• 最近の記事

  • Multi-Language

  • 近頃思うこと(その23)/沢辺栄一@クラス1955

     この7月13日に菅首相が発表した「脱原発依存」の判断は周りの反対を受けて一時個人的意見であると訂正したが、8月6日の広島原爆記念日の挨拶で辞任を決めているにも拘らず再度変更し、政府の方針であるとした。


    周りの様子を伺い、2者択一の中で一般的に良さそうであることや、そうあってほしい希望的判断として決める小学1、2年生の子供の判断に思えてならない。
     一国の首相の判断ならば、エネルギー庁や経済産業省などに基本的なことを検討させ、その結果を踏まえて行い、判断の理由を的確に説明する必要があろう。
     
     新聞や雑誌の記事には浜岡原発一基分の発生電力を自然エネルギーでまかなうには、風力発電の場合には2,300台が必要である。太陽光発電の場合には115平方キロメートルの面積の土地が必要であり、これは山手線が囲む内側の面積のほぼ2倍である。川崎市の臨海工業地帯に東京ドーム6個分の面積の土地に太陽電池パネルを敷き詰めている太陽光発電所が出現しつつあるが、その出力は2万キロワットにすぎない。直ぐ傍にある火力発電所はほぼ同じ面積で200万キロワットの電力を発生しているとのことでる。全原発を太陽光発電に替えるには千葉県の面積に相当する5,260平方キロメートルの土地と80兆円の建設費が必要と試算している。
     発電コストを比較しても原発は1キロワット当たり5.4~6.4円(福島原発事故処理と賠償を加算すると7.4~13.3円)、風力発電は10~25円、太陽光発電は36~45円であり、電気料金の上昇は家庭および産業に大きな負担を与える。電気料金の上昇は特に産業での国際競争力の低下につながり、電気料金の安い国への工場移転が進み、さらなる産業の空洞化が懸念される。
     
     東日本大震災の復旧には莫大な資金が必要になるが、それを国債でまかなう、増税でまかなうなど色々の案が出ているが、これらは一般的には借金か、現在までに蓄積したお金の取り崩しのように思える。必要な資金を稼いで作り出す発想はないのであろうか。GDPを増加する政策を立て、税の増収を図ることが必要なのではないだろうか。今回のような大きな津波が直ぐに発生する事は考えられず、原発の停止でなく、運用を進め、低電気料金で産業界の競争力を高め、稼いでもらいたいと思う。勿論、過去の統計から大きな地震の発生する可能性の強い場所には津波防壁の建築を早急に進める必要もあるが。
     ロケットの糸川先生が第二次世界大戦中に行った英国のレーダーの開発を例に説明して、システム研究開発には一人の天才よりも数人の凡庸な異質の専門家の組合せによる組織のほうが望ましいと述べている。国の方向性の創造、運営はシステムの創造、運営であり、多角的な観点からの検討とシステム全体の結果を見ながら決めていく必要があり、天才でない菅首相が単独で決定する行為は国の方向を誤ることになるのではないかと思うこの頃である。
                              沢辺栄一(2011.8.8)

    2 Comments »
    1.  古川和男氏の「原発安全革命」という本を買って読んでみたところ、原理的に重大事故を起こさないというトリウム小型溶融塩発電炉は、最初のミニ炉を造るのに、これから十数年かかると書いておられます。なかなか大変だとは思いますが、早く実現されることを祈ります。
       将来のことは別にしても、今のウランを使う軽水炉でも、十分な安全対策を加えれば、使っていけるのではないかと思います。
       それにしても、定期検査後の原子炉の再運転について、政界・経団連・マスコミ等から、早く再運転するようにとの発言が、しきりにされておりますが、原子力の専門の科学者からの発言が殆どないのは残念です。福島の事故のあまりの悲惨さに意気阻喪しているのではないか寂しく思っていました。今日8月13日の読売新聞の報道では、6月に日本原子力学会長に就任された田中知氏が、今後学会として、国民に向けて、原子力の長所と短所を改めて整理、公表すると述べておられます。大いに期待しています。

      コメント by 井村 英一 — 2011年8月13日 @ 11:40

    2. 私も古川氏の本を買って読んで見ます

      コメント by 沢辺栄一 — 2011年8月14日 @ 09:05

    Leave a comment

    コメント投稿後は、管理者の承認まで少しお待ち下さい。また、コメント内容によっては掲載を行わない場合もあります。