すばる/斉藤嘉博@クラス1955
記>級会消息 (2008年度, class1955, 消息)
前回につづいてもう一つ科学博物館の話題を提供しましょう。地球館の地下3階に降りていくとガリレオ・ガリレイが今から400年前に作った屈折型の望遠鏡(レプリカ)が置いてあります。
この筒を使って彼は始めて天体観測を行い、太陽の黒点、月表面の凹凸、そして木星に4個の衛星があることを発見しました。岩波文庫に全文が翻訳されている彼の研究報告書『星界の報告』(山田、谷訳)を読むと、カメラもパソコンもない当時の研究がいかに苦労の多いものであったかを知ることが出来ます。
この歴史的な望遠鏡の隣に1999年に完成した日本の誇る最新型望遠鏡「すばる」の1/20の模型が置かれています。反射鏡は直径8.2m厚さ20cm。その大きさを実感していただくために原寸の白い輪が頭上に吊られています。脇に置かれたタッチパネルでオリオン星雲、アンドロメダ銀河、渦巻き銀河M63などの絵に触れるとスバルの模型は当日のその星の方向に向きを変えて動きます。
四国のほぼ半分の面積しかないハワイ島には4000mを超える山が二つあります。その一つ、白い山という意のマウナケア山の頂は標高4,205m、富士山より大分高いのですが山頂まで四駆で上がることが出来ます。天体観測の好条件にめぐまれたここにはアメリカはもちろん、カナダ、オーストラリアなど各国の天体観測所がひしめいていて、その一角に上記の「すばる」があります。「星はすばる、ひこぼし、ゆうづづ、よばい星すこしおかし」とある枕草紙にちなんで名付けられたよし。
マウナケア山頂のすばる (左端) |
山頂の空気は薄く、同行した家内は酸素吸入のお世話になりましたが、ここから見る雲海に沈んでいく太陽の眺めはまことに雄大。そして夜になると満天の星。すばるの輝きも五個まで肉眼でみることが出来ます。いつも車に大口径の望遠鏡を積んで富士山から石廊崎へと星を楽しんでいる新井彰さんのような方は別にして、もう都会では天の川もほとんど見られなくなってしまいました。「すばる」で見た宇宙はガリレオの時代と全く様相を異にしています。冥王星は太陽系の惑星から準惑星に格下げとなってしまったし、木星には衛星63個、環が3本確認されています。
一度空を見上げて見ませんか。今東京でも天中にある夏の大三角形をみることができます。
2008年8月18日 記>級会消息