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  • 叙勲を受けて/西永 頌

    NishinagaTatauこの春、瑞宝重光章の栄誉に浴した。功労概要には教育研究功労とあり、瑞宝章の説明には、公務等に長年にわたり従事し、成績を挙げた者に授与される、とある。教育研究としては、名古屋大学の博士課程を終え名古屋大学助手として国家公務員の道を始めてから、東京大学での勤務を経て豊橋技術科学大学学長を退任するまでの41年間の歩みがあり、その何処に焦点が当てられこの章が与えられたのかは全く分からない。しかし、41年の内、最も長期間、人生の最も充実した時期を過ごさせていただいた東京大学における教育研究が何と言っても私にとってその中心である。その機会を与えていただいたことに深く感謝する次第である。

    東京大学で私が従事した分野は、電子材料物性工学であるが、その中でも、半導体の結晶成長の研究に最も力を注いだ。真空間時代、電子の活動の場は真空であった。真空電子工学、放電工学など真空をベースとした場での電子の振舞いに関する研究が非常に重要であった。ところがトランジスタ・集積回路・光素子の時代に入ると電子の活動の場として新たに結晶、特に半導体の結晶が登場した。ところが結晶と言ってもそこには欠陥あり、不純物ありで理想的な結晶としての特性を得るのは簡単ではない。トランジスタの場合、テン・ナインと言われるように99.99・・%と9が10も並ぶ純度の結晶でないと理論的に予想された特性が現れない。また、結晶欠陥も非常に少なくする必要がある。さらに、固体素子を作製するうえで、その内部に原子層レベルの精密な構造を形成することが要求される。これらは、すべて結晶成長の問題となる。そこで、電気・電子工学系の研究者にも結晶成長を武器として電子光素子の開拓に従事する者が多数現れた。

    この流れにあって、私は、結晶成長のメカニズムに関する研究と、ある結晶の上に異なる物質の薄膜結晶を成長する研究に取り組んだ。後者の研究の一つは光素子に用いられる砒化ガリウムを集積回路の材料であるシリコン結晶の上に成長させる研究である。これらの研究は、東大における卒論生、大学院生、助手、准教授の方々と共に行った。特に後者の研究から、マイクロチャネル・エピタキシという東大発の新しい薄膜成長技術が誕生した。これも、良き研究協力者がなければ起こらなかったことであり心より感謝している。私は、1995年から6年間、結晶成長研究の世界的組織である結晶成長国際機構(IOCG)の会長に任ぜられたが、これも、東京大学教授としての地位があってこそ実現したものだと思う。

    東京大学を定年退職し名城大学に移ったが、2年後豊橋技術科学大学の学長に任じられた。ちょうど任期の半ば2004年には国立大学の法人化が行われそれを機に思い切った改革を行った。それが功を奏したか否か技科大の動きを外から見守っている。

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