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  • 叙勲にあたって/茅陽一

    kayayouichiphotoこの春に瑞宝重光章を受ける栄誉に浴した。東大、慶応大学在籍時代を通じての教育業績、政府の資源エネルギー調査会会長ないし部会長としてエネルギー環境政策の推進に果たした功績などがその根拠のようだが、ありがたいことだと思う。特に30歳頃からエネルギー環境問題に関心を持ち、その分析評価にずっとたずさわってきたが、このことを評価されたのは大変うれしい。そして現在でもこの問題―特に温暖化の問題―は私にとってその解決に力を入れている問題となっている。今理事長をしている財団は温暖化対策技術の研究を行うことを対象に出来たものだし、私は生きている限りこの問題の解決に少しでも役立つ努力を続けたい、と思っている。

    特に今関心が強いのは、我々人類がとるべき温暖化対策路線の方向だ。来年末にはパリで気候変動枠組条約の加盟国会議、いわゆるCOPが開催されるが、このときに世界各国の将来の温暖化対策目標が定められる予定になっている。現在世界では工業化以前からの温度上昇を2度以内に抑えることを目標とする、という考えが支配的で、そのために以前から2050年まで世界の温室効果ガス半減とか先進国は80%減といった目標が叫ばれている。だが、これはいうは易く行うは難しの典型例で、現在世界各国がとりあえず上げている2020年目標を延長しても到底その方向に到達しないことが知られている。このように出来そうにない目標をかかげてただ進むより、より現実的な目標をたてそれを確実に実現する努力をするほうが意味がある、と私は信じており、私の研究財団ではそのような別の戦略があり得るのではないか、と考えその探索に力を入れているところである。ここで重要なことは、温室効果ガス排出から温度上昇を結ぶ流れを解析する気候変動の科学にはまだまだはっきりしない部分が多いことで、そのような科学的知識に関する不確定性を前提に人類にとってもっとものぞましい戦略を探索しなければならない。その意味では問題の解決には我々だけでなく気象学者などの協力が必須となる。そのような学際的努力がうまく実ることを祈りつつ研究を行っている毎日である。

    (クラス1957)

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