オペラは楽しい/斉藤嘉博@クラス1955
記>級会消息 (2010年度, class1955, 消息)
この欄の仲間にもオペラのファンは多いと思います。お腹の底から声をだし音楽に乗せて感情を表現するこの芝居には、身体を通して作曲者の意図が乗り移ります。
私がはじめてオペラを見たのは1947年、まだ焼け野が原が残る名古屋の名宝劇場でのカルメンでした。藤原義江のホセに北沢栄のカルメン、ミカエラは砂原美智子。戦争に疲れて八高(旧制)復興のために日々を過していた身にとってこの一夜は真に夢の世界。世の中にこんな素晴らしいものがあったのかと感激一入でした。
その後1956年の秋にNHKの前田義則会長はイタリアオペラを招聘します。そのときは観る機会を得ませんでした。59年には第2回のイタリアオペラ招聘。帝劇だったか東宝劇場だったか忘れましたがシミオナートとデル・モナコが歌うカルメンを観たのです。なるほど藤原節とは重厚さが違うわとびっくり。しかし私はそんな大歌手ではなくミミを歌ったアルダ・ノニのかわいらしさに熱を上げていたものでした。
1973年にはNHKホールが出来て、イタリアオペラも第7回からはここでの上演。この頃からはメトロポリタンオペラ、ミュンヘンオペラなどの招聘もあるようになってオペラ界は賑やかになってきたのですが、小生は仕事が忙しかったり、懐が寂しかったりで、オペラからは遠ざかるようになってしまいました。もう一度オペラに火がつくのはずっと下がって1997年の秋に新国立劇場が初台に開場してから。私の家から歩いて20分という地の利に恵まれて、またムサビではオペラの舞台制作にご経験が深くNHKアートにおられた川口さんを映像学科の講師にお迎えしたこともあって「ウンもう一度オペラを楽しむか!」
渋谷区主催のオペラ講座に出席して勉強し、そのとき同窓だったおばさまたち数人と“オペラリリカ”と名付ける会を作って新国立劇場のオペラご担当の方を先生に招いた講座を立ち上げました。とくに大変熱心にこの会の運営をして下さったF夫人、I夫人のおかげで仲間も増え、皆さんの意欲は盛り上がり、ずっと継続しているこの会も今年中には100回を迎えることになります。またここ数年、年に3~4回上記の会の古くからのお仲間が拙宅に集って、BDで一つのオペラ(ビデオ)をゆっくりと観る機会をもっています。先月はアンナ・ネトレプコの歌う“ルチア”を観てあの狂乱の場に皆さん大満足。七福神ならぬ七弁天、皆さん一流の評論家ですので、お茶を飲みながらのあとのお喋りがまた楽しく、一人でビデオを観るときとは違って意欲は満点なのです。小生のお好みはワーグナー。“パルジファル”の重厚さには涙が出ますし、“名歌手”のマックスは私の大好きな人物の一人です。
こうした楽しみはハイビジョン技術と液晶大画面の素晴らしい成果でした。臨場感のあるきれいな画面は舞台中継に最適なメディアです。しかしこまったのはこれまでに録画した古いDVD。ひどく見劣りがするので画面を縮小してやっとなんとか。
この私のオペラ志向にこのところやや違った風が吹き始めているのです。このお話しは次回に。
2010年8月11日 記>級会消息