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  • 夏休みの科博/斎藤嘉博@クラス1955

     夏は昆虫の季節。子供たちの関心も宿題との関連で恐竜から虫へとシフトします。


     私たちの子供時代には郊外電車(こんな言葉ももう死語のようです)に20分ほど乗ればコナラやクヌギの沢山生えた武蔵野の雑木林で容易にさまざまの虫を捕ることが出来たものです。いや都会のなかの原っぱでも夏にはトンボやセミ、蝶、バッタがいました。
     いまはどこまで行ってもビルや団地の立ち並ぶ街。クワガタやカブトムシは親父と一緒に捕まえるもの、それを買うなんて想像も出来ませんでしたが、日本には100万匹を越えるクワガタが輸入されているのだそうです。でも、いまでも、ちょっと木の多い場所にあるクヌギの木に加工したペットボトルをしばりつけ、中に芳香のあるバナナの実または皮を入れておくと一晩で結構の数のカブトムシを捕獲できると博物館動物研究部の野村さんがディズカバリートーク(*)で教えてくれました。
    クワガタ.JPG

     男の子に人気のクワガタは日本館の2階に沖縄に生息するアマミノコギリクワガタ、ヤエヤマノコギリクワガタなど多くの亜種が展示されていて頭の部分が8倍ほどに拡大された模型もあります。(写真)
     これをみるとダーウィンならずとも環境の差で色や大顎の形に差のある様々な亜種ができることがよく分かります。外国種は地球館1階にヨーロッパミヤマ、パラワンオオヒナタクワガタなど沢山の標本があります。
     カブトムシも男の子の人気種。強いものへのあこがれ、喧嘩に使うあの長く伸びた強そうな角に魅せられるのでしょう。オオカブトムシは大きさの、ゾウカブトムシは重量の代表。子供たちは標本の前で、これはヘラクレス、これはサタン、ネプチューンと恐竜のときと同じようにおかあさんにその知識を披露しています。以前エクアドルにヘラクレスカブトムシを追った写真家栗林さんの映像がNHKで放映されたことがあります。そんな絵と標本を見比べていると南米まで出かけてその生態を見て蝶標本.JPGみたい気がします。
     カブトムシと並んでどちらかといえば女の子に人気なのが蝶。カラスアゲハの標本を集めたコーナーと、世界中の各種の蝶、蛾を集めたコーナーがあります。日本の国蝶オオムラサキをはじめ、アマゾンの華麗な大型のモルフォ蝶は見ているだけで楽しくなります(写真)。

     「蝶と蛾はどこが違うの?」。「蝶はヒル、蛾はヨル飛ぶの」「蝶は止まって蜜を吸うときに羽根を閉じてる」とあちこちから答が返ってきます。「ウン、正解。でも今の答えには例外も随分多いんです。比較的はっきりした違いは触覚の形。蝶の触覚は棍棒型と言ってすっと伸びた触角の先がちょっとふくらんでいるんだ。でも蛾の触角にはこんな風に色々な形があるんだネ」と絵を見せると「フーン」。
     博物館に生きたものはいませんが、その代わりに多くの種を比較して観察することができます。夏休みの科博は何時もとちょっと違った雰囲気のなか、好奇心の強い子供たちに囲まれて時間が過ぎていきます。私もその雰囲気を楽しみながらの夏でした。
     (*)ディズカバリートーク: 毎週土曜日と日曜日に博物館の研究者がテーマを決めて午前と午後の二回展示品を見ながらのやさしい解説トークを行なっています。こうした話を折々聞くことができるのもボランティアの嬉しいところでしょう。

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