新任のご挨拶/池田久利
私は2009年4月1日付で電気工学専攻パワーフロンティ寄附講座の特任教授として着任いたしました。この寄附講座は、電力事業分野の企業から寄付を受けて2008年6月に開始しましたが、私は10カ月遅れで参加することができました。電力のハード技術面を対象に教育研究を進めています。また、電力のシステム技術面を対象として、ユビキタスパワーネットワーク寄附講座が同時に開始し、谷口治人教授が着任しておられます。この二つの寄附講座は、日高邦彦教授をセンター長とする、先端電力エネルギー・環境技術教育研究センター(略称APET)に属しております。APETには、山地憲治教授が兼任され、また、横山明彦教授他の協力委員を含めて、10名を超える委員で構成されています。中島達人准教授がコーディネータとして様々な活動を推進されており、やや手前みそではありますが、今後ますます重要となっていく電力分野の教育研究に貢献することが期待されます。
パワーフロンティア寄附講座の教育研究は日高邦彦教授、熊田亜紀子准教授と一体で進めています。高度な基礎工学は両先生にお任せし、私は企業での30年を超える経験を生かして、産業界に密着した活動を進めたいと思っています。よちよち歩きの段階ですが、日高・熊田研究室の基本技術である光学的計測技術を適用して、機器現象の解明を進めようとしています。また、電力分野に興味を持たれている学内外の先生方と、共同で研究を進めたいと思っています。教育研究の大学間相互交流を通じて、電力業界が進めているパワーアカデミーを核とした電力分野の教育研究の活性化に貢献していきたいと思います。
私は1972年に電気工学科を卒業しましたが、卒業研究は当時の関口・桂井研究室で行いました。その後、大学院では生産技術研究所の河村達夫先生にご指導を賜り、高電圧関係の研究に従事しました。1974年より㈱東芝に入社し、一貫して変電所の開閉装置、特に電力用SF6ガス遮断器の研究開発に従事してきました。2007年に九州工業大学の寄附講座に客員教授として出向しましたが、その前の約10年間以上は企画管理部門でしたので、実務の勘を取り戻すのに苦戦しております。勘が戻らないと、企業の要求を大学へ通訳するのが得意分野になるかもしれません。
最後に社会貢献というか、学会活動について紹介させていただきます。日高委員長のもとで、電気学会のUHV国際標準化委員会は、日本のUHV(1100kV)送電技術を国際標準とする活動に取り組んできました。私は電気の国際規格であるIEC(International Electro-technical Commission)で国際議長としてこの活動を推進してきました。2009年に1100kVを国際標準とすることに成功しましたが、終盤の2008年末には急性肝炎を患いました。元来は酒が大好きでしたので、単身赴任先の九州で焼酎を飲みすぎたことか、あるいは、国際規格化活動で海外を飛び回りすぎたことのどちらが急性肝炎の原因かは周囲が決めることと思っています。幸い健康は回復しましたが、現在も飲酒は最初の一杯と決めておりますので、うまくお付き合いが出来ない場合がありますが、ご容赦願います。皆様のご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。