宇宙と太陽の物語り/大曲恒雄@クラス1955
記>級会消息 (2009年度, class1955, 消息)
今年は「世界天文年」である。イタリアの天文学者ガリレオが手作りの望遠鏡(口径4cm)を夜空に向けて天体観測を始めたのが1609年であり、
それから400年目に当たる今年が「世界天文年」と定められ、様々な行事が世界中で計画されている。
ガリレオはまず月の表面がデコボコであることを発見した。それまで月は水晶でできていて完全な球体と考えられていたらしい。この後望遠鏡が飛躍的に発達し、平行して観測技術、特に遠い星までの距離を測定する技術が進歩して数々の天文学上の発見がなされ、人類の宇宙感がどんどん塗り替えられて行く。
(参考資料1:「宇宙論」Newton 2008年7月号)
最初はアンドロメダ星雲が我々の属している天の川銀河の外にあるという発見で、それまでの“天の川銀河が宇宙の全体”とする宇宙感を葬り、天の川銀河は宇宙の中にある無数の銀河の一つに過ぎないことになってしまった。因みに、アンドロメダ星雲までの距離について昔80万光年と聞いた記憶があるが現在は230万光年が定説になっている。
1929年ハッブルが「宇宙は膨張している」という事実を発見する。しかも、遠くの銀河ほど速く遠ざかっていることが明らかとなった。当初は観測結果が少なく誤差が大きかったが、その後データが蓄積されるにつれてハッブルの法則の正しさが確かめられていく。
ハッブルの法則で時間軸を逆に進めれば、過去のある時期に宇宙は非常に小さい領域に集まっていたことになる。これがいわゆるビッグバンと呼ばれる宇宙の始まりで、137億年前のこととされている。この時の宇宙は極めて高温、高密度、原子もバラバラの状態だったと考えられている。この時に放出された電磁波がはるばる137億年の旅をして地球に届き、宇宙背景放射として現在も観測されている(*)。これがビッグバン宇宙論を補強する有力な証拠となっている。
(*)最初に観測され、確認されたのは1965年
現代宇宙論の直面している大きな難問がダークマター(暗黒物質)とダークエネルギー(暗黒エネルギー)であると言えよう。存在していることは確かで、“状況証拠”はいろいろあるがその実像になかなか迫れないというのが現状のようである。例えば、最近の衛星による観測から宇宙の成分の約5%が普通の物質、23%がダークマター、72%がダークエネルギーであることが分かったとのこと。しかし、ダークマターとダークエネルギーは正体不明であるから我々は宇宙の成分の95%をまだ知らないことになる。
宇宙の未来については(当然のことながら)いろいろな説がある。
(参考資料2:「宇宙の超未来」 Newton 2008年
8月号)
宇宙の膨張が無限に続き、やがて星々も燃え尽きて全く“無”の世界になるとする説、膨張がある時点から減速してやがて収縮に向かうとする説、等々。その中で小生が気に入っている(?)のは「サイクリック宇宙論」で、宇宙はこれまで終焉と再生を繰り返してきて現在の宇宙は50回目あたりに相当するというものである。
所で、太陽の“年齢”が23才であるということを皆さんはご存じだろうか。
これは日江井博士が発表されている(参考資料3)ことで、銀河系は真ん中が膨らんだ円盤状の形をしており半径5万光年、太陽は中心から3万光年の所に位置していて銀河系を回るのに2億年かかる。太陽が誕生してから46億年になるが、その間に23周回ったことになる。我々の年齢は地球が太陽の周りを回る回数で数える。同じように太陽の年齢を表現すると23才であるというわけ。日江井博士によると太陽は23才の青年らしく活発に躍動しているそうである。
(参考資料3:日江井榮二郎「太陽 その慈愛と無限の可能性」(学士会会報2008-Ⅲ)
しかし、太陽の“熟年”以降の見通しは芳しくない。約63億年後(太陽が54-55才の頃)に赤色巨星、最終的には白色矮星になると予測されている。赤色巨星になった太陽は地球軌道付近まで膨張すると考えられているが、その際地球が太陽に呑み込まれるかどうかは分かっていないとのこと。 (参考資料2)
いずれにしても途方もない時間スケールの話であるが、時には現実を離れて無限の広がりを持つ時空の世界に思いを馳せてみるのも一興ではなかろうか?
2009年6月1日 記>級会消息
最近は、科学雑誌など、とんと読まなくなったので、この記事はとても面白く、勉強になりました。有難う御座います。
僕も、小学生の頃、いっぱしの天文少年で、有楽町にあった毎日天文館(?)に、毎月通った思い出があります。そこには、プラネタリウムがあって、星座を覚えるのが楽しみでした。
中学生になって東北の田舎に疎開したときに終戦を迎えましたが、天文熱は衰えず、敗戦後の酷い経済事情のさなかに、野尻抱影の星座の本が出たときは、直ぐに買って読みました。浅草紙を少し良くしたような「ザラ紙」に印刷された活字がかすれていて、とても読みにくかったことだけが印象的でした。それにしても、抱影(=影を抱く)とは、何と気取ったロマンチックなペンネームかと思いました。
そのあと、「フラムスチード天球図譜」とかいう本が出て、これは、フラムスチードの天球図の一部を複製して解説をつけた本だったように思いますが、これを買うのに苦労しました。値段が高かったからです。
その後、天文学とは縁が遠くなりましたが、戦後の酷い出版事情の中で出されたみすぼらしい「ザラ紙」の本の印象だけが強烈に記憶に残っています。
コメント by 武田充司 — 2009年6月1日 @ 23:34
ガリレオ望遠鏡から400年、科学博物館にその望遠鏡のレプリカが展示されています。彼は40本ほどの望遠鏡を作ったと伝えられ、実物はフィレンツェにあります。来月この件を書こうかと思っていたのですが大曲さんに詳細によい記事を書いていただいたのでそれはまたの機会にしましょう。なおアポロ11号が月に着陸して丁度40年になります。
コメント by サイトウ — 2009年6月2日 @ 20:55
大曲さんの興味溢れる解説に添え物をご紹介します。
最近のイタリアの新聞サイトに「宇宙で撮影された最も美しい写真10選」が掲載されています。此処に入るには先ず、
http://www.repubblica.it/ のホームページを開き、その中に表示される画像集から、
LE IMMAGINI, spazio,ultima frontiera の写真をClickすると出て来ます。掲載期限は不明なのでお早めにご覧下さい。
コメント by 小林 凱 — 2009年6月6日 @ 22:01
先に投稿したコメントです。残念ですが画像のサイトは06/07夜に入れ替わりました。
ハッブル望遠鏡が撮影した爆発する星雲、宇宙から見た日食、月面を行く飛行士と探査車、太陽、アンドロメダ星雲など大曲さんの記事に関係深い写真がありました。
お知らせするのが遅かった事お詫びします。
コメント by 小林 凱 — 2009年6月7日 @ 21:25