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  • 近頃思うこと(その19)/沢辺栄一@クラス1955

     東北・関東大震災で亡くなられた方には心からお悔やみ申し上げます。また、この大震災に遭われた方々には心からお見舞い申し上げます。


    ところで、日本全体が埋没しそうな状態に関して感じることを記してみたいと思う。
     日本の借金が1,000兆円にも達し1秒間に130万円ずつ増加し続けているとのことである。政府は国民に長期的にこの負債を如何に解消していくかの計画は全く示していない。私企業や個人であったならば如何に負債を無くすかは最重要事項であるのに、これまでのどの内閣もこの負債を解消する努力を示しておらず、国債の発行を続けている。
     いつから国の負債が生じてきたのであろうか。大蔵官僚が国債の発行を初めて提案したのは自民党の田中角栄首相の時であったが、田中角栄首相は事業の経験も豊であり、赤字が如何に国家経営上危険あることを熟知しており、大蔵官僚の提案を全て論破し、受け入れなかったとのことである。財政赤字を承認したのは実事業を経験していない大蔵官僚出身の福田赳夫首相が後輩の大蔵官僚の提案を十分に検討せずに、選挙の人気取りで受け入れた時からであったとのことである。また、国債の償還期間は普通10年であるが、国民を騙すために償還時期が来た国債を一端借り替えて借金返済を60年償還にした借款債を導入し、借金返済を困難にしたのは中曽根康弘内閣の時であったとのことである。
    年々借金が続き、現在1,000兆円にもなり、平成22年度でも税収41兆円に対して、国債発行額44兆円3千億円、国家予算が92兆4千億円となっている。収入の倍以上の予算を組むこと事態どのような感覚なのであろうか理解に苦しむ。また、それを批判しないマスコミ、国民もどうなっているのであろうか。
     私の経験則では売上金の2倍の負債になると多くの企業は破産している。経済評論家の森本亮氏はGDPの2.5倍の借金で財政破綻が生じると言っており、現在の借金はGDPのほぼ2倍であり、このままでは2013年に破綻すると言っている。30数年かけて積もり積もった借金をこれから50年で完済するとしても利子の外に1年に20兆円を所要予算のほかに用意しなければならない。ドトール・コーヒー名誉会長の鳥羽博道氏はこのままではもう国の負債を解消する事は不可能であるにも拘わらず、国も、国民も危機感が無さ過ぎると言っている。当面は何とかなっており、国の財政破綻は国民生活にどのような悪影響を及ぼすのか、どのような地獄が生じるのか我々一般国民には実感できないために危機感が生じない。なぜ日本のシンクタンクは破綻のシミュレーションを国民に示さないのであろうか。
     日本においてもアメリカにおいても民主政治そのものに問題があり、主権者である国民が政治に対して過大な要求を突き付けていると佐伯啓思京都大学教授は述べている。国民が国の財政能力以上の要求をしてきたからこうなったのか、政府が選挙で票を得るため能力以上の計画を実施してきたのか。これまで国民にきちっと説明してきた首相はいなかった。また、国民は自分の利につながる事のみ考え、国全体のことから意見は言ってこなかった。3月11日に発生した東北・関東大震災の影響で福島第Ⅰ原子力発電所の事故、そのほかの災害で電力供給が需要に追いつかず、計画停電を実施し、企業、一般家庭でそれに協力しているが、財政資金が要求に追いつかない場合も我慢をしなければならない場合があっても仕方がないのではないかと思う。
     江戸時代には幕府自体では享保の改革、寛政の改革、天保の改革を行ったが、米の暴落等で余り効果を上げなかった。一般の藩で行った財政改革でよく知られているものは松代藩恩田木工の改革、米澤藩上杉鷹山の改革、備中松山藩山田方谷の改革がある。国の規模とは比較ならない小規模なローカルな改革であるが、その基本的な考え方、対処行為は参考になると思われる。聖徳太子の憲法17条の9条に「信はこれ義の本なり。・・・群臣ともに信あらば何事か成ならざらん。」とあるが、恩田木工は領民からの信が第一として改革の行動を開始し、信によって借金の踏み倒しを容易にした。これらの改革の共通するところは、賢明な藩主による能力のある執行者の身分によらない抜擢である。次に不満幹部の一掃、倹約の徹底、汚職の排除、新規事業の着手、負債の一時棚上げ、人材の登用、将来に希望を与えるなどである。藩のトップである執行者やその家族は一汁一菜、木綿衣服の着用を行って何れも自ら倹約に勤め、領民、下級藩士に範を示した。この大震災前まで菅首相は毎晩高級レストランで夫人と食事をしていたと新聞が報じている行為とは比べものにならない。これらの執行者は皆失敗したら切腹を覚悟に責任を持って行動した。鳩山前首相は命を掛けて実施すると事あるごとに言っていたが、失敗しても責任も取らない。現首相も簡単に命を掛けて実施すると言うが、言った態度にその迫力と真実性は伝わってこない。雲泥の違いである。恩田木工、上杉鷹山の改革は完全に負債を無くし、藩が潤うのに30年も掛かっている。山田方谷の改革では数年で負債をなくし、8年で10万両の蓄財を果たしている。これらは新たな事業がその成果を現した結果が主である。方谷の場合、藩内に産出する鉄と銅の産業を興し、その加工物を中間搾取の多い大阪商人を経由せず、直接需要の多い江戸に輸送した結果、多くの利益を得たからである。また、共通していたことは強いリーダーシップの発揮であり、それは封建時代の独裁行為ができ易い政治システムであったこともあるかと思われる。
     鳥羽博道氏は現在より100兆円増のGDPにすれば税収が現在の41兆円から80兆円になり、消費税の引き上げと併せて国債の発行を止める事ができると提案している。しかし、政治家も官僚も財界も5年でGDPを100兆円増加する事は不可能として真剣に考えようとしないとのことである。江戸の改革者のように新しい産業や事業を真剣に考え、先ずは収入を多くし、利益を上げる事が必要であるように思われる。
    今回の大震災によって、予定よりさらに多くの負債が増加し、破綻が早まるのではないかと考えられる。真剣に財政赤字をなくすことを考え、信頼できる計画の作成とその計画を確実に実行し、国民に危機を説明し、納得させることのできる実行力ある強いリーダに出現してもらうにはどうしたらよいのか考えるこの頃である。  沢辺栄一(2011.3.24)

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