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  • Stay hungry. Stay foolish./竹内健

    アップルの創業者で現CEOのスティーブ・ジョブズが2005年6月に米国スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの言葉で、ご存知の方も多いと思います。

    http://homepage.mac.com/mkiyoshige1/
    iblog/B927194124/C922213363/E20050802113558/

    私なりに意訳すると「変化を楽しもう」ということで、先が見えない時代を生きる私達に取って大変勇気づけられる言葉だと思います。私はこの7月に大学に赴任するまで14年間東芝に居ましたが、研究一筋というよりは、研究・工場立ち上げ・マーケティングと様々な仕事をしてきました。また、アメリカでMBAを取ったり裁判したりと、ちょっと変わった事をしてきたためか、学生さんから将来の仕事についてよく質問されます。先が見えない時代を反映して、将来についてとても悩んでいるのが良くわかります。

    スティーブ・ジョブズも言うように、残念ながら将来の動向なんて全くわからないです。私が就職した時にはインターネットやGoogleなんて想像できなかったですし、私が取り組んだNANDフラッシュも現在のような大きな産業に発展するなどとは想像もできませんでした。負の面で言うと、私が東芝に入社した時には、発電機やDRAMが東芝の事業の中心でしたが、グローバル競争や産業構造の変化で事業取り止めになり、社内の配置転換でとても苦労されている方々を見てきました。これは文系・理系を問いません。日本の金融機関に入った友人の多くも、金融機関の破綻や合併などで、最初に入社した会社を辞めていきました。

    脅してしまいましたが、逆に変化を楽しむことができれば、大変チャンスが多く面白い時代だとも言えます。私の場合は、一緒に仕事をした仲間が世界中の企業に散って活躍をしています。ISSCC、IEDMのような主要な学会に行けば、世界中から仲間が集まり、大変刺激を受けることができます。私も4-5年おきに仕事を変えてきましたが、遠い将来を考えて変わったわけではなく、その時々に重要なこと・楽しいことをしてきたら、このような経歴になりました。

    この「変化を楽しむ力」の育成こそが大学の重要な役割だと思っています。単なる知識の教育については、インターネットなどの発達により、大学以外でも受けることができるようになると思います。変化を楽しむ力の根源は、成功体験に裏付けられた自信だと思います。1つのテーマに真剣に挑戦し、時には教員や周囲の学生と助け合ったり衝突したり、「ガチンコ勝負」の中から自分なりに困難を克服できた、と思えればしめたものです。私も大学院では「ZnSeの非線形光学効果」という今とは異なる研究を行いましたが、散々悩んだ末、最後にちょっとした成功体験を経て自信を持てるようになったことが、その後様々な事に挑戦する基礎となりました。

    偉そうに書きましたが、バブル時代に大学に居た私よりも、不確定が当たり前となった現在に青春を過ごしている学生の皆さんの方が、積極的に変化していこうとしているように見え、とても頼もしく感じます。「先生、考え方古いよ」とどつかれながら、一緒に変化を楽しんでいければと思っています。

    竹内健:工学系研究科電気系工学専攻・准教授)

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