笑ったもの勝ち/南正輝
大学に勤める面白さの一つは多様な個性に出会えることである。元々大学教員には変わった人が多いので教員についてはさほど驚かない(もちろん南自身もその一人)。面白いのは学生さんの方で、10年前に比べるとはるかに多様性が増している感じがする。一昔前は「学生はこうあるべき」というような暗黙的な共通意識によって自ら個性を抑える傾向があったような気がする(気がするだけかも知れない)のだが、最近はそれぞれの個性が前面に出てきていて相当に面白い。
個性が見えてくるようになった一方で、その個性が故に悩む学生さんが増えているのも事実である。5年も研究室運営していると、年に一人や二人はそういったことで悩む学生さんがいる。よくよく話を聞くと感性豊かで斬新なものの見方をする人が多く、そう言うものの見方ができるのは素晴らしいことだと個人的には思っているのだが、世の中的にはまだまだ理解が足りないようで、受け入れてもらえないという彼らの不満はかなりのものがある。こういう不満は別に大学に限った話ではなさそうで、本屋の新書コーナーなどにフラフラっと出向くと、「若者はなぜ会社を辞めるのか」「職場崩壊」「職場のうつ」といった内容の本が多く並んでいることに気がつく。
南自身も幼少時代から相当に変人だった(いや、むしろ変人であるべきと勝手に思いこんでいた)ので、その気持ちは少なからず分かる。それでかなり悩んだ時期もあったが、最近は大分あきらめがついて適当に自己肯定モードで動くようにしている。飲み会の席で「どんなタイプの女優さんが好きですか」と聞かれても、空気を読まずに「緒川たまき」と答え、周りの反応を見て楽しむ。空気が読めないのは自分の才能だと信じて疑わない。先日、ひどいうつ状態から回復したある学生さんが飲み会の席で「最近、俺、どんな小さいことでも笑えるようになったんですよ」と話をしてくれた。なかなか大切なことだと思う。笑えるようになったら勝ちである。変な自分を思いっきり肯定して、笑って生きよう!