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  • 学生時代の思い出/濱崎襄二

    教養学部第1学年時代—-新制第1期生として

    昭和24年6月、東京大学教養学部(駒場キャンパス)理科Ⅰ類入学。  

    新制度第一期であったため、諸般の制度改変の遅れがあり、入試は5月初旬、入学式は6月下旬、7月から講義(授業)が始まった。文科と理科とを併せた入学生総数は約1800名。理科Ⅰ類の入学生数は約450名、10組に編成された。1~8組は、第一外国語は英語で第二外国語はドイツ語、9組は第一外国語がドイツ語で第二外国語が英語又はフランス語、10組は第一外国語がフランス語で第二外国語が英語又はドイツ語であった。

    3ヶ月の入学時期遅れがあったため、各科目授業は急ピッチで進められた。夏休みは短縮され、10月に前期試験、続いて後期に入った。木造校舎新築の槌音の中で、最後の第一高等学校第三学年(学生数約300名)と並立した状態で、しかし、新制度学制発足の息吹の中で、慌しく昭和24年度は過ぎ去った。

    教養学部第2学年時代—-学生運動の嵐の中で

    昭和25年4月になり、旧制高等学校が終焉し、新制度第二期学生が入学すると、駒場キャンパスには3600名の学生が犇めき、またも雰囲気が変わった。5月頃からキャンパス内ではストックホルム・アッピール支持、続いてレッドパージ反対の集団的学生運動が台頭した。5月25日、朝鮮戦争勃発の報。進学希望先の本郷キヤンパスの学部・学科に関する予備調査は進んでいた。

    夏休みの後には、レットパージ反対を掲げて前期試験ボイコットのストライキ運動に突入した。9月に頂点を迎えたこの運動は、教養学部発足の、新生の息吹を引き裂く事件であった。その終結の直後に進学学部・学科の振り分けが発表された。一喜一憂であった。

    工学部の特別授業

    昭和25年10月、進学する学部・学科の振り分け。工学部講義の受講開始。電気工学科進学決定の後、第九大教室(第一高等学校講堂)で、工学部講義「電気工学概論」を大山松次郎先生から受ける事になった。教養学部の講義とは雰囲気が異なった講義であった。大山先生は工学部長の要職に就任されていたので、中途から、山下英男先生の講義を受けた。物理学の講義でしか知らなかった電気磁気は、実務を処理しなければならない工学では、より実験的に、より即物的に考えなければならなかった。

    工学部電気工学科3年生時代–昼休みダンスやコーラスの練習など

    昭和26年4月、工学部電気工学科に進学。本郷キャンパスに移る。初日、工学部第三号館前に集まると、瀬藤象二先生の最終講義の立て看板が掲げられていた。電気工学科には旧制度学制の電気工学科第二学年と第三学年とが並立進行していた。電気工学科進学のクラス40名が一堂に会した最初の機会であった。電気工学科の概要説明、紹介、そして、事務室、教室、図書室、実験室、工作場、等の見学。山上会議所での第一回クラス・コンパ。教養学部と異なった旧い伝統の匂い。電気工学科では新制度の進学生は新人類であり、何事につけても話題を提供したようであった。週4日の午後全時間を当てられた基礎実験の忙しい日々。9月、サンフランシスコ講和条約締結の報。クラス全員参加の実習旅行の楽しかった日々。野球などの運動会、コーラス、社交ダンス講習など。

    工学部電気工学科4年生時代—-新制第1期生として卒業

    昭和27年4月になると、旧制度学制の第三学年と並立のまま、新制度学制の第二期生が進学。その頃から東京は著しく騒しくなり、5月に血のメーデー事件が発生した。同級生が巻き込まれたのは痛恨であった。この事件とその余波は卒業後も当分の間続いた。6月に朝鮮戦争の停戦、戦乱の終結。7~8月の約3週間、数名づつに分散して工場実習。旧制第三学年学生と共演の実習報告会。10月には卒業論文を書くために、旧制第三学年と共に各研究室に配属された。初めての工学部研究室の経験であった。

    並行して就職希望調査の個別面接が進められていた。旧制学生56名を加えて総勢100名に近い電気工学科未曾有の多人数学生の就職探しであった。講和条約後、日本の工業界は急速に復興の兆しが進んで来たものの、未だ大学卒業者の採用人数を増加する事には慎重であった。新人類と見なされていた、しかし極めて優秀な同級生が内心不本意な就職に決断して踏み切る姿を見るのは、敗戦とは言え無念であった。

    昭和28年が明けると、卒業論文製作に明け暮れた。卒業式で大山先生から、「今日まで育てて呉れた人々、取り分け親に感謝する事。世の中に出ても電気工学科と大きなパイプで繋がっている事、を忘れないように」との訓示を受けた。

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