「春の小川」についてのコメント/大曲恒雄@クラス1955
記>級会消息 (2012年度, class1955, 消息)
斉藤さんからの投稿を編集しているうちに、ウン十年ぶりに歌を聴いてみたくなった。
CDラックを漁ったら昔買った「日本の愛唱歌160選」というシリーズ中の「学舎の歌」と題するCDの中にこの歌を発見。所が残念ながらオーケストラ演奏で歌無し。ガッカリしたが、改めて本棚を探したらこのCDシリーズの歌詞集を発見したので1番だけを以下に紹介する。
春の小川は さらさら流る$00A0
岸のすみれや れんげの花に
匂いめでたく 色うつくしく$00A0
咲けよ咲けよと ささやく如く
歌は3番まであって、2番には蝦(えび)、めだか、小鮒が登場する。
大正元年(1912)「尋常小学校唱歌(4)」で発表されてから永く歌い続けられ、1930年頃までに生まれた世代はこの歌詞で習っている。所が、昭和17年(1942)「国民学校初等科音楽(1)」に載せるに際し「3年生ではまだ文語体を教えていない」との理由で1~2番は大幅に改詩され、3番はカットされた。
改詩は林柳波の手によって行われたそうだが、前述の歌詞集にはこの歌詞は載っていないのでWikipediaで調べたら1番は次のように変わっていた。
$00A0 春の小川は さらさら行くよ$00A0
岸のすみれや レンゲの花に
すがたやさしく 色うつくしく
咲いてゐるねと ささやきながら
$00A0 |
$00A0 春の小川 |
更に戦後の1947年、3回目の改詩が行われ
「3年生の音楽」では以下のようになっているとのこと。
春の小川は さらさら行くよ
岸のすみれや れんげの花に
すがたやさしく 色うつくしく$00A0
咲けよ咲けよと ささやきながら
文語体云々の問題はあるにしても、オリジナルの「春の小川は さらさら流る」が一番ピッタリしていると思う。
なお、Wikipediaに「春の小川」の写真が載っていたので転載する。
(斉藤さんの投稿へのコメントとして書くつもりだったけど、長くなったのと写真を入れたかったのとで別稿とした)
2013年3月6日 記>級会消息
唱歌「春の小川」をWEBで調べてみると,3度の改詩を経た現在の歌詞が主流のようです。しかし安田祥子,由紀さおり姉妹は2番までですが,さすがにオリジナル歌詞で歌っています。1930年生まれまではオリジナルの歌詞で習っているとのことなので,ほぼ限界に生まれた我々(後期高齢者)は,現在の歌詞に違和感を覚えるのでしょうか。
コメント by 森山 寛美 — 2013年3月6日 @ 10:55
おっしゃる様にオリジナルが一番良いと思います。意味が分からない子供でも、少しづつ文語体に慣れさせることも大切です。
大体、「川が行く」という日本語がありますか?「川」は「流れる」ものです。
仲宗根美樹:「川は流れる」―1962年
美空ひばり:「川の流れのように」-1989年
51年前と24年前が同じ様な昔に思えたり、つい最近に思えたりし始めました。要注意です。
コメント by 寺山進 — 2013年3月6日 @ 11:42
大曲さん、詳しい補足を頂きありがとうございました。春の小川というタイトルに興味を示された方々、まだ童心は失われていないのでしょう。古い唱歌にご興味があれば岩波文庫の「日本唱歌集」に沢山の懐かしい歌が載せられていますのでご覧ください。小生の友人には鉄道唱歌を最初の“汽笛一斉新橋を”から66番の神戸まで全部暗記している人がいます。
コメント by サイトウ — 2013年3月6日 @ 21:38
僕も「春の小川は、さらさら行くよ」には、まったく嘆かわしい現象だと思っていました。このように日本語の伝統を粗末に扱ってはいけないと思っていたのですが、たまたま、今月届いた「学士会会報:№.899, 2013-Ⅱ」に愛甲次郎氏の文語文の伝統に対する熱い思いを綴った「美しい日本語を未来に引き継ぐ」という大変興味ある記事が出ているを見ました。なお、この愛甲氏の小論の中にも紹介されていますが、山本夏彦著「完本 文語文」(文芸春秋刊)は、日本語の伝統と文語文の力を考えさせてくれる好著かと思います。
コメント by 武田充司 — 2013年3月7日 @ 22:37
早速、愛甲氏の講演要旨を読みました。その中に「美しい日本語を子供達に教えるために一番良いのは、昔の小学唱歌です。文語調で書かれた歌で素晴らしい歌が沢山あります。」という文章がありました。
学士会の会報は最近あまり真面目に読んでいなかったので(眼が悪くなったのが最大の原因ですが)指摘してくれた武田兄に感謝です。
コメント by 寺山進 — 2013年3月8日 @ 10:44