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  • 徒然なるままに・・・(地球儀)/鷹野泰@クラス1955

     過日我が家の戸棚を整理していた時、地球儀を見付けた。


    直径20センチ程の小さな物で、仕事上初めて米国出張を命じられた折に購入した物である。よって、約半世紀程前の代物。以前はアメリカ東部の都市やヨーロッパに行く時、航空機は給油のためアラスカのアンカレッジ又はその近辺に立ち寄ったものだ。通常の世界地図を見ただけでは感覚的に理解し難いが、立体地図である地球儀によると、アラスカとの位置関係が容易に頭に入り、初めて納得できた次第である。最近はこのような地球儀は余り使われていないようだ。“Google Earth”の如き、途轍もない道具が身近で使えるようになったからだろう。
     しかし、この地球儀を前にしていると、日頃無視していた事々が改めて実感を伴って迫って来る。恥を忍んで敢えて述べてみよう。
     最近、米国とソビエットの宇宙ロケットが宇宙で衝突した。
    高度は約800Kmとのこと。我が地球儀では800Kmhは約1cmである。地球の遥か彼方の宇宙で起きた事件のように報道されるが、地球儀を前にすると、宇宙と言うよりも地球上の事件と考えた方が適切のようだ。更に最近話題の宇宙ステーションの飛翔は高度約400Kmと言う、此の半分位の低さである。地球の引力に起因する重力が宇宙船内では当然消滅すると言う事も誤解である事が容易に理解される。また、現在の航空機はこの1%程度の高度で航行している。正に表面すれすれである。よくも地球に衝突しないものだ。人間が呼吸できる空気層は更にこの数分の1である。地球表面のほんの一皮の所で現在の我々人類は生存し生活しているのである。
     
     一方、地球の地下資源を開発し利用しているが、最近の深海石油探索では10000フィートの深さまでを対象としている。此れもまた、地球儀で見ると、正に一皮である。このように見ると、我々の行動そのものは全く地球の皮相に限られているのである。また、地球上には約70億人の人間が生活している。その分布密度は地域により異なるが、例えば東京都は1キロ四方当たり、約6000人が生活していると言う。我が地球儀上では約10ミクロン四方当りの人口である。顕微鏡を覗くとウジャウジャと人間が動いているのが見える筈である。この微細な一粒一粒の人間はその体躯の一部に頭脳なる器官を有し、その微細なる器官を駆使し、この広大な宇宙を支配している物質の法則・原理を解析できたと思っているのである。・・・・と下らぬ思考を楽しんでいる己自身もその中の一粒として含まれている筈である。地球儀を前にし、このように考えて来て、己の頭の正常度にもだんだん自信が無くなって来た。
     今日は陽気も良く眠気を催してきた。そろそろ筆を措いた方が良さそうである。         
        エントロピー増える気配や目かり時

    2 Comments »
    1. 地球儀を眺めながらの鷹野さんの宇宙的思考には感服しました。地球表面の限られた空間で奇跡的に恵まれた環境で生き長らえているはかない人間の姿が、実感できます。先日テレビを見ていたら、人間が出現してから現在までを1年間とすると、人間が飢餓から開放されて現在は12月31日の午後6時頃だと知り、これではメタボが容易に改善しない筈だと妙に納得しました。
      それにしても、地球儀は正確に地球の実体を教えてくれます。小学生の頃、地図を眺めるとロシアが馬鹿に大きく、北極と南極は更に大きくて、その先がどうなっているのか全く解りませんでした。3次元を2次元で現す矛盾は、現在でも建築物の油絵を描く時に苦労しています。また、日本で製作された世界地図は常に日本が中心になっていますが、外国では端のほうに日本があります。ヨーロッパの世界地図に初めて日本が記述されたという地図をイタリアで見ましたが、EZOと書かれていました。ジパングが知られる以前の地図でしょう。その地図のアメリカ大陸にはインデアンが弓で鳥を射る絵が描かれ、中国では礼服でひれ伏している中国人の絵が描かれていました。視点を変えると感じ方が大いに異なるものですね。

      コメント by 大橋康隆 — 2009年3月9日 @ 20:30

    2.  個体の生命活動とは不可逆的なエントロピー増大過程であり、その行き着く先は極大値即ち究極の無秩序・無機質への還元という事になるのでしょう。
       物憂い、眠気を誘う春の午後にその気配を感じるのは、西行法師の心境か、梶井基次郎の感性か。いずれにしても「すべて世は事も無し」からは程遠い、深遠な日本的心象風景の様な気がします。

      コメント by 寺山 進 — 2009年3月12日 @ 10:23

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