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  • 社会党と共産党の罪/斎藤嘉博@クラス1955

      今回の原発事故は社会党と共産党に原因の一端があると言ったら首をかしげ目をむく方も多いでしょう。

     マスコミの多彩な記事にもそんな論調はお目にかかったことがりません。もう50年ほど前、私はNHK労組(日放労とよんでいました)の技研分会の委員長をしていました。当時労働組合には勢いがありました。メーデーともなれば日比谷公園とその周辺は全電通、全電機、自動車労連などの赤旗でうめつくされてシュプレヒコールがビルにこだまし、賃上げ要求のためのストライキも繁くおこなわれていました。その頃のこと
      ご多分に漏れず人員合理化の波が押し寄せる中、私たちに「守衛の人数を減らす。表門の守衛室は閉鎖する」との通告がありました。組合はもちろん頭から反対。何回かの団交を経ましたが、経営は頑として譲りません。最後の団交の日、私は「よろしい。合理化案を呑みましょう。しかしもし表門の池に外から入ってきた子供たちが落ちて溺れ死ぬようなことが出来したら、これはすべてNHKの責任だと議事録に明記してください」と結びました。そのころ技研の門内に幅8mほど、長さ20mほどの池があって水蓮が咲き、折々小学生がいけないと知りつつ入ってきてはその周辺で遊んでいたのです。門の守衛さんがこれを制止していました。件の団交の数日後庶務部長から「合理化案は撤回し、門の守衛は残す」との連絡がありました。私たちの主張を理解し、なにが大切かの意味を理解した所長の立派な決断でした。
      
      今回の原発事故の原因の一端が労組の衰退にあると思うのです。IAEAの調査報告のなかに「原子力保安院の政府からの独立性が不十分」との指摘がありましたが、原発を推進しようという同じ立場に立ったグループにいくら独立性を求めても同じ穴のムジナが考えること、アンケートのやらせ問題の発覚をまつまでもなく自明の理でしょう。「原発を作る、しかしできるだけ安全に」というのが立場です。しかし組合とすればもし事故が起こったら組合員の生命に関係しますから原発反対の立場が始点です。全く異なった視点ではじまる議論ですからそこに独立性が保てて一つの事象を多面的に見たシステムが成立するようになるのです。また経営側も労組の主張を破るに足る論理をもたなければなりませんからそこにしっかりとした原発推進への意識が形成されるのです。
      原発の設置がお互いの了解に達したとしても、もし事故が発生したときには高濃度の放射能を浴びながらその始末をするような労働は拒否という一条が締結されるでしょう。そうすれば事故処理はストライキのときとおなじように管理職がしなくてはなりません。経営も他人にやらせるのではなく自分の身に危険が迫るとなると一層慎重に安全への配慮をすることになるのです。価値観の異なる人の議論、DiscussionではなくDebateが必要なのです。
      
      世の中はGDP世界2位、いや3位よという経済成長の中で各自が家を持ち車を持つようなささやかながらの幸せを得て、生活防衛、賃上げ、ストライキという切実な要求はほぼ姿を消してしまいました。それどころか国際競争力の強化という理論でいつの間にか沢山の非正規労働者がおおくなって労組は形だけのものになってしまったのです。ソ連の崩壊以降、時代の趨勢には抗しがたい面がありますが、社会党も共産党も平和憲法の維持に全力をあげて身近な生活防衛には手薄になっています。今回の原発事故での危機管理をみると、一生懸命考えながらその割には発想に偏りがあったとおもうのです。おいしいトロにもわさびが必要、安全への議論に真の多面化、独立化を確保してシステムを作り上げていくためにどのような組織を作るべきか、それが今後の原発推進への鍵となるでしょう。

    1件のコメント »
    1.  日本の原子力発電にも、天敵や競争相手が必要だったのでしょうが、電力会社が強力だったせいか、良い競争相手や建設的な批評家が育たなかったと思います。そうした中で、唯一の強力な天敵は、反原発派の人たちですが、彼らは、放射性物質を生み出す原子力利用には絶対反対の立場ですから、原子力発電の技術進歩には殆ど貢献しなかったと思います。むしろ、そうした攻撃に過剰に身構えた電力側が、自分たちの正しさのみを強調する姿勢に傾き、それが嵩じて、建設的な技術批判にも次第に耳を傾けなくなって行ったため、強力な反原発派の存在は、むしろ、日本の原子力発電の技術進歩や安全性向上の阻害要因となった可能性があります。
       

      コメント by 武田充司 — 2011年8月13日 @ 08:09

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