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  • 情報交換と顔合わせ/理事長 茅陽一

    先日同窓会の理事会があったが、最大の話題は同窓会のホームページをどう改革するかだった。これまで同窓会の連絡媒体というと会報と名簿、ということになるのだが、両方とも問題が出て来ている。会報のほうは、前からそうなのだが、年に1回しか出版しないから、ニュース的なものは時間的にぐんと遅れてしまう。定年や表彰のようなものはそれでもよいのだが、なにか会を開きたいと考えたり、訃報を伝えたいと思っても、到底これでは役に立たない。もう少し時間的に融通の利く情報媒体がほしくなる。一方、名簿のほうは従来から2年に1度発行されていて、単に同窓生の連絡先をさがすという以上に仕事のコンタクトの道具としても便利に使われてきたのだが、最近個人情報保護法ができたおかげで、名簿をつくるとなるとそれに載せられる個人に情報開示の承諾をとらなければならなくなった。これは同窓会事務局にとってたいへんな手間とコストになるし、また仮にやったとしても、まったく反応しない同窓生は相当数に昇ると予想される。といって、承諾を得た人たちだけの名簿となると、櫛の歯の抜けたようなものになって、同窓生名簿の体裁をなさなくなってしまう。

    そんなわけで、同窓会員の間の情報交換をよくする手段としてホームページの充実が考えられたのだが、そうなってみると、どうしてもっと早くこれをやらなかったのか、と感ずる。IT は電気関係者にはお手のものの道具だし、世間にこれだけインターネットが普及しているのだから、当然もっと早く気が付いてよかった問題である。今回は幹事側の提案をいろいろ議論したが、いずれも同窓生間のタイムリーで必要に応じて詳細な情報交換を行えるようなアイデアが出ている。企業や個人の広告も載せられるようにするので、かなり私的な情報も載せられるし、また同窓会の財政も潤うので一挙両得になる。このホームページが充実し同窓生のアクセスがうんと増えるのなら、現在の会報なども省略することを考えてよいだろう。いずれにしても、このホームページの今後にぜひ期待していただきたい。

    それにしても、まわりを見まわしてみると、こうした情報媒体の最近の普及ぶりは目覚ましい。学会活動もそうで、学会の出席登録や論文提出がインターネット経由、というのが普通になった。昔は文献検索といえば論文誌をひっくり返す、というのが普通だったが、最近は関連情報というとまずインターネットを検索する。これにはずいぶん非公式なものも載っていて、どう引用してよいか首をかしげるものもある。たまたま最近ある話題を検索したら、私の外部でのいくつかの講演のパワーポイントがひっかかった。公開を前提にした講演ならよいのだが、かなり内輪の集まりでの講演まで出ていて、主催者がこのように公開することについてどうして私に事前承諾を求めなかったのだろう、と思った。だが、私の例から推測すると、世の中ではかなり非公式な情報もインターネットで出まわっているのに違いない。それなら私も情報源として、もっと積極的にインターネットを利用しよう、という気になった。

    もちろん情報交換の方法はインターネットに限らない。携帯電話は世界どこでもほとんどの人の必携の機器になってしまって、四六時中そばにないと落ち着かない、という人が私の年代ですら増えてきた。国際的な議論をするのに、テレコンフェレンスを行うのはどこでも常套(じょうとう)手段になってきているし、少し常態的なものだとTV 会議も増えている。私はたまたまトヨタ自動車の社外役員をしているのだが、月1度程度の役員会はすべて東京―名古屋―豊田の各市にある三つの会議室を結んだTV 会議である。東京に住んでいる私など、こうした方式がなければ役員を引き受けることはできなかった。最初、こうした会議だと表面的な話しかできなくて違和感があるのではないか、と心配したのだが、参加者は慣れたもので会場の差を感じさせないフランクな発言をする。いまはそんな心配は完全にどこかに吹っ飛んでしまった。

    そんな世の中なのだが、それではすべて電子媒体任せで世の中は進むのだろうか。当然といえば当然だが、人間である以上、やはりface to faceのコミュニケーションがあってこそおたがいの情がわくし、表面の言葉では出て来ない側面もつかめる。テレコンフェレンスにしても、参加者を個人的に知り、その人がどんな顔でどんないい方をするかがわかっているかいないかで、話の内容の理解度が違ってくる。その意味で、共通の活動を行っているグループがときどき一緒に集まる機会をつくることは大事で、先に挙げたトヨタの場合でも、株主総会などで役員が皆一堂に会する機会があるのは私にとってもたいへんありがたい。

    そこで再び同窓会のことになるのだが、私の属する昭和32年卒業のクラス会では、幹事が同級生のメールアドレスをすべて把握し、ことあるごとにメールで連絡してくれるので、同級生の挙動を比較的よく知ることができる。しかし、それだけでは気が済まない人も多いようで、月に1回、土曜日の夕方学士会に集まる機会を定期的につくって、都合のつく人は集まっているようだ。私は残念ながらほとんど参加できていないのだが、今年は卒業後50年に当たるので、秋には50年会が行われるだろうし、これにはなんとしても参加しよう、といまから思っている。

    こうしたことは、電気関係の卒業生全体にも適用できるのではなかろうか。先に述べたようなホームページの充実は、同窓生同士の交流に非常に有効だと思うが、他方において、同窓生がface to faceで話をできる場を確保することはやはり重要ではなかろうか。私の記憶では、2、30年前の同窓会の懇親会は、神田学士会の一番大きな会議室いっぱいに人があふれて、それこそ長老の方々も卒業したての若い学士も入り乱れて挨拶をし、楽しく杯を交わしていたように思う。しかし、最近の同窓会総会のあとの懇親会は、めっきりと人が減って、そうした華やかさと盛り上がりがなくなってしまった。同窓会を充実させるには、やはりこの懇親会のような場をもっともっと利用すべきだと思う。このことは理事幹事諸氏もよく認識していて、前回の同窓会総会ではシンポジウムを開いて魅力あるスピーカーを招いたり電気工学を今後どうするか、という基本課題の議論を行ったりした。そのために参加者もだいぶ増えたのだが、今後はこのやり方をもっともっと広げていきたい。そうした人と人とのふれあいの場を広げることが、同窓会の発展にいっそう拍車をかけることになると私は深く信じている。

    (昭和32年電気卒 東京大学名誉教授、(財)地球環境産業技術研究機構・副理事長兼研究所長)

    理事長の関連寄稿
    同窓会の活性化(会報50号)

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