がんの話(その3)/大曲恒雄@クラス1955
記>級会消息 (2009年度, class1955, 消息)
~ピロリ菌と胃がんの関係~
1. はじめに
・2010/1/27に放送されたNHK「ためしてガッテン」でピロリ菌と胃がんとの関係を取り上げていた
・見た人も多いと思うが、これまでの常識(?)を覆すような内容も含まれていたのでその要点をメモ風にまとめて紹介する
・昨年、日本ヘリコバクター学会が「ピロリ菌感染者は全員除菌すべし」と
ガイドラインを改定した
・なお、ピロリ菌感染者は何と6,000万人もいると推定されている
2. 本題に入る前にまず胃潰瘍の話
・俗に「ストレスで胃に穴があく」と言うように、これまで胃潰瘍の原因はストレスだと思われてきたがそうでないことが分かった
・阪神・淡路大震災の後胃潰瘍を発症した人が増えたが、その人たちを調べた結果83%はピロリ菌感染者、残りの17%は薬の副作用などのためと判明。ストレスだけで胃潰瘍になった人は殆どいないことが分かった。
・このメカニズムは ①ピロリ菌が胃の粘液を減らし胃酸に対する防御を弱める、②ストレスが追い打ちをかける、③その結果胃潰瘍になる
・胃潰瘍を何度も経験した人は推定50万人。十二指腸潰瘍も9割はピロリ菌によって起こる(推定10万人)。この60万人は今すぐに除菌した方が良い。この場合は保険適用となる(過去の潰瘍でも検査で痕跡が見付かればOK)。
3. 胃がんとピロリ菌の関係
・胃がんで毎年5万人が亡くなる、その98%がピロリ菌感染者である
・しかし、ピロリ菌感染者が皆胃がんになるわけではない
・ピロリ菌は胃壁の細胞を攻撃するのでそのダメージが蓄積すると胃がんのベースになるが、それだけで胃がんになることは少ない
・胃がんになるには、そこにがん発症の手助けをするものの介在が必要
・胃がんを起こす危険性を高めるもの(番組では「胃がんリスクを上げる悪魔たち」と呼んでいる)が最新の研究で3つ明らかになっている
①高血糖:「ピロリ菌感染+高血糖」の人は「ピロリ菌無し+血糖値正常」の人に比べて4倍胃がんになりやすい
②喫煙:「ピロリ菌感染+喫煙」の人は「ピロリ菌無し+非喫煙」の人の11倍胃がんになりやすい
③塩分のとり過ぎ(スナネズミの実験):「ピロリ菌感染+がんになりやすい薬+塩分のとりすぎ」のネズミは「ピロリ菌なし+がんになりやすい薬+塩分正常」のネズミに比べて3倍も胃がんになった
・高血糖、喫煙、塩分とり過ぎの人はピロリ菌の検査と除菌を直ぐに考えた方が良い
・ただし「ピロリ菌の除菌をしたから胃がんにならない」とは言い切れない
・ピロリ菌は免疫力の弱い5才くらいまでに感染し、除菌しない限り胃壁を攻撃し続ける。この結果、ほぼ全員が萎縮性胃炎になる。この萎縮が進むほど胃がんの危険性が増加する。
・また、除菌したとき既に小さながんができていて、後にこれが成長して発見されるというケースも考えられる
・従って除菌した後も胃がん検診は定期的に受けるべき
4. ピロリ菌感染の検査方法
①呼気検査:検査薬を飲む前と飲んだ後の呼気に含まれる二酸化炭素の成分から胃の中にピロリ菌がいるかどうかを調べる
②内視鏡検査:胃の組織を一部取って調べる
③血液検査:ピロリ菌がいると血液中に抗体が出る
④尿検査、便検査、など
5. ピロリ菌の除菌方法
・3種類の内服薬(抗生物質2種類と酸を抑える薬1種類)を1日2回、1週間飲む
・除菌の成功率は80%くらい(最近抵抗力の強いピロリ菌が増えてきた)
・除菌に失敗した場合は抗生物質を変えて再チャレンジする。同じように3種類の内服薬を1日2回、1週間飲む。これで97%くらいは除菌に成功する。
6. 終わりに
番組に出演された北大病院の加藤先生によれば「ピロリ菌の除菌で胃がんによる死亡者を大幅に減らすことは確実に可能」とのこと。
7. 付け足し:今度は肺がんの話
小生が毎年人間ドックを受けているランドマークタワーのクリニック(*)で、オプション検査にマルチスライスCT検査が追加された。この検査はがんの発見率がX線検査より10-20倍高いそうで、肺がんの早期発見に大変有効である。
パンフレットのコピーを右上に示す。
(*) URLは http://www.ams-dock.jp/landmark/
2010年2月21日 記>級会消息
コメントが遅くなり済みません。小生は数年前の健康診断のオプションで、ピロリ菌の血液検査を受けたところ(+)でした。早速3種類の抗生物質を飲まされた後、風船のようなもので呼気検査を受け(ー)になりました。戦時中に小学生だった我々は大抵ピロリ菌の保持者だそうです。先日のテレビを見て、私の家内も早速クリニックで血液検査をしてもらい、(ー)だったので安心していました。しかし厳密には内視鏡検査が必要とのことでした。ピロリ菌の検査をしてない方は、先ずは簡単な血液検査をすることをお勧めします。
コメント by 大橋康隆 — 2010年2月24日 @ 21:26