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  • 雑感/広瀬啓吉

    昨年9月26日~30日に、幕張メッセ国際会議場で、私の研究分野である音声言語情報処理関係の最大規模の国際会議INTERSPEECH 2010を開催した。1000人を超える会議ともなると準備が大変で、日本の音声言語情報処理の研究者30人に実行委員をお願いし、3年以上もかけて開催にこぎつけた。いずれも、第1線で活躍している研究者で、多忙の中の献身的な協力には頭が下がる思いである。海外と比べ、日本は、こういった会議を、きちんとこなすことで知られているが、そこには、多くの人々が協力して仕事を進めることに長けているという特質があろう。この会議は、毎年8月末から9月の適宜の時期に、各国で開催されているもので、研究発表のやり方等は毎年同じであるが、進め方にはお国柄が出て、参加者から好不評がある。今回もそうであったが、日本での開催は大体において好評を博すことが多い。協力して、効率的に仕事を進められるというのが、日本の競争力の1つの重要な要素である気がしている。

    世界の音声言語情報処理研究者の集まりとして、International Speech Communication Association (ISCA)があり、INTERSPEECHはISCAの主催で開催される。但し、ISCAは学会というよりは、親睦組織的なところがあり、INTERSPEECHの実行は開催国の実行委員会が全責任を取り、それに対しISCAは色々と口出しをする。ISCAの意思決定は、14名のBoard委員の協議で行われ、INTERSPEECHやその他もろもろのことが議論されるが、その議論が、委員のお国柄が出ていて大変面白い。ドイツ人は、規則でどうなっているかをいつも気にしており、規則に書いてあると安心する。オランダ人やアメリカ人は実務的、ギリシャ人は熱心だがおおらか、といったようである。世界各国に散らばっているので、なかなか集まる機会がなく、INTERSPEECHの前後に2日間かけて議論をする。2日間もかけるのだから、議論が進んで、色々は事が決まるかと思うと、そうではなく、日本では考えられないほどの議事進行のまずさで、結局、始めの議題で時間切れとなってしまう。日本人は私を含めて2人の委員がいるが、どうなっているんだろうねと、いつも話している。結局、基本となる考え方に、国(と個人)によるずれがあり、もともと議論好きな研究者なので、話が発散してしまうのである。それでも、何とか続いているのは、委員長であるポルトガル人(女性)の人柄によるところも多い。

    日本人は、何といっても几帳面であり、お互いの考え方もよく分かっている。工学部3号館に電気系があったときには、会議室に渋沢栄一氏の書になる「和をもって尊しとなす」の額が飾ってあったが、今は、倉庫に眠っているそうな。日本の活力の復活にも、これも忘れてはならない格言かと思いますので、そのうち陽の目を見るようにしたいものです。

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