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  • たんけん広場/斎藤嘉博@クラス1955

     明けましておめでとうございます。
     今年も正月3日から博物館へ参ります。この時期、博物館2階の「身近な科学」のフロア(たんけん広場)は大勢の子供たちで賑わっています。


    広場は子供たちが自由に触ったり遊んだり出来るところ。動くものがあればなんでも触ってみたい年頃の子たちは、スイッチを押したりハンドルを回したり。もう凧揚げをする広場も、羽根突きをする路地もなくなってしまった東京の街のなかではこうした場所が子供たちの楽しみの場所なのでしょう。
       
     ここには3号館の高圧実験室を思い出させる小型のアーク放電、ベンハムの円盤、表面が湾曲した鏡による不思議なミラーなど20種ほどの簡単な実験が出来る器具、装置が置いてあります。“ジャイロホイール”では高速でまわした自転車の車輪を持って回転フリーの椅子に座ると、コマの原理である軸を動かすまいとする力の大きさを身体で体験できます。扇風機の風の勢いでゴムボールを空中に浮かび上がらせてゴールをくぐらせるエアバスケットにはいつも長い列ができています。

     写真はボールレース。6%ほどの傾斜のある3本のレールの上を3個の木製ボールがころがります。青球の走る車線は直線ですが他のひとつには10cmほど下がるくぼみがひとつ、そうして3本目のレールにはくぼみが二箇所についています。この3車線をころがるボールのうちどれが一番早くゴールにたどりつくのでしょうか。子供たちに訊ねてみると始めての子はほとんどが「そりゃあ一番奥の青いたま」と答えます。そしてヨーイ、ドン。ボールはほぼ3秒でゴールに達し、一番速く着いたのは手前の車線を走った赤い球!「エー?」当然ですが、緑と赤のボールはくぼみの下り坂で加速されその分速くなります。赤球は加速点が二回ありますので一番速くゴールインということに。 ボールレース.JPG

    ボールレース

    ボールレース1.jpg

     子供ばかりでなく、多くの大人の方たちも青が一番速く着くと思っています。人間は高低差のある道を歩くことの苦労を経験し、坂を上るときには速度が落ちるという先入観で、重力だけが支配する物理の世界には思いが至りにくいのです。そこに科学の世界と人間感覚の差を感じます。
     「じゃあくぼみをもっとうんと深くすればもっと速くなる?」小学三年生の質問。「いい質問だ。気分的にはそのとおり。でもくぼみの形によっては下に下りたまま上がらなくなってしまうことだってあるだろ?ここは曲線をうまく使うともっと速くゴールイン出来るんだ」。既に諸兄はご案内のようにその曲線はサイクロイド。裏に難しい微分方程式を解かなくてはならない原理のあるおもちゃもあるのです。
     この広場はサンフランシスコのエクスプロラトリアムに習って作られたもの。私はエクスプロラトリアムをもう三十年ほどまえに訪れたことがありますが、ウィークデーの午前中だったためか、正月のこの広場とは違ってかなり閑散としていていたのを覚えています。1989年にその博物館のたくさんの遊具が科学技術館で展示されたときには大きな反響をよびました。こうしたあそびのなかで科学の心が育ってくれればと願いながら、今年も子供たちとの会話のうちに日が経っていきそうです。

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