江の電に春惜しむ/井村英一@クラス1955
記>級会消息 (2009年度, class1955, 消息)
江の電に揺られつ春を惜しみをり (允弥)
私が入っている俳句同人「藤」の大先輩である允弥さんの句である。
江の電はいい。大好きな電車だ。鎌倉から藤沢まで市街地を、家々に手を伸ばせば届きそうに接しながら、ゆっくり走る。鎌倉駅から長谷寺や江の島へ行くのに何度乗ったことか。街中を走るかと思うと、やがて海岸沿いを走る。乗る人はしょっちゅう入れ替わるが、皆穏やかな顔をしている。こちらは観光の帰りなどに乗るので、つい、うつらうつらと居眠りが出る。初詣、長谷寺の写経、光則寺の花を見になど一年中いろいろな季節に訪れて、江の電に乗る。以前、江の電の「えんせん絵図」というものをもらい、鎌倉に行くたびに、訪れた所をサインペンで印を付けているが、もう大半に印が付いている。
私も昨年
「江の電に揺られまどろむ春の昼」
という句を作ったが、允弥さんの句には遥かに及ばない。さすが、大先輩、江の電に詩情を盛り込まれた。私の句など、只の報告に過ぎない。
何に惜春の情を感じられたのかが、句には現れていないが、江の電沿線の風物(海や山、お寺、花など)思って、過ぎ行く春にひとしおの感慨を覚えたのであろうか。実は、未熟な私には、「春惜しむ」という主情的な季語は、なんとなく分かるというだけで、まだ実感としては把握できていない。このような季語を体験として分かっていくことが、私のこれからの修行であろうか。
2009年10月11日 記>級会消息