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  • ジャイアントケルプ/斎藤嘉博@クラス1955

    科学博物館、地球館の1階を入って直ぐ右手、やや薄暗いそしてひんやりとするこの部屋は海中をイメージしたもので、頭上にはクロマグロ、カツオ、マアジ、スルメイカなどが泳いで、いや吊られています。

    そして壁面に50種に近い海藻の標本展示。コンブ、ワカメなどおなじみの褐藻植物からアマノリ、テングサなどの紅藻植物、そしてアオノリなど暖かい海で育つ緑藻植物。水中というほとんど無重力の世界に生きるこうした植物は陸生植物と異なって枝も幹も必要としません。水温の変化が温和ですからそこには季節感はなく花も種もないのです。地上の植物が緑一色であるのに比べて、海中では陽の届き方で上述のように黄、赤、緑とさまざまな色素の植物が営みをするようになっているのを知ると自然の巧さがあらためて感じられます。
    そのすぐ隣、軽い曲面の壁に囲まれた一隅に大きな藻が下から上に伸びているのを見ることができますます。茶褐色で枯葉のようですが、これはジャイアントケルプと呼ばれているワカメの一種。世界で最大の海洋植物で、気胞の浮力に支えられて夏場には一日に30cmほども成長し、数十米の海底から海面へと伸びていきます。この葉の間にラッコがいるのに気づく人は少ないようです。ケルプの林は魚たちにとって絶好のレストラン。藻の胞子やプランクトンを食べに、そしてかくれんぼをしようと小魚がやってきます。この小魚を狙ってやや大振りの魚が、またそれを狙ってもうすこし大型の魚が。この食物連鎖の頂点にあるのがイタチ科のラッコです。
    ジャイアントケルプというとモントレーの水族館が想い出されます。サンフランシスコの沖合いから南にほぼ300Kmの海域、カリフォルニア寒流が流れる太平洋沿岸は Monterey Bay National Sanctuaryと呼ばれる水生動物の楽園になっています。そしてその海域の丁度中ごろ、サンノゼから60マイルほど南に下がったところあるのがモントレーの街。ここの水族館には高さ16 feet、厚さ7inchのアクリルガラスを通して見ることの出来る大きなプールがあります。海洋にそのままつながるこのプールの中にジャイアントケルプのすばらしい海中林を見ることが出来るのです。上から太陽の光が降り注ぐこの水槽のケルプは枯葉の色ではなくいかにも新鮮な緑黄色。沢山の魚がこの林のなかを回遊していて、ここにもラッコの姿を見ることができます。水族館にはラッコの病院も併設されていて、病になったり怪我をしたりしたラッコは入院治療を受け、回復すると自然生活へのリハビリを経て再び元の海にもどされます。こうした実物をみると先に述べた科博での展示の意味がよく分かってくるのですが、そこが水族館や動物園と博物館との違いでしょう。
    このモントレーにはもうひとつ記しておきたい場所があります。モントレー半島の赤松林の中を走る17マイルドライブを抜けて目の前に海が開けると、そこにゴルフファンあこがれの的、一度はプレーをしてみたいというペブルビーチゴルフクラブがあります。コースの最終18番ホールは名高い海越えのロングホール。これを一発で超えればバーディーも見えてきます。沢山の人たちがスタートホールで記念写真を撮っているのをみると地元の人たちにとってもわくわくする存在なのでしょう。機会があれば是非モントレーを訪れてカリフォルニアの自然と歴史に触れていただきたいと思います。

    1件のコメント »
    1. 暗くて写真が撮れなかったと斎藤さんから連絡があったのでインターネットで検索した所、下記の記事が目につきましたので紹介します。
      斎藤さんの記事の後半、モントレーの水族館の光景を彷彿とさせる写真が出ています。
      http://www.fukumoto-izumi.com/fairy-blue.com/2shop/umauma/gkelp.html

      コメント by 大曲 恒雄 — 2009年9月30日 @ 22:25

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