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  • 風立ちぬ/斎藤嘉博@クラス1955

      暑かった夏も雷雨と竜巻で終わりを告げ、秋の風が立つこのごろになりました。その夏の間にディズニーの“モンスターズユニバーシティー”とジブリの“風立ちぬ”二本のアニメを見ました。


      “ユニバーシティー”は2001年に制作の“モンスターズインク”で大活躍をしたゴリラまがいのモンスター「サリー」と相棒のマイクが、時代を遡って大学の友達として出会ったころのお話し。前作のモンスターズインクは、サリーがモンスターズの世界で禁忌とされている人間の子供、日本的でとてもかわいいブーと仲良くなって、ライバルのランドールと活劇を演じるお話し。夜に寝入った人間界の子供たちをモンスターの怖さで脅かし、その時にあがる悲鳴でモンスターズの社会を支えるエネルギーを作りだすというそれまでの時代から、サリーの機転で、悲鳴より笑い声のほうが効果的だと子供たちを笑わせる仕組みに変わっていくという明快な筋書で、小生の大好きなアニメの一本になっています。しかし同じキャラクターで描く第二弾ともなるとやはりいささか陳腐で見栄えがしません。トイストーリー2でもカーズ2でもそうでしたが、焼き直しとなるとどうしても陳腐さがめだって、話の筋にメリハリが欠けますし、面白さも少ない。封切り映画の興行収入としては大変好調だったようですが私にはちょっと期待外れでした。

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    $00A0風立ちぬパンフ $00A0所沢航空発祥記念館

      “風立ちぬ”は宮崎駿監督が引退をすることになりましたので彼の最後の長編アニメになりました。アニメはこれまでの宮崎さん制作のハウルの城から始まってトトロ、神隠し、ポニョなどにみられたファンタジーの世界とは一味、いやふた味以上も違って、零戦の設計者として有名な堀越二郎さん、実在の人物をモデルにしたもの。でも宮崎さんのアニメですからそこはテレビのドキュメンタリーではなく、美しい飛行機へのあこがれと菜穂子への愛情をおりまぜて、大変幻想的な美しい映画が出来上がりました。
      監督はパンフレットの中で「堀越の生きた時代は日本に漂う閉塞感の激しい時代だった。日本帝国が破滅にむかって突き進み、ついに崩壊する過程であった。しかし私は独創性と才能にもっとも抜きんでていた二郎の人間性を描きたかった」と述べています。そしてその時代は私たちのもう一世代前になりますが、描かれた軽井沢の自然や碓氷峠のアーチを走るSL、市電の走る東京の街並みは私たちが子供であったときそのまま。昔のこうした風景を知らない今の若い人たちがみるこのアニメの見方と私たちとでは、その印象がずいぶん違ったものになるのでしょう。ユンカースの飛行機などは少年倶楽部で見て心を躍らした思い出。監督の気持ちが画面いっぱいに展開される二時間余りを私はその世界にすっかり浸りこんで観ていました。ひと時最高水準の高性能を持ち、米国に恐れられた零戦が、墓場のように地面に累々と横たわるエンディングはちょっと異様ながら作者の気持ちが伝わってきます。
      今年はなぜか零戦との関連が深い夏でした。6月には所沢の航空発祥記念館で催された現在飛行可能な唯一の零戦を観てきましたし、8月にはNHKが二回にわたって“零戦~搭乗員たちがみつめた太平洋戦争”という特集を見せてくれました。こうした零戦のイメージを通して、ホントウの技術ってなんなのだろうと福島のことも思い併せながら考えこんでしまい、さらに一時「ニホン・アズ・ナンバーワン」と言われた社会、経済が零戦のような運命を辿らないようにと願わずにはいられないのでした。
      まだご覧になっていないかたがあれば是非ご覧になって私たちの過ごした時代を振り返ってみられてはいかがでしょうか。

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