「新世界交響曲」(続)/大曲恒雄@クラス1955
記>級会消息 (2011年度, class1955, 消息)
LP/CDジャケットくらべ
先日のブログに「新世界交響曲」を発表したら新田兄から「トスカニーニ盤を持っているよ」とのコメントを頂いた。また斎藤さんからはカラヤン盤のジャケット写真をメール添付で送って頂いた。そこで新田兄にも写真の送付をお願いし、またトランクルームに預けっぱなしになっていた小生のLP2枚も取り出してきて、ジャケット写真の誌上品評会(?)を開くことにした。
ついでにCDのジャケットも並べようと思って整理した所4枚もあることが分かった。これは我ながら意外であったが、察する所当時愛読していた「CDジャーナル」の新譜紹介欄に褒め言葉が沢山並んでいて「クラシックファン必聴」などと書いてあり、その都度買う気になったのではないかと推測している。
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$00A0(写真1) LP-1 トスカニーニ/NBC (新田兄所蔵) |
$00A0 (写真2) LP-2 カラヤン/ベルリンフィル (斎藤さん所蔵) |
(写真1)は新田兄所蔵のトスカニーニ盤で、一度見たら忘れられないほど強烈な印象を受けるジャケットデザインである。新田兄によると購入時期は1954 or 1955年とのこと。
先日のレポートで紹介した1969/1版「レコード芸術付録・作曲家別洋楽レコード総目録」の#1と#2にトスカニーニ盤が載っている(発売は1966/1と1967/9)が、レコード番号も発売時期も違う。音源は多分同じはずなのでリカットされ再発売されたものと推定している。#2はステレオ盤であり、疑似ステレオ化されたものと思う。なお、新田兄の盤は「新世界」単独であるが、上記2枚には「モルダウ」がカップリングされている。これはレコードのカッティング技術が進歩し、収録時間が長くなったためである。
(写真2)は斎藤さん所蔵のカラヤン盤で、「総目録」の#14に載っており発売時期は1967/7となっている。ジャケットには指揮中のカラヤンを大写しにしたコンサートシーンが載っており、オーソドックスなスタイルと言えよう。
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$00A0 (写真3) LP-3 セル/クリーヴランド |
$00A0 (写真4) LP-4 カラヤン/ベルリンフィル |
(写真3)はセル/クリーヴランドの盤で、これもかなり古く「総目録」には載っていない。2008/9/1付けのブログに掲載した「LPの思い出」に書いたように、日本コロンビアから国産初のLPレコードが発売されたのが1951年の春で、その時12インチ盤のレコード番号はWL-5001から始まっていたと記憶している。このセル盤のレコード番号WL5059から推定するとLP発売開始から間もなく出たものと思われる。ジャケットデザインもなかなかユニークで、世界地図とドボルザークの似顔絵をあしらい、大変面白い。
(写真4)はカラヤン/ベルリンフィルの盤で、これも「総目録」には載っていない。ジャケットにはトーテムポールや酋長の顔が描かれている。発売時期ははっきりしないが、志鳥栄八郎氏による解説文の中に「カラヤン/ベルリンフィルの来日はまだ我々の記憶に生々しい」との一節がある。盤面にMicrogrooveと書かれているが、これは音量に応じてレコードの溝間隔を制御する技術で、この技術のおかげで収録時間が大幅に延長された。カップリング曲は「モルダウ」である。
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$00A0 (写真5) CD-1 ショルティ/シカゴ |
$00A0(写真6) CD-2 ノイマン/チェコフィル |
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$00A0(写真7) CD-3 セル/クリーヴランド |
$00A0(写真8) CD-4 カラヤン/ウィーンフィル |
余談になるが、ベートーベンの交響曲第2番と第4番が1枚に入っているレコード(指揮はワルター、合計約65分)が発売されて話題となり、直ぐに買いに行ったことを覚えている。また、後には「第九」を1枚に入れる競争(?)もあったと記憶している。
所が、「総目録」を見ると「新世界」と「田園」や「悲愴」がカップリングされたレコードが何枚もあり、両面併せて1時間半近い録音時間を持つ「徳用盤」が1966年頃から出ていたことが分かる。1968/1にエンジェルからカラヤン/ベルリンフィル盤が3枚出ているが、カップリング曲はそれぞれ「運命」、「未完成」、「田園」で、ゴールデンコンビによる「超お徳用盤」でもあり、かなり売れたものと推定される。それにあやかろうとしたのかどうか分からないが、1968/5にやはりカラヤン/ベルリンフィルで「悲愴」をカップリングしたレコードがロンドンから出ている。
(写真5)~(写真8)はCDのジャケットで、先日のブログに使用した(写真5)以外は指揮者の顔やコンサート風景が使われていて面白みが無い。
なお、CDではすべて交響曲第9番となっていて(逆にLPはすべて第5番)、時代の変化が窺われる。
最近のCDはどうなっているかなと思って横浜駅近くのレコードショップを覗いてみたら「新世界」のCDが14種、20数枚並んでいた。ジャケットは指揮者の顔やコンサート風景を使ったものと、風景写真が半々という感じで、LPのように印象的なものは残念ながら見当たらなかった。
2011年12月12日 記>級会消息
大曲様
大変素晴らしい蒐集、解説を有難うございました。
ただ見ていますと、ジャケットの違いと見えますが、ジャケットを通して、音楽の歴史的変遷や録音・カッテイング技術の推移を感じることができる注目すべき分析になっているとも言えます。
私には、過去のレコードや音楽の思い出を思い起こさせてくれただけではなく、当時、持っていたSPも聴けて且つLPも聴くために、弱電の方々の教えを受けながら、ピックアップ、プリアンプ、メインアップ、スピーカーをいろいろ試行錯誤しながら組んで、LP,SPを楽しんだことを思い出させてくれ、しばし、懐かしい時を過ごすことが出来ました。有難うございました。
余談ではありますが、コロンビアのWL5000番がそのような意味を持っているとは知りませんで、私が最初に買ったのを出してみますと、コロンビアWL5037フランチエスカッテイによるパガニーイ第1番とサンサーンスの第3番でした。これは大変好きで、(特にパガニーニ)すり減るほど聴きました。なお,ジャケットは味もそっけもなく、文字が書いてあるだけで、裏面は、全部英語で、曲の紹介だけ出した。 新田
コメント by 新田義雄 — 2011年12月13日 @ 11:32
新田兄へ コメント有り難うございました。
先日のレポートに書き忘れましたが、日本コロンビアが1951年に最初の国産LPを出したとき、10インチ盤も含まれていてレコード番号はWL-2001から始まっていました。そのWL-2001はワルター/ニューヨークフィルの「未完成」で、買った時期ははっきり覚えていませんが、貴兄同様すり減るほど聞いたものです。
小生も自作派で、プレーヤー、アンプ、スピーカーなどを作っては壊し、又作り直して楽しんでいました。ただ、幸いなこと(?)にSPはそれ程持っていなかったのでプレーヤーはLP専用としてスタートできました。SP/LP共用となるとアーム2本をどう配置するかなど、いろいろ苦労されたことと思います。
コメント by 大曲 恒雄 — 2011年12月16日 @ 22:39