• 最近の記事

  • Multi-Language

  • 旅行中のコネクティビティ/相田仁

    読者の中には、筆者から「海外出張に出かけていたためお返事が遅くなりました」といったメールを受け取られたことのある方がおいでになるかもしれない。

    一昔前までは、出張といえば、なかなか連絡が付かないのをいいことに、羽を伸ばしまくり、呼び出しが来ても知らん顔したりしたものだが、最近では、メールを読まずにいると重要な情報を見逃すことになるので、筆者も出張には必ずノートパソコンを持って出かけているし、ホテルを選ぶ際にはインターネットが使えるかどうかを確認しているので、出張中メールを全く読み書きできないということはほとんどない。

    では、上記の文言は完全な嘘かというと、そうでもない。

    1つはやはり、常にメールを読み書きできる訳ではない、ということである。例えば、出張中、ホテルではメールの読み書きができても、昼間用務先ではインターネットにアクセスできないことが少なくない。朝ホテルをチェックアウトして、昼間用務をこなし、空港に駆けつけて、帰路の飛行機が12時間以上かかる、というような場合だと、日本時間で24時間以上メールにアクセスできないことが起きてしまう。

    飛行機の上でインターネットにアクセスできるサービスとして、何年か前にConnexion by Boeing(R) *1というサービスが開始され、「電波の日・情報通信月間」記念中央式典で情報通信サービス・システム賞を受賞したりしたが、2年半ほどで中止されてしまった。アンテナが大きくて747か777でないと搭載できなかったため、ビジネスユーザをつかみきれなかったためといわれているようだが、アンテナを小型化して再チャレンジしてもらいたいものである。

    さてもう1つ、結構重要と思われる点は、端末環境の違いである。筆者はふだんデスクトップ型のMacintosh(R) *2を使っているのだが、出張の際には小さくて軽いWindows(R) *3のノートパソコンを持ち歩いている。基本的なメールの読み書きはどちらでもできるのだが、ふだん使い慣れていないパソコンだと、返事すべきメールをスパムを含む他のメールの中から見出すことができず、帰国後にデスクトップパソコンでメールを開け直してようやく気付く、ということがしばしばある。

    というわけで、上記は決して嘘というわけではない。ぜひ事情をご理解いただき、ご容赦いただきたい。

    ところで、携帯電話はどうかといえば、第2世代(PDC方式)の機種を使っていたころは、海外ではその端末を使うことができず、出張の際には、自宅に置いて出かけたり、どうしても連絡手段が必要な場合には、海外で使える機種を空港でレンタルしたりした。

    第3世代の機種になってからは、ふだん使っている端末をそのまま海外で使うことができるようになり、しかも時差を自動的に調整して、現地の時刻と日本の時刻の両方を表示してくれるので、大変便利になった。音声通話の場合には、日本に発信するのか現地に発信するのか、プレフィックスの付け方を多少意識する必要があるが、メールについては、日本にいるのと全く同じ使い勝手で使うことができる。

    3年ほど前の夏休みに家族でロンドンへ出かけた。全くのプライベートな旅行だったのだが、日本を丸一週間空けることになるので、いちおうノートパソコンを持って出かけた。

    ロンドンに着いたすぐ翌日にテロ未遂容疑で犯人グループが逮捕された。現地では、駅に警官が多いことをいぶかる程度で、全く支障なかったのだが、この事件のおかげで、飛行機に乗る際の持ち込み手荷物に対する制限が非常に厳しくなった。100mlを超す液体の持ち込み禁止は現在に至っているが、当初は、楽器やパソコン、子どもの持つぬいぐるみまで持ち込み禁止とされた。筆者らはホテルから航空会社のホームページにアクセスしてこのような持ち込み制限を知り、そのつもりで荷造りして空港に行ったのだが、空港では持ち込み制限を知らずに空港に着いた人が多く、荷造りし直す人でチェックインカウンターが大混乱していた。

    昔は復路出発の72時間前までにリコンファームが必要とされ、その際に宿泊しているホテルを伝えると、復路出発便に変更があるときなど連絡してくれることになっていた。上記の旅行のときも航空券を購入した時点で航空会社にメールアドレスが登録されていたのだが、何の連絡もなかった。あまりにも対象者が多くて連絡しきれなかったのかもしれないし、旅行中にパソコンでメールを見る人はあまりいないだろうと思われたのかもしれない。

    その点(第3世代の)携帯電話のメールであれば、ふだんメールを使っている人であれば、旅行中も全く同じ使い勝手でメールを読み書きすることができるし、最近では同報機能も充実してきていると聞く。ぜひ旅行者への連絡に活用いただきたいものである。

    携帯電話によるコネクティビティの確保といえば、空港内での活用法もありそうだ。

    空港では、なかなか搭乗口に現れない乗客を航空会社の係員が探し回っている様子をよく見かける。最近の病院では、受付の際に患者に無線呼び出しデバイスを渡し、順番が来るまでどこで待っていても良いところが増えている。空港の場合も、呼び出しだけでもかなり役に立つと思うが、いっそのこと、チェックインのときに搭乗券の代わりに携帯電話を渡すことにしてはどうだろうか。携帯電話であれば、乗客を単に呼び出すだけでなく、手荷物検査に手間取っている/出国審査の列に並んでいるといった状況を、電話をかけて聞くことができる。

    実際には、空港内の景色はどこでも似ているので、乗客自身、どこにいるのか把握できないことがあり得る。そのようなときは、携帯電話に搭載されたGPSや無線LAN機能を用いて端末の位置を把握し、乗客を誘導することが可能であろう。実際、筆者らは、NPO法人柏の葉キャンパスシティコンソーシアムの活動の一環として、無線LAN上でVoIP通話を行う際の相手の位置をパソコン画面上で確認し、離れたところから誘導する実証実験に成功している。

    もちろんすべての乗客に新たな携帯電話を渡す必要はない。すでに携帯電話を持っている乗客に対しては、ICカード(おサイフケータイ)に搭乗券情報を登録するなり、搭乗券情報を表すQRコードをメールで送って、搭乗口でそれを表示してもらうので十分である。

    ただし、前述の旅行中の連絡先の場合でも、空港における搭乗券情報の場合でも、個人情報保護やプライバシーの観点から、自分の携帯電話の番号やメールアドレスを航空会社に教えることに抵抗感をもつ乗客もいるのではないかと思う。

    そんなとき、旅行中、あるいは飛行機が出発するまでに限って有効な電話番号やメールアドレスを携帯電話につけることができれば、便利なのではないかと思う。すでに2in1など、1つの端末に2つ(以上)の電話番号をつける機能は実現されている。あとはネットワーク側でいかに早くその番号を使えるようにするかであるが、とりあえず空港内でのみ使えれば良い、ということにすれば、それほど難しくないのではないかと思う。

    以上、旅行中のコネクティビティに関して日頃思っていることをとりとめなく書かせていただいた。読者の方々の参考となれば幸いである。


    *1 Connexion by Boeing(R) :ボーイング・マネージメント・カンパニーの登録商標

    *2 Macintosh(R) :米国Apple Computer,Inc。の米国およびその他の国における商標または登録商標

    *3 Windows(R) :米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標または登録商標


    (本稿は、ドコモ技術ジャーナル2010年1月号より転載)

    3 Comments »
    1. ご旅行中のコミュニケーションに関する興味深いお話、毎日使っていますので大変参考になりました。小生昭和50年同志社大学電気工学科卒、先頃日立造船を定年退職。教えて頂きたいのですが先生の学生当時は電気工学をどの先生のどんな本で勉強されましたか?(特に電磁気学と電気回路について)宜しくお願いいたします。

      Comment by 藤井 勝 — 2012年3月29日 @ 23:22

    2. 先生の教員からのメッセージを読んで同感です。電気工学の本については参考までにお願いします。

      Comment by 藤井 勝 — 2012年3月29日 @ 23:35

    3. 確認するのに手間取り、お返事が大変遅くなり申し訳ありません。当時の講義で使った教科書は

      電磁気学:
      電気学会大学講座「電気磁気学」電気学会、1950初版、1966改訂初版

      電気回路:
      斎藤正男「回路網理論演習」学献社、1970

      でした。電気回路に関しては、当時のノートを見ると

      E.A.Guillemin, “Introductory Circuit Theory”, John Wiley & Sons Inc.
      山田直平訳「回路網基礎学」近代科学社

      が参考書として挙げられていましたが、私自身は見た記憶はありません。

      Comment by 相田 仁 — 2012年4月16日 @ 09:09

    Leave a comment

    コメント投稿後は、管理者の承認まで少しお待ち下さい。また、コメント内容によっては掲載を行わない場合もあります。