かたちさまざまな牛の角/斎藤嘉博@クラス1955
記>級会消息 (2008年度, class1955, 消息)
今年も丑を描いたたくさんの年賀状をいただきました。牛と言えば農耕牛、天神様の乗り物、そして松坂牛やホルスタイン。そうした家畜としての牛は身近な存在ですが、牛科の仲間は羊、山羊それにアンテロープなど意外に幅広いのです。
そうした家畜としての牛は身近な存在ですが、牛科の仲間は羊、山羊それにアンテロープなど意外に幅広いのです。
同じ偶蹄目でも牛の角は鹿のように枝分れしたり、毎年抜け換わるようなことはなく、例外もありますが雌雄両方についています。角笛、ホルンという言葉からも想像されるように中は空洞になっていて洞角と呼ばれます。先年バンフで出会ったビッグ・ホーン・シープの角は頭の上でぐるりと巻いて、その重さは1本が6Kgもあるとレンジャーが説明してくれました。
アフリカのサバンナを軽快に走り回るアンテロープと呼ばれる仲間は実に優雅な角を持っています。私の好きなのはブラックバックの角。これはワインオープナーと呼ばれるように根元から先まで丁度ワインの栓抜きのようにきれいにねじれているのです。ジャイアントイランドは同じような捩れながら短く太いのでソフトクリームといった感じ。オリックスの角はサーベル状。1mほどの長さのややカーブをもったすらっとした形はその白と黒で彩られた毛皮とともに、いくら見ていても飽きない優雅なものです。アイペックスの角には短い間隔で丁度竹の節のような輪があります。スプリングボックの角は弦を張ったらアポロンならずとも素晴らしい音色を奏でるだろうと思われる竪琴の枠のような曲線。科博の3階にはこうした角のある動物の剥製が60体ほども展示されていますので是非鑑賞していただきたいと思います。
12月のこの欄で角のある動物は?と宿題をあげました。角は鹿科、それに今日お話しした牛科の動物のほかにもキリン(肉角)、犀(毛角)、そして現存はしませんがケラトプス科などの恐竜にあります。「他には?」って子供たちに訊ねますと「サー? ア!カブトムシやクワガタにも角があるよネ」と笑顔が返ってきます。「ウン、1階でヘラクレスオオカブトムシの角見た?大きかったでしょう。でもクワガタは角でなくて顎なんだよ。ほかに?」「??」「ほらデンデンムシムシ……」「カタツムリかア」。
こんな会話をしているとこれまで沈黙を守っていたお父さんがニコッとして「まだありますネエ」。「ハイ。お互いに苦労しますネエ」。これを聞いて子供たちはキョトン。母国語は以心伝心、これで通じるからありがたいものです。このへんで1時間のガイドも終わりです。しかし結婚して50年ほども経ち、亭主の角が役に立たなくなると、女房のものが見え隠れしていたころに懐かしさを感じるものですネ。
2009年2月2日 記>級会消息
科学博物館をめぐる話を毎回楽しく読ませてもらっています。特に今回後半の子供たちやお父さんとのやり取りは傑作ですね。次回が待ち遠しくなるのは私だけでしょうか。
私も今年5月には金婚式を迎えますが,例の角はますます立派になってきたような気がしています。
コメント by 森山 寛美 — 2009年2月2日 @ 10:11
最後の段落で「子供たちはキョトン。母国語は以心伝心・・・」の部分はパンチが効いていて特に素晴らしいと思います。
コメント by 大曲 恒雄 — 2009年2月2日 @ 15:28
お客さんとの会話、展示物との対話は楽しいものです。おかげさまでボケずに日々を過ごせています。
コメント by サイトウ — 2009年2月4日 @ 22:56