電子レンジの技術開発/寺山進@クラス1955
記>級会消息 (2010年度, class1955, 消息)
11月10日に開催予定の卒業55年記念同窓会の近況報告に「斎藤兄をお手本に、同じテーマでのブログの連載をしてみたい」などと書いた。
この件や「孫と一緒の海外旅行」の件もすべて目標が未達成になっている。「同窓会当日にはどうなっているか」などと余計な事まで書いてある。事前に実情を白状して置くのが今回の投稿の大事な目的の一つでもある。
その上、前回の投稿の末尾に「電子レンジでも一寸調べてみたら、ブログのネタ位には成りそうだ」と何気なく書いてしまった。原稿を送付すると折り返し大曲編集長からメールがあり「是非続編を期待している」とまたもや煽てられてしまった。そこで早速調べてみた。前回の洗濯機とは逆の結果になりそうである。むしろ、コンピュータ制御をフルに活用しないと本体の機能が発揮できない位、技術開発が進んでいる。
電子レンジは云うまでも無く2.45GHzのマイクロ波を使ったDielectric Heating により食品を直接加熱する調理器具であり、英語では「Microwave Oven」と云う。中々科学的な命名である。この原稿を書くまで日本語の「電子レンジ」というのは全く曖昧な命名だと思っていた。何故なら本来の意味は次の通りだからである。
Range: Cooking-stove, usually with ovens, a boiler, and a surface with openings or hot-plates for pans,$00A0kettles, etc.
$00A0$00A0$00A0$00A0$00A0$00A0$00A0$00A0$00A0$00A0$00A0 Oven:$00A0 Enclosed box-like space which is heated for cooking food. 注1.
多分「レンジ」が外来日本語化して調理器具全般を意味するようになっていたので「電子レンジ」という命名がされたのだろう。
今では「レンジ」と云えば「電子レンジ」、「レンジ機能」は「Dielectric Heating 」を意味する様になってしまった。
日本の電子レンジは通常、電熱ヒーターによる加熱機能(トースター機能といっている)、槽内の空気を高温に保つオーブン機能 が付いている事が多い。さらに加えて最近では、過熱水蒸気が利用されるようになって来た。これはある意味素晴らしい技術革新である。開発したシャープ社は「水で焼く」というキャッチ・フレーズで宣伝している。このSuper-steam cooking は、小さな電子レンジの槽内に於ける新しい調理法を生み出したと云う事が出来る。
水蒸気に加えてレンジ・トースター・オーブンの在来機能を活用して、多様なメニューを実現させている。更に複数のメニューを同時に進行させる、即ち、槽内の空間的・時間的な調理過程の制御をかなり自由に行う事が出来る。之にはコンピュータ制御が不可欠である。今や「電子的に制御される調理器具」という意味での「電子レンジ」の名前に相応しい器具に成長した。もはや単なる「Microwave Oven」ではないのである。
他にも目覚ましい技術開発がみられる。その一例は2.45GHzのマイクロ波を特に吸収しやすい(誘電損失の大きい)特殊材質の容器である。この中に食材を入れてそのまま電子レンジに入れると、レンジ機能でこの材質が高温になる。食材は高温材質から通常の、輻射・対流・伝導加熱を受ける。焼き魚に焦げ目が付く位の焼きの工程の他、蒸す・煮る・炒める等一通りの調理が可能である。伊万里焼など陶磁器の容器から、使い捨ての薄い特殊プラスチック製焼き魚用迄、多種多様の商品が販売されている。
一昨年行った米国西海岸へのツアー旅行中の事である。ラスベガス近辺でエンジンがオーバーヒートし、2時間ほど砂漠の真ん中のショッピング・センターで代替バスを待つ羽目になった。今考えると転倒事故でなくて本当に良かったと思う。その時のドライバーも全く英語が判らない中国人で、素人目にも無茶苦茶な運転だった。
時間つぶしに入ったセンターには、ワン・フロワー全部がキッチン用品の売り場があった。ナイフ、フォーク等の食卓上の品物や調理用の小物の道具、電気式調理器具からガス・オーブンまで全部揃う、文字通りのOne-stop for Dining-kitchenであった。米国では部屋が広いからだろう、単一機能で大型の製品が多い。トースターは大きなポップアップ式が主流で、手動の側面開閉式も残っている。電子レンジもオーブンと共用などしない。押しボタンも調理時間の設定とStart、Cancel 程度で簡単である。温風は精々Fan-assisted とかConvection-type と呼んでいる補助機能的な使い方である。これは当然で、オーブンは日本と違って重要な調理器具であり、壁や建物と一体化した大型のものが先祖代々使われている。一番奥のガス・オーブンのコーナーは、寧ろ工務店の紹介窓口的な雰囲気だった。
家電製品のソフトによるデジタル制御のおかしなロジックを拾い出して、メーカーのあら探しをするのが当初の意図であった。しかし、コンピュータを使ったソフトが必須の新しい機能に感心するという、全く逆の結果に終わってしまった。前回のブログのような訳には行かない。古い洗濯機の制御系とは違うのである。
実際に使ってみれば多分、制御ロジックや表示システムに幾らかは文句を付ける余地が出て来るのかもしれない。シャープの最新式調理器具・ヘルシオでも購入して種々なレシピを試してみようかとも思う。「意地悪じいさん」が半分、毎度近況報告に「老技術者の料理:最近益々面倒になって来た」程度しか書けない現状を打破したいのが半分である。しかし「斎藤兄を手本としたブログの長期連載」も「孫との海外旅行」も云うだけで実現していないのに、又々目標だけが増えて来ている。「身辺整理」など尚更後回しになりそうである。 2010年10月15日
注1.:THE$00A0 ADVANCED LEARNER’S DICTIONARY OF CURRENT ENGLISH$00A0 1973 EDIT. より
2010年10月21日 記>級会消息
私を手本?とんでもない。ネタが沢山あるので続けてみただけです。貴兄も是非。でもレンジの話し有益。サンチェゴのマリンパーク、ステージの上でラッコが尾を小さく震わしたら「これこの通りマイクロウェーブ」と説明があって場内がどっと笑ったのを思い出します。コンピューター内蔵の近頃の家電製品は難物です。今朝も家内が「洗濯機が動かない」と泣き言。しかし私がコンセントを一度抜いてリセットしたらすぐ復活。こんな簡単な故障に悩んでいる家庭が多いのではないでしょうか。
コメント by サイトウ — 2010年10月22日 @ 17:23
長期に亘って連載を続けている諸兄に、敬意を表したく思っていました。代表として斎藤兄のお名前をあげ「お手本にしたい」と申し上げたわけです。
大曲編集長の合計36編(10月21日号現在)は別格としても、投稿数の多い諸兄には一貫した基調が有るようです。
面白くて役に立つ、科学博物館をテーマにした「斎藤さんのお話」(又別のテーマででも再開を期待しています)。
見てない所には是非行ってみたいという気にさせる一方、行った所は「自分は一体何を見てきたのだろう」と思わせる西兄の名所旧跡訪問記。
もはや趣味の域を脱している絵画と欧米旅行談を紹介されている大橋兄。本来の仕事の他に、画材を目的にしての旅行もあるようです。
美しい自然を抒情的な動画に収め続けている森山兄。
最近の政治・社会・特に若い人に警告を発している沢辺兄の評論。
我々が通常目にする美しい花は、もう殆ど撮影済みではないかと思はれる高橋編集長の「季節の花便り」。
諸兄に負けずに小生も、もう少し投稿数を増やしたいと願っています。
コメント by 寺山進 — 2010年10月31日 @ 06:39