• 最近の記事

  • Multi-Language

  • 秋の虫の音/新井彰@クラス1955

     数年前にNHKのBS-hiの番組「アインシュタインの眼、 秋の虫」で「日本鳴く虫保存会」という会の存在を知りました。さっそく入会。 カンタンマツムシクツワムシキリギリスなどの卵や幼虫を分けてもらって育てたりしました。


    カンタンはとてもいい声で楽しませてくれましたが、クツワムシは「ヤカマシーイッ 寝られない!」と不評でした。以下は、私がその会の「会員日記」に投稿した文に加筆修正したものです。

    (1)文部省唱歌「虫の声」のこと
     NHKーFMの新番組「日本の歌・世界の歌」の中で文部省唱歌「虫のこえ」を放送していました。聞いていて、あれ、ちょっとおかしいのではと思いました。
     あれ松虫が鳴いているチンチロリン・・・あれ鈴虫も鳴き出したリンリンリン・・・ガチャガチャくつわ虫・・・あとからウマオイ追いついてスイッチョン・・・はいいけれど、歌の2番の始まりの「キリキリキリキリ コオロギや・・・」というところ。コオロギの鳴き方はキリキリよりはコロコロが一般的ではないのか?と気になったのです。
     元々の文部省唱歌ではコオロギではなくキリギリスであったという話を思い出しました。岩波文庫の堀内敬三編の「日本唱歌集」を見ても、明治43年の尋常小学読本唱歌では確かに「きりきり きりぎりす」となっています。
     どうしてキリギリスが現在のコオロギに変えられたかは、私の想像ですが、キリギリスの鳴き声は「ギーーッ チョン」であり「キリキリ」はおかしいのではという指摘があり、いやいやこのキリギリスというのは実はコオロギのことなのだ、昔はコオロギのことをキリギリスと言っていたのだ、それで歌詞を「キリギリス」から「コオロギ」に変えて歌おうということになったのでしょう。(百人一首の「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに・・・」のキリギリスも現在のコオロギのことだと解説のどの本にも書かれています)
     しかし、キリギリスからコオロへの歌詞の修正はいいとしてもコオロギの代表的な鳴き声はエンンマコオロギのコロコロであってキリキリはおかしいのでは?そこで私は学研の「新古語辞典」で「きりぎりす」を引いてみました。次のように出ています。
     コオロギの古名。秋に「綴り刺せ」と鳴くという。「秋風に綻びぬらし藤袴綴り刺せてふキリギリス鳴く 古今集1020」
     そうか、文部省唱歌のキリギリスツヅレサセコオロギのことなのだ。ツヅレサセコオロギの聞き做し声は一般にリィリィリィリィであるが、キリキリと言えなくもない。昔はツヅレサセコオロギの声がどうやらコオロギの代表的な声であったらしい。明治の作詞者(不詳)も古今集のこの歌を踏まえていたのかも知れない。
    ツヅレサセコオロギでなくてもエンマコオロギ以外の多くのコオロギは リリリリ・・・とか ギギギ・・・と鳴くから、コオロギの鳴き声をキリキリとしてもおかしくないなと納得する気になりました。それと、「きりきり きりぎりす」と語呂がいいから原作詞者は尚のこと「きりきり」にしたのかもしれません。
     以上が私の推論です。
    (2)この秋に特定できた鳴く虫の声
     8月から11月にかけて静岡市の実家に帰った時にはいつも夕食後に自転車で近所を鳴く虫を聴いて回っていました。
     声を録音してインターネットの方々のHPの録音と比較しました。その結果、自分の家の庭や近隣で意外に多くの種類の虫が鳴いているのを知りました。
     家の庭ではエンマコオロギツヅレサセコオロギミツカドコオロギオカメコオロギかも)、アオマツムシなど鳴いていることは分かっていましたが、カネタタキクサヒバリも鳴いているのを今秋初めて知りました、嬉しい発見でした。
     近所(7-800メートル以内)では、クツワムシマツムシスズムシカヤヒバリマダラスズなどが鳴いていて、カンタンまで鳴いている所が一箇所だけでしたがありました。
     本当にカンタンなのか自信がなかったので、10月の「日本鳴く虫保存会」の例会で小野名誉会長さんに私の録音を聴いて頂きました。即座にカンタンだよとのお墨付き、「これは気温22-23℃の声だよ」にさすが名誉会長さんと感服。クサヒバリの声も確認していただきました。私には何の虫か分からなかった録音もマダラスズだということを教えて頂きました。マダラスズは11月になって方々でジーージーーとよく鳴いています、小さな声ですが。
     合計12種類の鳴く虫の声が特定できました。いずれも野生のです。注意して聴くと回りには意外にいろんな虫が鳴いているんだということに気がついたこの秋でした。

    (3)集音器の自作
     この秋、鳴く虫の声を録音している時に集音器の必要性を感じました。隣の家の庭の樹木で鳴いているのがクサヒバリらしいのにマイクを近づけられなくて上手く録音できなかったので、自作を思い立ち写真のようなものを作りました。$00A0
    $00A0DSCN3029.JPG

     100円ショップで見つけた15cm径のプラスチックの椀に有り合わせのマイクを取り付け、ホームセンターで見つけた150円の木の丸棒をL金具で付けただけのものです。こんなものでも集音力と指向性はかなりあり充分役に立ちます、うまく録音することができるようになりました。
     今はSDカードなどを使ったヴォイスレコーダが出まわっていて、MDは時代おくれでしょうがこのMDレコーダの録音は非常に自然の音に聞こえ、私は満足しています。

    3 Comments »
    1.  新井さんがこんな趣味を持っているのを始めて知りました。虫の声を聞きに散歩するのも、花を探して散歩するのも似ていますね。兎に角この年になったらなるべく外出する理由を見つけて歩く習慣をつけて健康を維持したいと思っています。因みに今年の(平均歩数/日)は約5千歩です。

      コメント by 高橋 郁雄 — 2009年12月2日 @ 12:17

    2. 新井さんの一文、読んで楽しく庭の虫の音を思い出しながら再読しました。
      自宅はマンションですが1Fで前庭の先が土手で開けているので結構虫が居ます。声で特定出来たのはウマオイとコオロギ位で後は素人の私に識別不能です。毎年秋は賑やかなのが今年は静かで、虫の快適な期間が短かったせいか、そう言えば毎年新年を過ぎて咲くアロエの株が今年は既に満開です。何か気候の変化を虫も植物も感じて居るのかも知れません。

      コメント by 小林 凱 — 2009年12月3日 @ 09:03

    3. 新井さんが空の上だけでなく草むらに興味があるとは知りませんでしたが、楽しく拝見しました。虫の声も少なくなりました。博物館ではエンマコオロギ、スズムシ、カンタン、ヤブキリ、ツユムシなどが季節を問わずいつでも鳴いています。人間と違って鳴くのはオスばかり。この頃の若い人たちはどちらが鳴いているのでしょうか。

      コメント by サイトウ — 2009年12月8日 @ 23:04

    Leave a comment

    コメント投稿後は、管理者の承認まで少しお待ち下さい。また、コメント内容によっては掲載を行わない場合もあります。