• 最近の記事

  • Multi-Language

  • CO2善玉論/中林恭之@クラス1955

    前書き
    パソコン嫌い、メール嫌い、近頃の便利風なもの何でも嫌いの 

    私が畏友・大曲君の熱意と、パソコン狂いの娘にドヤされて“クラス1955ブログ”へ参加することにしました。 生来ヘソ曲がりで、主流より傍流に興味のある私ですが、半生をエネルギー業界に過ごしたこともあって、エネルギー、環境、その他に考えることは多々あり、友人諸君の考えも知りたいと思っています。
      第一回分として、電発を退職直後に火力技術系の後輩のために私費出版した拙著「コアラの唄」の中の1章、“CO2善玉論”を送ります。正にヘソ曲がり、少数派の意見である。また10年以上前(平成7年2月7日記)に書いたものであるから、その後に追加・訂正すべき点も多々あると思うのだが、今回はとりあえずこれを送稿します。
     友人諸君の反応、特に電力系の太田、武田君あたりの意見が知りたいものです。 寺山君の健康論は面白かった。健康論を含めて今後は、エネルギー、環境、原子力その他について皆の意見が知りたいと思っています。最初の投稿は以上、取りあえず。
                              平成21年1月25日

    本文 「コアラの唄」より3章9節・CO2善玉論
     地球環境が問題になっている。温暖化で大変だと言う。その元凶は炭酸ガス(CO2)であると言う。こういう論調でワアワア言っているのは世界の中で日本の新聞だけの珍現象と言える。
     少し考えてみるとわかることだが、CO2は、地球上の生物、生命の源なのである。植物は光合成により生育している。その植物をベースにして、多様な生物が地球上で生を成している。もしCO2が大気中から消滅すれば、植物は光合成が出来なくなり生育することは出来ない。植物をベースとする他の生物も全て死滅する。誠にCO2こそは生命の源なのである。
     ところで地球の歴史の中で、大気中のCO2はどの様な変遷を経てきているのであろうか。原始地球の大気は100%CO2であったとされている。生命が誕生し、植物の光合成により、少しずつ酸素が出来てきた。現在の大気中にある約21%の酸素は全て植物が何億光年にもわたって放出し続けてきたものの集積である。
    20090125・CO2善玉論・添付図④.bmp
     でCO2はその後どうなったか。添付図④に数億年前からのCO2の変遷を示す。この図は科学技術庁資源調査所の報告書よりとったものである。それにしても学者先生は何を根拠にこのような推定をしたのだろう。数万年前位は、氷河に閉じ込められた空気から測定出来るだろうが、数億年となるとどのような方法によったのだろうか。学者とは偉いものだとつくづく思う。
     
     ところで、この図を見ると大きく変動しながらも、恐竜の時代、石炭の時代に数千ppmのレベルであったCO2は減少の一途を辿り、十八世紀産業革  命の直前には地球史上最低の200ppmまで落ち込み、その後化石燃料の燃焼により少し回復して、現在、300ppmを少し上回ったレベルになっている。
     CO2が生命の源であるという観点からみると慄然たる思いがする。地球はCO2の減少により死にかかっているのである。これだけ大きいCO2の減少はどうして起こったのか。以下は私の勝手な推論である。恐竜は1~2億年の間、繁栄を極めた。数百万年の歴史しかない人類などは足元に及ばない。その恐竜を支えたのは現在の石炭の基となった大植物群であったろう。数千ppmのCO2の下で育った植物は現在では想像しがたい。逆に言えば現在の300ppmのCO2のもとでの植物は、数億年後には石炭としては残らない程、微量なものらしい。それほどに恐竜を支えた植物は凄いものだった。
     
     しかし、化石燃料に取り込まれたCO2量は微小である。これは化石燃料を全部燃やしたとしても大気中のCO2は700ppm程度で止まると言う試算があることからも推定出来る。では地球上のCO2を減少させてきた主因は何か。珊瑚虫と貝類であると考えざるをえない。珊瑚も貝も炭酸カルシュウム(CaCO3)の形でCO2を取り込んでおり、一旦CaCO3になると自然の条件ではCO2を放出することはない。さんご礁は島を造り、陸地を形成するほど大量なものである。エベレストの頂上に貝がらがあると言う。地球上に珊瑚と貝類の活動がある限りCO2は取り込まれて行く訳で、こう考えると地球は本質的にCO2をCaCO3に固定化する特性を持ち、CO2は自然のままに放置すると減少の一途を辿る運命にある。勿論、ストレートに零になる前に何らかの生態系の変化が起こって、どこかのレベルでバランスする事になるとは思うが。
     
     要するにCO2の本質は、こう言うものなのである。私は地球温暖化が問題だと言うことを否定しようとは思わない。ただ、日本の新聞が、一様にただただ温暖化の元凶がCO2だと単純に決め込む印象を読者に与えていることに疑問を感ずるのである。CO2問題の本質、背景は以上に述べたようなものであると言うことを皆に分かってもらった上でCO2増大、温暖化問題を考えなければいけないと思う。
     太平洋戦争中に新聞は「鬼畜米英」と言う言葉を国民に吹き込んだ。分別のある大人達は、そうでもなかったろうが、子供であった私は本当にそう思った。しかし、戦争が終わって見たアメリカ、イギリス人たちは、鬼でも畜生でもなく普通の人間だった。新聞はこの苦い教訓を忘れているように見える。また単純に「鬼畜CO2論」を展開しているように私には思える。
     ビニールハウスには、収量を上げるためにCO2を吹き込んでいるのは常識である。産業革命前と現在とでは、肥料や農業技術の進歩を全部差し引いても、単位面積当たりの穀物生産量は増えている。それはCO2増大の為だと農学者は言っている。
     
     地球の温暖化が化石燃料の燃焼によるものかどうかは依然不明である。温暖化は省エネルギーにつながる訳で、この点からは問題がない。唯一問題なのは海面の上昇であろうが、これも現在までの所、海面の変動よりも陸地の変動の方が大きいそうで確実な話は一つもない。
     地球環境問題とは誠に複雑なもので、単一の視点から見るのではなく、全方位からよくよく理解する必要があると思って、敢えてこのような一文を書いた。              〔平成七年二月七日 記〕
    編集長の付け足し
     中林君に是非投稿してもらいたいと考え、今度の横浜三〇会で彼を口説くつもりだったが遅くなりそうなので手紙を出した所、意外にスンナリ(?)承諾してこの原稿を寄せてくれた。手紙には「貴兄のこと故ネタは山ほどあるはず。1件や2件と言わず長期契約でお願いしたい」と書いたが、その条件も了承してくれたようなので今後にも期待したい。
     なお、お嬢さんからのメールに下記メッセージが書き添えられていたので付記する。「ちなみに、私はパソコンに狂ってもいなければ父をドヤしてもおりませんが(^-^;) 」

    4 Comments »
    1.  CO2善玉論、興味深く読みました。こういう考え方もあるのだと理解しました。それにしても、我がブログへの初参加大歓迎です。これからも投稿よろしくお願いします。また、他のまだ不参加中の級友からの投稿も首を長くして待っています。よろしく。

      コメント by 髙橋 郁雄 — 2009年2月23日 @ 07:33

    2.  大曲だから引っ張り出せたヘソ曲りの論客の登場は大歓迎です。
       「コアラの唄」以前に寄贈を受けて一通り読んだ筈ですが、こんなに面白い論文があったのには気付きませんでした。未だ「地球温暖化」が今ほど騒がれていなかったにしても、汗顔の至り。

      コメント by 寺山 進 — 2009年2月24日 @ 15:29

    3.  ここに書かれていることは、その通りだろうと思います。論趣は、ごく自然に理解でき、納得です。
       炭酸ガスの増加が、温暖化に寄与していることは、疑いないと僕は思っていますが、しかし、それが、最近の気候変動の主因であるかどうか、僕も疑っている一人です。最近の数人の専門家の論文でも、もっと大きな原因によって、地球の気候変動が支配されているという指摘があります。
       しかし、何でも産業にして、儲けにつなげなければならない資本主義の世の中ですから、炭酸ガス削減は、もはや産業(儲け仕事)ではないかと思います。それでも、化石燃料の浪費を止めさせるのは良いことですから、それはそれで、結構なことで、大いに努力すべきです。
       中林君の言うとおり、炭酸ガスが善玉なのか、悪玉なのかは知りませんが、大気中に炭酸ガスが多かった昔の地球は若々しく、活力に満ちていたのですが、炭酸ガスが減ったため地球は老化して、静かになってきたという話を、どこかで聞きました。
       恐竜が跋扈し、数十メートルもの異様な植物が繁茂し、毎日、凄まじい雷が鳴り響いて、空中窒素を固定して天から降らせていた、若々しい地球に戻す「地球の若返り」のために、神様が何かやり始めたのかも?
       その若返りプロセスを、ちょっとだけ加速するために、神様は、この傍若無人の人類を地上に送り込んで、他の生物どもでは出来ない、地中の炭素を掘り出して、炭酸ガスにして大気中にばら撒くという仕事をさせているのかも?
       しかし、地球が若返ってしまうと、我ら人類は生きていられないので、早晩、絶滅することになる。役目を果たした人類は、御用済みで、さっさと消えて欲しいと、人間以外の地球上の生物は、みな、願っていることでしょうから。
       人類にとって、それは大悲劇ですけれど、他の地球上の生物にとっては、朗報で、みな、乾杯して喜ぶことでしょう。
       考えてみると、地球上最大の害虫は、人類で、この途方もなく異常増殖した人類には、地球上の他の生物は、みな、辟易して、大迷惑のはずです。
       以上は、中林君の話の続き(悪夢の未来偏)を書いてみました。如何でしょうか。
        

      コメント by 武田充司 — 2009年2月24日 @ 17:32

    4. 中林論文に引用されたグラフの右端「0(百万年)」のあたりを拡大したことになると思うけど、最近1万年のCO2濃度に関する資料が目についたので紹介します。併せて最近の年平均気温変化の記録も。
      いずれもIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の資料です。
      (1)最近1万年の二酸化炭素濃度
      (2)地球の平均気温の変化(地球全体/過去140年)
      (3)日本における年平均気温の変化(1898年~2007年)
      ただ、このコメント欄には入らないので「CO2善玉論の関連資料」としてブログに掲載します。議論の参考にして下さい。

      コメント by 大曲 恒雄 — 2009年2月25日 @ 10:20

    Leave a comment

    コメント投稿後は、管理者の承認まで少しお待ち下さい。また、コメント内容によっては掲載を行わない場合もあります。