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  • 近頃思うこと(その20)/沢辺栄一@クラス1955

     東日本大震災はM9.0という稀に見る巨大地震に予想を超える大津波が加わり、結果として原子力発電所の損壊による放射能災害までも併発し、大災害になった。


     3月10日発行の某週刊誌に民間で地震予測研究をしている「青松倶楽部」の進村耕喜代表が「最近、東日本で熱線に地震の前兆が出ており、FM波のノイズも上昇するという観測異常が確認されています。そういったことから予測すると、今年の8月までにM7.5前後の津波を伴う宮城県沖地震が起こる可能性があります」と予測していたそうである。地震予測には公的には地震予知連絡会があるが、わが国の地震予知計画は終始、短期予測には不向きな地震観測一辺倒であるので予知ができていない。これまで大きな地震発生前に的確な地震予測を出したことはない。予知計画の見直しとして次世代研究者達の熱心な討論の末「前兆現象の探求よりは地震現象の全過程の基礎研究に重点を移す」と結論に達したとのことであるが、予知の手掛かりとなる前兆現象を調査、または、それと関連付けなしで地震予知ができるのであろうか。地震研究者たちは調査、データの取りにくい前兆現象の探求よりも論文になり易い研究に向かってしまっているように思えてならない。
     大学やその他の国の研究機関の地震研究所で地震の研究は進められ、地震の発生メカニズムも解明されており、地震の予知はできなくとも解明結果を利用し、シミュレーション等により建設会社そのほかでも耐震構造や免震構造を持った個々の建築物が造られており、地震による損壊も昔に比べ少なくなっているのではないかと思われる。
     一方、津波は地震と比べ著しく発生回数が少なく、記録としては残っているが、正確な物理的データが少ないと思われる。あるものを研究する場合、データー収集時代、データーの解析、理論法則作成時代、理論を基に合成、創造時代と進展して行くと思うが、津波に関してはデーター収集時代にあるのではないかと考えられる。これまでの津波対策は公的には防潮堤で波を防ぎ、一般的には高所に避難することのようである。今回の災害では村民の反対にあいながらも、村長の一存で38億円を掛けて過去の実際の津波と同じ高さ15mの防潮堤を築いてあったため助かった村がる。また、チリ地震の津波を防いだ高さ7.5mの防潮堤に安心してかえって死者を多く出したところもあったとのことである。地震に対して耐震構造、免震構造の建築物が造られているように、津波に対しても津波に対処できる方法を研究してもらいたいと思う。津波は一種の水波のパルス伝送であり、新聞によると今回そのスピードは時速120km程度の高速であったようだ。電気信号伝送の類似から素人の考える対策としては信号の全反射と減衰並びにハイパスフィルタが流体伝送の中でもあるのではないかと思う。防潮堤など高い障壁で津波を抑えるのは全反射であり、テトラポットは波を減衰させる一手段のようであるが、もっと有効な波の減衰構造はないのであろうか。電波では高層建築でTV電波の反射を防ぐためやレーダーに捉えられないようなステルス戦闘機に使用されている電波吸収材があるが、水波に対する効率の良い吸収材でエネルギーを奪うものは無いのであろうか。いずれにしても自然の大エネルギーに対するには莫大な費用を必要とするのかもしれない。
     今回の災害には更に放射能災害が発生し、世界的に原子力発電所の建設可否とエネルギー問題へと発展している。福島第1原子力発電所の1号機と2号機はGE製であり、GE内で安全性に問題ありと指摘し、改善が受け入れられなかった3名の技術者が退職していると聞く。また日本でも私の知人の兄が同様のことで転職した。東京電力は全て想定外の災害であることを主張しているが、東京電力の想定の地震はM7.9であり、津波の想定は5.7mであった。作家吉村昭氏の著書「三陸海岸大津波」(文春文庫)は明治29年と昭和8年に三陸海岸を襲った大津波の恐怖を調査、記録した図書で、これによると経験者の古老の話として50mの高さまで津波が襲い掛かってきたことを記している。津波に対してもこれまでの記録からそれなりの高所に建設するか、対応がなされていなくてはならなかったように思われる。また、最近の日経ビジネス誌によると東京電力の原子力発電の歴史は事故と隠蔽とデータ改ざんと謝罪の歴史で、政治家、官僚、学会までも取り込み、原発批判を封じ込め、過去の事実と真摯な忠告、提案から目を背け、住民よりも自社の利のみを考えてきた歴史である。当初から安全性に問題があったようであり、大津波への初期の対処と発生後の措置も含めて災害を大きくしたようで、一種の人災である。
     3月11日のTVで福島第2原子力発電所はポンプを変えて冷やし、自動停止に成功したと報じていた。また、先日の横浜30年会で同じく三陸海岸にある東北電力の女川原子力発電所も自動停止し、放射能問題は発生しなかったことを知った。東北青森県から関東の茨城県までの太平洋に面したところには全部で5箇所の原子力発電所があり、福島第1発電所以外は全て放射能災害に関し問題がなかったのである。このことはM9.0で震度7の地震と津波に襲われても日本製の原子力発電所は放射能問題のなかったことを示している。福島第1原子力発電所とその他の4箇所の発電所との違いと今回の災害への対処の比較をし、問題点を明確にして、今後の参考とすれば良いのではないかと思う。そこで5月にあるサミットで福島第1原子力発電所の放射能災害は人災であることを首相と東京電力とその監督官庁は率直に認め、適切に処理している日本製原子力発電所では問題のないことを強調し、世界中で問題になっている原子力発電所問題とエネルギー問題の危惧を払拭してきてほしいところである。
     しかし、現在発生している福島第一原子力発電所の放射能問題は最優先で一日でも早く解決してもらいたいと願うところである。
     今回の大災害に際して素人の勝手な思いである。

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