「変化の時代」のリーダーシップを/理事長 篠塚勝正
区>運営, 記>寄稿, 記>挨拶 (class1963, 理事長)
私は、昨年10月の東京大学電気系同窓会総会におきまして理事長への就任を仰せつかりました1963年電気電子工学科を卒業した篠塚勝正です。卒論は、藤崎先生の研究室で指導を受けました。本同窓会理事長は、大学関係者と企業関係者が2年ごとに交互に就任することになっており、昨年までの桂井誠先生の後任として、皆様のご推薦をいただき引き受けさせて頂きました。私自身としましては、やや高齢ですので躊躇もありましたが、受けましたからには、精一杯努力したいと思います。皆さまのご指導とご協力のほどよろしくお願い申し上げます。今までの理事長であられた茅陽一先生、佐々木元様、多田邦雄先生、青木利晴様、桂井誠先生方は、会報等の情報発信や名簿のICT化を行い、同窓会ホームページ、クラスブログ、地方本部ブログ、Web名簿、会員一斉メールなどを整備され、同窓会の発展のために貢献されて参りました。また、同窓会に新たに登録される出身母体も、大幅に拡張されました。現在の同窓会の会員数は7,000人を越え、毎年約200人の会員が増えております。
このような、素晴らしい東京大学電気系同窓会を担当させて頂くにあたり、簡単に考え方を述べさせていただきます。皆様も色々なご経験があると思いますが、同窓会は、同期であろうが、先輩と後輩であろうが、とてもオープンで自由な場です。周囲を気にすることなく、素直な自分に帰ることができます。電気系の卒業生は、日本においても、世界においても、色々な場面で活躍しております。従いまして、明日の日本を大いに語れる場でもあると思います。グローバルな活動が当たり前の時代に、同窓生同志が、科学と工学と社会を結びつけ、分野横断でリーダーシップを発揮すること。若者を育成すること。IOTの時代に人的ネットワークを有効活用することなどの活動を、さらに行い易くなるよう、お役に立てればと考えております。
いま世界は過去にないスピードで大きく変化しております。こうした時代をリードしているのは、政治でも経済でもなく「科学技術」そのものであります。最近の話題ではアインシュタインが100年前に予言した重力波の存在が、米国を中心とした国際研究チーム「LIGO(ライゴ)」によって、2月12日、初めて直接観測に成功しました。まさに、「科学」による予測を「技術」・「工学」を駆使して証明した代表的な例です。
「技術」・「工学」は、利用者のニーズに適合した商品・サービスを開発致します。そして、より便利な、効率的な、しかも人間性を損なわないサービスが「社会」に提供されます。科学技術と人間の生活を結びつけ、21世紀の大きな変化の時代リードしていくのが、電気系同窓生の大切な役割であります。
東京大学アクションプランに次の内容が示されております。「本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気を備えた人材の育成」です。我々は、科学をベースとして、利用者のニーズを知り、パートナーシップを大切にし、その先頭に立つことが大切です。電気系同窓生が社会で活躍する場面は、大手電気電子製造業と大手電力・通信関連企業をはじめとし、IT関連企業全般、さらには他の業界にも広がっております。このことは、卒業生の活躍の場の多様化を示しております。これからも同窓会メンバーの人的な広がり、繋がりをさらに強くすることにより、分野、業種、業界横断の社会活動がますますやり易くなると思います。社会人になりますとややもすると、思考、視野が自分の所属している集団・組織の範囲内に留まりがちで、その方が日々の生活は楽でありますが、これからも活躍の場を広く外部にも求めていくべきと思います。
文部科学省の「第5期科学技術基本計画」によりますと世界に先駆けた「超スマート社会」の実現(Society5.0)が標榜されています。私はこれからの時代、IOTシステム構築、ビッグデータ解析、AI、ロボット、センサー、サイバーセキュリティ等が重要と考えております。特に、ロボットとAIとの融合、そしてIOTによるソリューションシステムの構築が大切であり、このような分野こそ、われわれ電気系工学の注力すべき分野であると思います。ロボットといいますと機械工学系、メカトロニクス系の感じがし勝ちですが、本来エレクトロニクス、メカトロニクス、センサー、ソフトウエア、人間工学、AI、社会工学、医学、介護等々数々の分野にまたがる総合的な領域です。総合的、横断的分野の活動を成功させる鍵は、リーダーだと思います。分野がまたがりますと、それぞれの分野においては専門家ですが、他の分野に対する経験・知識の少なさに気付き、そこに遠慮が起こります。これでは多分野にまたがる大きなプロジェクトはまとまりません。大胆の意思決定が求められる場面が何度もあります。そのような時こそ、幅広い見識のある電気系工学の卒業生がリーダー役を担うべきです。
あるデータによりますと、上場企業の経営トップの70%は文系出身、30%が理系出身といわれております。私はこの比率を最低でも50%ずつにすべきと考えております。社会の変化は、ひとえに科学技術・イノベーションがその原点にあります。数次の産業革命で代表されるように、時代の大きな転換点は、科学技術をきっかけとして国の仕組み、社会、経済を変革しているのです。これらを為しうるのは、科学技術を知り、時代の要請を知っている人たちです。文系がバックグラウンドの人達が、科学技術の領域に入るのは非常に困難を伴います。しかし、理系のひとたちが、科学技術の素養を持て、政治・経済・企業経営・文化に目を向けることは比較的容易です。即ち、電気系同窓会の皆様には、変化の時代においてこそますます活躍の場があり、色々な分野で経営のトップ層としての活躍が期待されているのです。
私は、常々技術者35歳定年説を唱えています。それはどのような意味合いかと申しますと、人間は35歳までは、精神的にも肉体的にも成長します。しかしながら、35歳を過ぎると成長は鈍化し、やがて停滞するということです。スポーツ選手を例にとりますと、35、40歳で現役の一流プレーヤーは余りいません。もちろん、どの世界にも例外はあり、プロ野球のイチローなどは、例外の最たるものかもしれません。世界的に有名な学術論文もその原型は30歳代前半までに書かれたものが多いのは皆様もご承知の通りです。いずれにしましても、35歳までの若者に思い切り活躍してもらえる環境づくりが大切になります。35歳を過ぎますといわゆるマネージメントはできても、先端的な技術開発の現業をできるはずはありません。今日と明日の最先端の仕事は、35歳までの若者の感性とエネルギーに任せるべきです。学問の世界、民間企業を問わず、ベテランは若者に常にチャンスを与えることが大切です。すなわち、「出る杭を思い切り伸ばす」ことが大切で、決して「出る杭を打つ」ことは避けなければなりません。若者の育成こそが、わが同窓会の大切な役割であるとも思います。
いま世の中では、IOT(Internet of Things)が動き始めました。日本語では「モノのインターネット」と言われています。私は、「モノ」とは、『ひと、形のあるもの、お金、情報』であると思っております。IPアドレスを持つものやセンサー、検知可能なRFIDタグを付けた商品、IPアドレスを持った機器に格納されたコンテンツ等々、色々な形態があります。IOTの世界では、人と人の「やりとり」に限らず、装置と装置、装置と人が「やりとり」をします。これらが、どんどんオープンになり、境界を超えて「やりとり」をします。この「やりとり」を通して、情報の交換、効率の向上、生産性向上、安全性確保が行われますが、これを大きく育てていきたいと思います。日本は、オープン化・共通化に対してやや消極的なところがあります。その結果、過去においてPCが高い技術を持っていたにも関わらず、世界標準にすることはできませんでした。オープン化と共通化を大胆に行い、その上位の領域で個別の付加価値を高めて競争をしてゆく考え方が大切です。それを具体的に実行していくのには相互の信頼関係が大切です。信頼関係の構築はややもすると組織対組織と考えがちですが、私は、組織が違っても人対人であると思います。そのために同窓会の人的チャネルは極めて有効です。私は業界や、各種団体における会合によく出席します。そのような会合の中で、大学の先輩、後輩との出会いがあります。しかしながら、東大の同窓生は、連携に対してやや遠慮がちなところがあります。もっと積極的になって、同窓生としての気安さ、気兼ねのなさを有効に活躍すべきと思います。電気系同窓会が、世界に貢献する国づくりのために、多様な人たちのオープンネットワークとして思い切り活用されることも心がけたいと思います。電気系同窓会の役員の皆様のはじめとし、会員各位の方々のご指導とご協力を頂きながら、同窓会を運営させていただきたいと思います。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
篠塚理事長殿、
79年卒で元経済産業省の稲垣です。
全く同感です。東大電気同窓会のネットワークを積極的に強化していきましょう。また、若手が積極的に活躍できる場を提供することもこの同窓会の使命と考えます。そこで、来る五月祭で現役諸君が全く新しい発想でIoT等の展示をしてくれることを楽しみにしています。我々年寄りが考えもしないような、アッと唸るような展示を期待したいものです。
そこで提案ですが、我々同窓会で寄付を募り、現役学生達の活動を支援したらいかがでしょうか?
私が知らないだけで、もう既に寄付の口座が開かれているのでしたら教えていただきたいと思います。
何れにせよ、篠塚ビジョンを実現するために先頭に立っていただきたいと思います。微力ながらお手伝いさせていただきます。
コメント by 稲垣謙三 — 2016年4月11日 @ 17:47