会
昭和50年 第39回同窓懇親会
昭和51年 第40回同窓懇親会
昭和52年 第41回同窓懇親会
昭和53年 第42回同窓懇親会

<23号 昭54(1979)>

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