「リア王」を観て/大橋康隆@クラス1955
記>級会消息 (2014年度, class1955, 消息)
正月早々1月7日に文学座アトリエで「リア王」を観劇した。
我らの高橋編集長の長男、高橋広司さんは、リア王の長女ゴネリルの夫、オールバニ公爵を演じている。シェイクスピアの四大悲劇の一つで、最も壮大な「リア王」を観たのは、80才を過ぎた身にはタイムリーであり、身につまされたが、久し振りに演劇の迫力に圧倒された。
舞台は、ブリテンの「リア王」(江守徹)が、高齢のため退位するにあたり、国を3人の娘に分譲する場面から始まる。
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リア王パンフレット |
長女ゴネリルと次女リーガンは耳に快い言葉で父王を喜ばせるが、末娘コーディリアの率直な言葉にリア王は立腹して勘当する。コーディリアを庇った忠臣ケント伯爵も追放される。コーディリアは幸いにもフランス王妃となり、ケント伯は風貌を変えてリア王に再び仕える。
領土を譲られた長女ゴネリルと次女リーガンは父リア王を次第に冷遇した。遂にリア王は道化師を伴い、荒野にさまよい次第に気が狂ってくる。余りの酷さに、オールバニ公は妻ゴネリルを諌めるが聞く耳をもたない。一方、リア王の重臣グロスター伯爵には、嫡子エドガーと庶子エドマンドの二人の息子がいた。エドマンドの計略で、エドガーは勘当され、次女リーガンの夫コンウォール公爵はエドモンドを召し抱える。リア王は道化師と夜の荒野をさまよううちに、エドガーに出会う。そこへコンウォール公に居城を剥奪されたグロスター伯が、暗殺される恐れのあるリア王を匿うためにやってくる。しかしグロスター伯はフランス軍に通じているとエドマンドに密告され、コンウォール公とリーガンに拷問を受け目をくり抜かれる。余りの非道に、召使の一人はリーガンに背中を刺されながらもコンウォール公に致命傷を与える。
末娘コーディリアは父親を助けるためフランス軍と共にドーバーに上陸し、再会を果たす。ブリテンを守るため、止む無くオールバニ公は軍を率いてフランス軍と戦い、これを打ち破り、リア王とコーディリアは捕虜となった。しかし、長女ゴネリルは、エドマンドとの仲を嫉妬して次女リーガンを毒殺して、自害する。エドガーはエドマンドに決闘を挑み打ち倒す。ケント伯らの尽力でリア王は助け出されるが、コーディリアは獄中で殺される。娘の遺体を抱きながら、リア王は悲しみに絶叫して世を去る場面は壮絶である。この場面に居合わせたオールバニ公の複雑な心境を演じた高橋広司さんが印象的であった。最後にエドガーが「最も老いたる者が、最も苦しみに耐えた。若い吾々は今後これ程の辛い目には遭うまい。これ程長生きもすまい。」という名セリフを残して幕が閉じた。
観劇の後、電車に揺られながら帰路についたが、「リア王」の悲劇は、単なる個人の問題を超えて永遠に続く社会問題であると痛感した。私の周りには、親孝行で有能な人々が、遠く離れて住む老親の介護の為、兄弟姉妹が交代で帰郷して苦労している。先日テレビで空き家問題が取り上げられていた。日本の人口減少問題は早くから予想されていたが、具体的な新しい社会システムの構築が遅々として進んでいない。自宅介護というシステムはいずれ崩壊してゆくであろう。
今年は元旦に溝口神社に初詣をしようとしたら小雪が降っていた。自分の年令を考え自重して翌日に参拝した。お御籤には小吉と書いてあった。今年こそは真剣に終活に取り組もうと思い、古い名簿などを整理してシュレッダーにかけたら、体積が増えて大きなビニール袋が満杯になって驚いた。今年3月末には、定年を迎えた人達が各種サークルで楽しんできた企業年金会館も、老朽化のため閉館となる。社会インフラの方が先に老朽化する程長生きしたのかとつくづく思う。
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2015年1月16日 記>級会消息
よい観劇をされました。末尾の感想も同感。私は昨年11月、高橋兄のメールでご子息広司さん出演の文学座アトリエ、シェクスピア祭のことを知って、行ってみようと”買い物カゴ”に入れておりました。しかし11月のマクベスは風邪気味で見送り。年が明けてこのことをすっかり忘れていましたが、大橋兄の稿を拝見してそうだったア!まだ数日公演の日が残っています。前売り券は完売ながら当日券が数枚あるとのこと。運がよければ観ることが出来るかもしれません。コーデリヤのまっすぐな気持ちは小学校の教科書にも載っていましたっけ。先年ストラトフォードアポンエーボンにシェクスピアの生家を訪ねました。悲劇も喜劇もいいですネエ。
コメント by サイトウ — 2015年1月18日 @ 09:00
度々、劇場へ足を運んでいただき、更に感想文まで書いていただき、感謝です。私も1月10日に観ましたが、耳が少し遠いせいでストーリーの理解がいまいちでした。この記事のお蔭で理解が深まりました。Thank You!!。
終活を本格的に始動したとか…。当方も始めなければと思いつつ、先延ばしになっています。お互い健康に留意してもう少し頑張りましょう。
コメント by 高橋 郁雄 — 2015年1月18日 @ 10:31
早々に斉藤兄と高橋編集長からコメント頂き有難うございました。
ブログの文章に誤りがありました。第35行目の「エドガー」を「オールバニ公」に訂正します。最後の場面で、オールバニ侯爵の長いセリフは迫力がありました。
コメント by 大橋康隆 — 2015年1月25日 @ 11:32