ターミナル(2)/杉本雅則
3年前のコラムでアメリカ入国時のトラブルについて書いたが、その顛末をお話ししよう。
1998年のアメリカ出張の際、入国記録カード(I-94)の半券が現地航空機会社のカウンターで回収されなかった、というのがそもそもの始まりである。実はその後の約5年間は何事もなかったのだが、2003年くらいからトラブルが起き始めた。なので、最初は訳が全く分からなかったのである。
2006年に当時のパスポートの期限が切れ新しいパスポートに切り替わったものの、当然それで状況が変わるはずはなく、相変わらず乗り継ぎの飛行機には遅れるわ、同行者を待たせるわと、何かと肩身の狭い思いをしてきた。
これは何とかせねばとネット上で探してみると、未回収の半券を入国審査で渡せばよいとの情報に遭遇する。そこで、2007年9月リオデジャネイロ出張の折、JFK空港でのトランジット時に「連行」された別室にて実践。
私:これ、1998年に航空会社が回収し忘れた半券です。
入国審査官:ん、何だそれは?
私:いや、だから私の入国審査のトラブルの原因は、これだと思うのですが。
入:ふーん、そうか、じゃあ、いただいておこう。ついでにこの期限切れのパスポートは、もういらんだろ?もらうよ。
私:えっ。(せっかくいろんな国のスタンプが押してあるのに…)
というわけで、思い出深いパスポートごと回収されてしまった。
それから2ヶ月後、再びアメリカに出張する機会が来る。今度は意気揚々と入国審査へ。が、またまたあえなく別室へ「連行」。事情をいろいろ話すと「よく分からんが、不満があるならここに手紙を書きなさい」とU.S. Department of Homeland Security (DHS: アメリカ国土安全保障省)の住所が書かれた紙を一枚渡された。出張中にいろいろとこれまでの経過と苦情を書いて手紙を送ると、1、2カ月ほどして、自宅に手紙が来た。「あなたのrecordは現在処理中だ。ここに書かれているあなたのIDをDHSのwebsiteで入力し、処理の進捗状況を確かめてみるとよい。」とのこと。いやはや、何とも根気のいる話である。処理完了まで1カ月程度とあったので、それからしばらくの間、毎日1度は状況を確かめる日々。が、同じような問題人物がたくさんいるのか、単に仕事が遅いお役所なのかは不明だが、結局いつまで経っても”in progress”のままだったように記憶している。こうなったら、問題が解決されるまで意地でもアメリカには行くまいとは思っていたが、止むを得ぬ状況で行くたびに、状況が変わらぬことを確認する羽目になる。
さて、今年の3月、もはや鬼門の感さえ漂うアメリカ出張。入国審査では、同行者の熱い視線と同情を感じながら列を待つこと約10分。ようやく私の番になる。審査官が怪訝そうな顔をしながらいろいろと質問してくる。ほとんどの人がすぐに通過なのに、気のせいか長い。質問のたびにいやーな予感がよぎる。が、今回は「連行」されることなく通過。苦節6年、ここにようやく「無罪放免」となったのでありました。(で、結局良かったことと言えば、このネタでコラムが2つ書けたことくらいか?:-)
(杉本 雅則:工学系研究電気系工学専攻・准教授)