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  • 展覧会を楽しむ/斎藤嘉博@クラス1955

      先月末上野の森、都美術館で新井さんとご一緒に大橋さんの絵が展示されている新構造展を観ました。

      昨年は「残照の修道院」を拝見。修道院のベージュ色に輝く三つの塔。そのとんがり屋根がなにか小人の帽子を連想させるとてもメルヘンチックな絵であったことを覚えています。その折は林さんもご一緒だったのでした。 都美術館にて.jpg
    都美術館にて
      大橋さんは欧州ご旅行のログをこの欄にずっと載せてきてくださり、紙上での旅を楽しませていただいておりますが、今年の展覧会の画題は「モスクへの道」。場所はどこか伺っておりませんが、両袖に描かれた明るい色の直線的な建物の間、中央にオレンジ系の色で丸いモスクの屋根。新井さんは「大橋さんの絵はいつも独特のよい雰囲気を醸し出していますネエ」と言われていましたが、まことに同感。私は丸い屋根の向こうに見える薄い山並みの柔らかな曲線にも惹かれました。体調が思わしくないなかでこれだけのものを出展される大橋兄のエネルギーに感動です。
      この会には絵画のほか写真、工芸などの作品も展示されています。昔はモノクロの写真を四つ切でプリントするのには暗室に赤い電灯をつけて大変な苦労が必要でしたが、いまでは全紙の写真が主流。でも絵は写真で撮ることのできない印象を形にすることができるのですから素晴らしい。例えば夢にみた風景なんて写真には撮ることができませんからネ。大変楽しい気分で会場をあとにして、この後、私は隣の東博に行き奈良四寺の仏像を拝観しました。ここでは室生寺の十一面観音立像(国宝)がすばらしい表情で迎えてくださり、豊かな一日を終えることができました。
      先日、国分寺の小さな画廊で催されたH電子の同人展を拝見しました。絵を描く方々の集まりからの発想ですが、元の副社長I氏がお仲間に声をかけられて絵ばかりでなく、彫刻、書、工芸品など20人の方々の様々な作品の展示。I氏の描かれた「八ヶ岳、晩秋の夕暮れ」は以前何回かご一緒させていただいた八ヶ岳山麓でのゴルフの際に泊まったホテルからのなつかしい展望。会は大変よい雰囲気で、老人のひとり暮らしなどが報じられているなか、こうして仲間と一緒に楽しく作品の制作に凝っていらっしゃる方も沢山いるのですネエ。みているだけでも楽しくなってくるのです。
      先月、銀座の画廊で小さい手作り作品の展示がありました。ArtとtoyをつなげてARTOYと名付けたグループ。その年のテーマに合わせて木工芸、布工芸、金属工芸、様々な材料でテーマを表現してみようという狙い。 ARTOY展から.jpg
    ARTOY展から
      娘の友人、M夫人がこの会で段ボール紙を用いて動物などを制作し展示しているのです。精巧にレーザーカットされた段ボール紙を重ね貼りすることで三次元の物体を作り上げるという構図。「段々動物園」と名付けてこれまでに恐竜、狛犬、考えるウーなどさまざまの形が表現されてきましたが、今年のテーマは「界」。写真は界なくカピバラとワニが会話をしている様子。平面の段ボールを重ねただけの構成なのにワニの体のふくらみと尾の曲線が実に上手に表現されています。精巧なレーザーカットのおかげですが、これを設計するには大変な研究と試行錯誤があったことでしょう。
      これも先月のことでした。日本橋の三越で行なわれた池坊の展覧会。池坊は京都の六角堂(紫雲山頂法寺)で産まれた古来の華道。展示場には多くのお弟子さんたちが活けた、季節にふさわしい杜若の花などが多く、素敵な活花が立花と生花、正風体と新風体に分けて展示されていました。立花は木を山、草を水の流れと見立てて自然を表現したもの。会場は会の方達ご婦人で一杯。話も弾んで楽しそうな雰囲気でした。私には家元の立派な活花よりお弟子さんたちが活けられた可憐な姿のちいさい鉢が大変美しく見えたのでした。
      高齢社会と言われ、一人暮らしの寂しさが報道される反面、多くの方はこうしてそれぞれに自分の手で仲間と一緒に楽しみを作っているのでしょう。
      いずれの展覧会も大変うれしい光景でした。作るというのは指先の訓練、脳の訓練に大切なこと。私の家内もかねてからビーズ織りにはまっており、沢山の作品を作って何かの賞を頂いたりしていました。我が家の壁には作品があちこちに。一方私はあれこれと手を染めますが展覧会で皆様にお目に掛けられるようなものは何一つなし。
    ビーズ織タペストリー.jpg
    ビーズ織タペストリー
      ムサビで教壇にあった時代に油絵学科の先生が「齋藤さん教えてあげるからいらっしゃい」と声をかけてくださったこともありましたが、とてもとお誘いに乗れませんでした。今になってすこしでも描けるようになっておけばよかったと言ってもあとの祭り。諸兄はそれぞれに趣味をお持ちですが、ながい老後にはなにか打ち込んだものが必要ですネ。
    3 Comments »
    1. 「都美術館にて」の写真にある大橋さんの絵「モスクへの道」には静寂な精神性が漂っていて心打たれました。絵の主題である「モスク」が宗教的建物であることを抜きにして、これが何であれ、それとは関係なく、この絵にはある種の透明な宗教性があると感じました。それは、きっと、年齢を重ねた大橋さんが到達した境地の反映でしょう。素晴らしい!

      コメント by 武田充司 — 2019年7月15日 @ 22:23

    2.  6月27日に、僕も都美術館へ行き、大橋兄の「モスクへの道」を鑑賞してきました。そこで、バッタリ吉田進兄に遭いました。

      コメント by 高橋郁雄 — 2019年7月16日 @ 05:51

    3. 斉藤兄には新構造展にお出で頂き、この度はクラスブログに紹介して頂き有難うございました。会場に行けない私ですが、新構造展にお出で頂いた諸兄に感謝しています。私は定年後、NEC同期入社のY.Sさんに誘われ油絵の仲間になりました。残念なことにY.Sさんは他界されましたが、油絵を描く環境を失っても、ペン画水彩を描き絵葉書を送ってくれました。最後まで絵画への情熱は続いたようです。
      武田兄には、私の油絵に対し過分な評価を頂きましたが、未だ煩悩に悩まされ、澄み切った境地には程遠いようです。幼い頃のモノクロ写真を眺めると、自分もこんな時代があったのかと思いますが、再び戻ることは出来ないでしょう。武田兄のリトアニアのお話に刺激を受け2013年にバルト3国のツアーに参加したことを感謝しています。

      コメント by 大橋康隆 — 2019年7月20日 @ 13:34

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