横浜山手の文学散歩/井村英一@クラス1955
記>級会消息 (2009年度, class1955, 消息)
先日、横浜山手の文学散歩に出かけた。
山下公園から、港の見える丘公園に上がる。その入口に、横浜の俳人である大野林火の句碑
「白き巨船きたれり春も遠からじ」
がある。
公園を出ると、すぐ大佛次郎記念館が見える。
(写真1)
大佛次郎は横浜に生まれ、終生変ることのない愛情を故郷に寄せていた。
「霧笛」や「幻燈」に開花期の横浜を描いた。「鞍馬天狗」の作者として親しまれ、またフランスの政治的事件を扱った「パリ燃ゆ」等の作がある。
霧笛橋を渡ると、神奈川近代文学館がある。近代・現代文学では、神奈川ゆかりの文学者多数が大きな足跡を残してきた。横浜地区については、大佛次郎(霧笛・幻燈)、谷崎潤一郎(痴人の愛)、中島敦(カメレオン日記)など10人の作家の肉筆原稿が展示されている。別棟の閲覧室の入口に、ひときわ大きな染井吉野の古木(写真2)と句碑がある。
「ややは冷え来し芸亭(ウンテイ)のさくらかな」
題字は初代館長である中野孝次、句は横浜の俳人である古沢太穂のもの。芸亭(ウンテイ)とは、奈良時代末期に一般の人に公開された日本最古といわれる図書館の名前である。
山手本通りを歩いていき、フェリス女学院の手前で、汐汲坂と呼ばれる急坂を下りる。横浜学園(旧横浜高等女学校)の付属本町幼稚園の庭の中に、中島敦の「山月記」の文学碑がある。彼は、昭和8年から7年間横浜高等女学校に勤めていた。
静かな汐汲坂を下りきり、一歩外へ出ると、そこはもう元町の商店街で、喧騒の中であった。
2009年4月20日 記>級会消息