天文対話/斎藤嘉博@クラス1955
記>級会消息 (2009年度, class1955, 消息)
「ここに太陽系銀河団とそれに一番近い銀河団、アンドロメダの展示があるだろ」「ハイ」
「その距離は230万光年と書いてあるけど、230万光年ってどのくらいの距離かネ?」
「光の速さで230万年かかるということですが」
「そんなこと分かってらーネ、それがどのくらいの距離かって聞いてるんだ。十万億土とどっちが遠い?」
「??さあ、まだ行ったことがないんで分かりませんが、極楽浄土への距離なら三蔵法師にでも尋ねてごらんになったら?それはそうと太陽から地球まで光が到達するのにどのくらいの時間がかかるかご存知ですか?」
「ウン、光は早いけど、1分もかかるかナ」
「8分20秒かかるんです」
「へえ、そんなにかかるんかァ」
「太陽系の惑星ってご存知でしょ?」
「そんなことなら知ってらあ。水金地火木土天海冥」
「その通り、でも冥はこの前、お前は小さすぎるって惑星の名簿からはずされてしまいました。一番外側を回っている海王星の軌道の直径がほぼ1000分の1光年になるんです」
「一番外側の惑星でも1000分の一光年??それっぽっち?」
「このCD、裏返すと円が描いてあるでしょ。これが太陽系の惑星の軌道。中心は太陽で一番外側が海王星の軌道」 「ヘエ!!」
「つまり私はポケットに太陽系をいれて歩いているというわけ」
「ホウ、かっこいい。太陽系をポケットに入れている兄さんかい」
「いや後期高齢者」 「ハッハッハァ」
「CDは直径が12cmですよね、それが1000分の一光年にあたる。つまりこのスケールでいけば120mが一光年なんです」 「なるほど」
「太陽に一番近い恒星はケンタウルス座のα星リギルで距離は4.3光年ですから、このCDスケールで520m。科学博物館の玄関の前からだいたい西郷さんの銅像のあたりまでになりましょうか」
「その間に星がないのかい?」
「小さい星屑は宇宙に沢山飛んでいますが、自分で光を放っている恒星はそこまでなんにも。そしてシリウス」
「一番明るい星。おおいぬ座にあるやつだろ」
「そうです。これが二番目に近い星で太陽から8.7光年。これは広小路の松坂屋あたりになります」
「アア、少し読めた。その伝で行くと230万光年の長さは………そんなの計算できねえよ」「だいたい28万Km」
「太陽系がこんなに小さくなってもアンドロメダって随分遠いようだな」
「そうですねエ。お月様が38万キロですからその7割ほどもある」
「分かったよ、もういい。べらぼうに遠いいんだ。さっきのCDオレにくれないか?この話しをダチに説明してやるんだ」
「いいです。帰ってこのCDのなかの地球がいかに小さいかを想像してみてください。太陽の直径が0.02mm、地球はその100分の一、人間は原子ひとつよりももっと小さい……」「そ、そんな小さいところで戦争なんかやってんのかい」
ガリレオ・ガリレイは1632年に著した地動説を含みとする“天文対話”によって宗教裁判にかけられ、異端誓絶を強要されます。1992年にローマ法王パウロ二世が裁判の再審理を命じ、ガリレオに罪は無いとの判決がでました。こうしてガリレオ・ガリレイは実に350年の罪の身が晴れたのでした。
2009年11月1日 記>級会消息