映画「エジソンズ・ゲーム」鑑賞のお薦め/池田佳和、松田道男
現代の人々が日常の生活や多様な産業を維持し発展させるために、いかに「電気の力」を利用しているか、その本格的な事業化がいつどこで実際に開始されたか・・・わずか130年くらい前(明治中期)に米国ではこんな激しいビジネス競争=「電流戦争」が行われていていました。主人公は発明王トーマス・エジソンと技術者ジョージ・ウェスティングハウス。
この大事件を映像化した本映画作品は、東大電気系の教職員、学生諸君、そして卒業生諸君もご覧になることをお薦めしたいと思い、小文を投稿いたします。(写真は「エジソンズ・ゲーム」劇場用プログラム)
この映画の本邦公開は電気学会が後援していますが、6月19日から公開が始まりました。原題は「The Current War」、配給はKADOKAWAです。当初は本年3月に公開予定でしたが新型コロナウイルスの感染防止のため延期されていました。
本会員である松田道男さん(昭和44年卒)がまず初日に鑑賞され、同期友人にその感想を送ってくれました。それを(許可をえて)下記に転記します。小生(池田佳和)はその数日後に地元京都で見ることができたので、感想を文末に追記します。
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月日の経つのも早いもので、政府・都庁ともに(6月)19日の今日、広範囲の自粛緩和策を打ち出しましたが、時を同じくして件の映画「エジソンズ・ゲーム」は本日公開となり、老骨にムチ打ち、コロナの恐怖に怯えつつ日比谷東宝シネマズに行ってまいりました。座席は間隔を十分とってあり、私の周囲は安心感のあるものでありました。
電気学会の後援作品であるとのCreditが出てから、1時間半十分楽しみました。
・電力関係者はぜひご覧になるときっと何かを得られることと存じます。
・パール街発電所運開前後からシカゴ万博、ナイアガラ発電所までの20年弱はとても重要かつ、電力技術史としても電力産業史としてもこんな面白い時代はほかにないと改めて実感いたしました。
・映画作品としての評価は観客と専門家にお任せしますが、時代考証の綿密さ、画面の美しさは素晴らしいものでした。
・インサルは、脇役でほとんど出番はなかったのですが、シカゴ以前の彼の描写としては、役者、そしてその演技共に素晴らしかったと思います。(注:インサルは別件で仲間うちの議論をしていたのでコメントが入った)
・この映画の主役はエジソン、ウェスティングハウス、テスラ、JPモルガンの4人です。インサルはあくまで脇役、そのようなご認識でご覧になればと存じます。
これ以上は、これからご覧になる方のために控えさせていただきます。
(松田道男)
**(以下、池田の追記)**
1)映画題名は(電気電子エンジニアとしては)原題のほうが内容を明確に表していて妥当だ。にもかかわらず日本での公開に際して「エジソン」の名前で観客を引き付けたいとKADOKAWAが考えたのだろう。そのあとの「ゲーム」はなにを意図したか意味不明。
2)もし交流システムの実用化と普及拡大が遅れていたら、電気は照明(エジソン白熱電球)が主体となり、交流モーター動力の産業利用と変圧器による送配電ネットワークの実現がかなり遅れた。
3)ただし交流システムの利点は映画では極めて簡単に触れているだけなので、その画期的重要性、つまり重大なイノベーションであったことが観客に伝わりにくい。コストが安くなると劇中でウェスティングハウスがさらっと紙で示しただけ。
4)シカゴ万博(1893年)での交流電気の全面的採用と電気館での白熱電球のまばゆい照明、交流モーター、エジソンの蓄音機や映写機キネトスコープなどの応用展示は多数の観客を驚かせた。いよいよ電気時代の20世紀が始まる号砲となった。