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  • 「ゼロ戦」に関連して/沢辺栄一@クラス1955

     9月16日のブログで斉藤さんが宮崎駿監督の漫画映画「風立ちぬ」を紹介された内容に刺激されて、技術者堀越二郎に興味を持ってその映画を鑑賞した。


    これまでと全く異なる作風で普通の漫画映画にした宮崎駿監督の本当の意図を測りかねたが、堀越二郎の夢の実現を示すことによって、我々凡人にも「夢を持ってその実現に向けて努力せよ」と鼓舞したいという意図があったのであろうと推測している。
     百田尚樹の小説は主人公が他人のために自分を投げ出すストーリーが多いということで、この映画を観る前に「ゼロ戦」の操縦士をテーマにした百田尚樹のデビュー作「永遠の0」(講談社文庫)を読んでみた。「ゼロ戦」操縦の超エキスパートであった宮部久蔵の孫が何も親から聞かされていない祖父がなぜ特攻隊で死んだのか、祖父はどの様な人間であったのかを祖父の数人の元の戦友を訪ね調査し、その人間像を明らかにして行く感動の小説である。「ゼロ戦」はその旋回性能が抜群に良く、しかも高速で、航続距離が著しく長いという当時、世界一の性能を誇っており、太平洋戦争開始当時はアメリカの戦闘機を全く寄せ付けず、「ゼロ戦、ゼロ戦」と恐れられた。その「ゼロ戦」が無傷でアメリカに拿捕され徹底的に分析されて、その結果が反映された「グラマンF6F」が昭和18年後半に出現してから、ゼロ戦の活躍の場は極度になくなり、最後は打ち落とされるだけの特攻機となった。せっかく天才堀越二郎の設計した世界一の「ゼロ戦」に続く新鋭戦闘機が出現せず、特攻機に終わった経緯は堀越二郎に対して大変失礼であり、大変悲しいことであった。
     私は小学校時代、軍国少年であった。少年航空兵になろうか、幼年学校に入ろうかと国のために役立てたらと思っていた。飛行機にも興味を持ち、当時、堀越二郎の大学の同級生であり、航研機を設計した木村秀政の子供向け「飛行機の原理」の本を買って読んだりした。また、日本の上空を飛ぶ戦闘機は陸軍機であったが、昭和16年にデビューした1式戦闘機「隼」、18年に出てきた3式戦闘機「飛燕」、19年に出てきた4式戦闘機「疾風」など新鋭戦闘機を見上げながら、友達と真上を飛ぶこれらの戦闘機の名称を当てっこしたものである。当時、加藤隼戦闘隊長という映画等で「隼」の素晴らしさが宣伝され、現在でも戦闘機「隼」が好きである。また、「飛燕」が来襲した「ボーイング29」の機上に乗ったニュースは今でも覚えている。さらに、「疾風」は戦後アメリカに持っていかれ、アメリカのガソリンで調査したら、その性能は素晴らしく、舌を巻いて驚いたということである。
     話は逸れたが、陸軍は数年の間に次々と新鋭戦闘機を開発したのに、改良はしたのであろうが、海軍は昭和15年にデビューした「ゼロ戦」に続く最新鋭機が敗戦まで出てこなかったのはなぜであろうかと「永遠の0」を読んだ後、感じたことである。あまりにも性能が良すぎたために、海軍の航空幹部が驕り高ぶり、「ゼロ戦」に満足し、怠慢になり、技術の進歩を考えなかったのではなかろうか。NHKの放送の中でも海軍の要求が強くこんな要求できるかという反発の中で、技術者の意地で戦闘機の逸品「ゼロ戦」が出来上がったのであり、私の経験からしても普通では不可能な機器、システムでも要求すれば出来上がってしまうという日本人の優秀な能力を持つ堀越二郎の後輩が居たのではないかと残念に思う次第である。
    $00A0$00A0$00A0$00A0$00A0沢辺榮一(2013.10.1)

    2 Comments »
    1. 「ゼロ戦」のお話を興味深く拝読しました。私も小学生の頃、先生に引率されて「加藤隼戦闘隊長」を観に行きました。戦時中に「ゼロ戦」の映画を観た記憶はありません。唯、ある映画で、航空母艦への着艦訓練中に、戦闘機が着艦に失敗して木端微塵になるシーンを観て吃驚しました。今考えると「ゼロ戦」かもしれません。「飛燕」や「疾風」の話は、戦後になって知りました。「ゼロ戦」の後継機が開発されなかったことは、他の分野でも心すべき事例だと思います。

      コメント by 大橋康隆 — 2013年10月16日 @ 21:13

    2. 「飛燕」という懐かしい名前が出てきました。昭和19年、小生が疎開した先での愛知県一宮中学4年生のとき、学徒動員の川崎航空機で作っていたのが飛燕の胴体“キ-61”でした。水冷式で鼻のとがった、容はいい飛行機でしたが、エンジンの構造が複雑でトラブルが多かったようです。たしかに国内ではB29の迎撃に使われていました。私のかかわっていたのは主翼と脚の部分の鋲打ち。長い翼桁は120Kgほどあったと記憶していますがそれを二人で運びました。あるときには徹夜で作業をして夜が白々と明けるのをみて帰宅したのを想い出します。

      コメント by サイトウ — 2013年10月16日 @ 21:24

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