• 最近の記事

  • Multi-Language

  • ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の発足について/荒川泰彦

    東京大学では、昨年10月に、「ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構」が総長直属組織として発足いたしました。本機構は、既存部局の枠を越えて東京大学が擁するナノテク、量子科学、IT の「知」を結集するとともに、海外を含めた学外研究組織とも強い連携を図り、ナノ量子情報科学技術分野における世界的拠点の構築を目指しています。本機構には、本電気系からも、榊、大津、平川、平本、田中、高橋、岩本各先生が兼任(准)教授として所属されています。

    本機構は、科学技術振興調整費先端融合領域イノベーション創出拠点プログラムの一つとして採択された「ナノ量子情報エレクトロニクス連携拠点」プロジェクトを推進する中核的研究組織となっています。本プロジェクトの実施期間は10年ですが、3年後に厳しい評価を受けることになっています。最初の3年間は政府からの予算は毎年5億円弱ですが、もし、3年後の評価で生き残ることができれば、残り7年間は倍額の予算を得る予定です。

    本プロジェクトには、協働企業として、シャープ、NEC、日立製作所、富士通研究所に参画いただきました。それぞれの企業が駒場キャンパス内に「東大企業ラボ」を置き、特定の研究テーマを幹にしながら、広く東京大学のシーズを探索する、という新しい体制で産学協働研究開発を推進します。本プロジェクトは、企業が国の予算に対してマッチングファンドを用意することになっていますので、合計が上記相当額になるご負担を、各企業に分担していただいています。このようなことが可能になったのは、NEC の佐々木会長、矢野社長、日立製作所の庄山会長、古川社長、川上副社長、富士通研究所の藤崎会長、村野社長をはじめとする本同窓会諸先輩のご支援によるものであります。この場を借りて御礼申し上げます。

    将来のユビキタス情報社会では、現状をはるかに凌(しの)ぐブロードバンド化、安全性、超低消費電力を備えた情報ネットワーク技術が必要となります。本機構では、量子ドットをはじめとするナノ技術、量子科学、IT の先端領域を融合し、ブロードバンド・省エネに向けた次世代デバイスを開発するとともに、より高度な量子暗号通信、さらには量子計算機の動作実証に向けた次世代量子ナノデバイス技術の確立を図ります。これにより、不連続的な技術革新を成し遂げ、将来の高度なユビキタス情報化社会の実現に向けたイノベーション創出を目指します。

    また、同時にシステム改革に向けたさまざまな新しい試みも構想していきます。本機構においては、全学の統一ルールを尊重しつつ、学内特区的要素も加味してスムーズな知財移転を進め、イノベーション創出の加速を図ります。さらに、新たな人材育成のプログラムとして、理学、工学の枠を超えた横断的な教育プログラムや技術経営なども含め、全体を俯瞰(ふかん)できる垂直・水平統合的な人材の育成を行います。皆様のご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

    (昭和50年電子卒 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長、先端科学技術研究センター教授)

    コメントはまだありません »
    Leave a comment

    コメント投稿後は、管理者の承認まで少しお待ち下さい。また、コメント内容によっては掲載を行わない場合もあります。