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  • 人生山あり谷ありsin カーブ/柴田直

    「人生sinカーブ」なんて話を卒業生にした。人生山あり谷ありで、絶頂のピークのときこそ注意しないと危ない。何をやってもうまく行くと有頂天になっていると、足元をすくわれ奈落の底に落ち込んでしまう。有名人、大企業、こんな例が巷のニュースにあふれている。逆にどん底のときこそチャンスである。何をやってもうまく行かないときこそ、しぶとく回りの状況を観察し、ちょっとしたチャンスを察知して細かく拾い上げていくと、それが大きな蓄積エネルギーとなりその後の大きな飛躍を生み出す・・・なんて、分かったような話をしたのであるが、実は自分も大学院生時代この大きなスウィングとどん底を経験した。若い純情な心が傷付き、音楽の趣味も変わってしまった。モーツアルトは悲しすぎて聴けないし、華麗すぎるショパンはダメ、誇大妄想狂的神経症のマーラーは体が受け付けなかった。チェンバロ伴奏のバッハのバイオリンソナタの一番とロ短調のフルートソナタ、こんな音楽だけがしみじみと心に入ってきた。こんな状態が1年半くらい続いたが、来日したアバード指揮のウィーン・フィルでベートベンの英雄を聴いたのがきっかけで立ち直った。若々しいアバードの指揮、それに暖かく柔らかく、しかもズッシリと響いてくるウィーン・フィルの音色がいまだに髣髴としてくる。さて、月日は流れ.........~

    自分もそろそろ還暦を迎える年齢となった。研究室の卒業生が一緒になってiPodを記念にプレゼントしてくれた。海外出張のとき、いつも何枚もCDを持って行くのを見ていたからだろう。そこで早速CDを入れた。マーラーのシンフォニーを7曲にショスタコービッチ、ワグナーのリングの一部、それに魔笛も、・・・といった具合に結構入れた。勿論音質重視でロスレスである。PC上のiTunesがHDを食って困る。当然、英雄も入れた。早速イヤホーンをつけて、うっとり聞き惚れながら学校へ行くと、秘書さんから「先生、若者みたいですね」と言われた。「それなら、もっと目立つように首から提げるか・・」なんて言ったら、「いや、ここぞと言うときに、『これが目に入らぬか』と取り出すのが良い。水戸黄門の印籠のように。」と学生が教えてくれた。「でも、先生。電車の中で歌いださないで下さい。」「ウッ!・・・そうだね^^!、そんなことするとおかしいと思われるものね・・・」なんとも美しい師弟愛にあふれる会話であった。

    さて、iPodには、Les Miserablesも入れた。89年に、ロンドンのパレス劇場でダフ屋から切符を買って見たのが最初、いっぺんで虜になってしまった。これはそのとき買った全曲版CDである。その後、何回か見たが、いつも感動して涙が止まらない。ウッ・・・これはヤバイ。つくばイクスプレスでiPodを装着している初老の頭バーコードおじさんが、洟と涙で顔をくしゃくしゃにしている図・・・・。これって、相当に異常だ。でもいいか、「まだ、花粉の時期は続いているんだ。」

    以下の、二つのサイトの図を合成。

    http://www.rheinbruecke.de/thema15.htm http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_gold/keitai/itemimg/3-616788.jpg

    (柴田 直:新領域創成科学研究科基盤情報学専攻・教授)

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