地面が揺れる/斎藤嘉博@クラス1955
記>級会消息 (2009年度, class1955, 消息)
6千人の死者を出した阪神淡路震災から15年、そしてハイチの地震。動かざること大地のごとくなんてウソばかりで、マントルの上に浮かんだプレートに乗っている大地は地下のナマズのちょっとしたご機嫌でグラグラと揺れるのです。
太平洋プレート、フィリピン海プレートなど4枚のプレートの交差点に位置する日本は世界で起こる地震のほぼ一割を引き受けているとか。日本館の2階にはわが国の周辺で起きた地震の震源地を黄と赤の小さい玉で置き変えた展示があります。手前にある球は地表に近い浅いところで起きた地震。玉の集合が造る曲面を見ると、プレートの断層で地震が起こることがよく理解できます。そしてその隣に全国800の地震観測地から送られてくる振動データーから選んだ38箇所の様子がリアルタイムで見られるパネルがあって、人体に感じない小さい振動の様子まで映しだされます。過日伊東沖で起こった小さな地震の折にも伊東、それに隣接の静岡藤枝などの欄までが振動の波形で真っ黒になりました。
同じ日本館の1階には1872年に起こったM7.9の浜田地震を契機に1880年代はじめごろから使用されたユーイング・グレイの円盤式地震計(写真)をはじめ、最近の95型電磁式地震計まで地震計測技術の足跡を示す様々な地震計が展示されています。地下のナマズの動きが地震を起こすことは私たちの子供の頃には常識でした。そのナマズを鹿島神宮の神様が大きな石で押さえ込んでいる様子を描いた一枚の画が展示されています。これは安政の大地震(1855)の直後に流行した「鯰絵」と呼ばれる一枚摺の瓦版で、壁に貼って地震除けのオマジナイという効用のほか、地震に乗じての金儲け 被災者を救済する会の様子を風刺的に描いたものもあったようで、当時のマスコミの一形ということができましょう。しかしこの瓦版は人心を惑わすものと幕府が厳しい取り締まりを行ったので現在では数少ないものしか残っていないようです。
地震国はまた火山国、世界で活動する火山のうちのこれも一割が日本にあるそうですが、それに伴って温泉も豊富。欧米の温泉は水着を着てはいる温水プール。いずれもクアハウスがあり、療養のための温泉でとても雪の露天風呂で杯を傾けるなんていう情緒を味わえるものではありません。しかし温泉を楽しむだけではなく、これから炭酸ガスの25%削減を目指す日本では、地熱発電が重要な役割を果たすことになるでしょう。学生時代、“火主水従”の講義はありましたが地熱の話は無かったように思います。日本にはまだ地熱発電施設も少なく、その寄与率もきわめて小さいのですが、これこそ日本のエコのホープ。大掛かりな施設を作るのでなくて、僅かな温度差を電力に変換する有用な材料などが開発されれば経済的にも有利でしょう。そんなことになれば化石燃料資源の少ない日本では恐い地震もありがたい資源になり得るのだと思うのです。
2010年2月1日 記>級会消息