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新井レポート

偏光顕微鏡による岩石の偏光観察/新井 彰

  今から70年前の昔、私は旧制静岡高等学校理科に在学していました。
  地学の望月勝海教授は東大理学部地質学科出身の気鋭の学者で、研究上の代表作「大東亜地体構造論」1943は、25年後に地球科学に革新をもたらしたプレートテクトニクスの考えを先取りした世界に誇れる労作とされ、教育上の代表作「地質学入門1936新版1956」は教科書として広く採用され50万部以上出版されました。

  ある日の地学の時間に、偏光顕微鏡による岩石薄片の偏光観察実習がありました。地学教室に何台もの偏光顕微鏡が置かれ、接眼鏡を覗くと万華鏡のように変幻自在に色が変化する偏光現象が見られ、感動しました。

  その時の感動を最近もう一度経験してみたいと思いました。

  本格的な偏光顕微鏡はとても高価で手が出ないので、ずっと安価な実体顕微鏡(普通の顕微鏡)を購入。偏光装置の部分は部品(2枚の偏光板、プレパラート回転装置、偏光板回転装置など)をネットで取り寄せ自分で組み立てて実体顕微鏡に取り付け、偏光顕微鏡としました。(image1)

  フレキシブル三脚に取り付けたiPhoneで偏光現象をVideoに撮りました。(image0)
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  Videoの1つは、岩石標本の上下にある偏光板の偏光方向を90°に交叉させ(直行ニコル)、プレパラートを手動で360°回転した場合のもの。(video1)

  もう一つのVideoはプレパラートは固定して、片方の偏光板を手動で360°回転して色の変化を撮ったものです。(video2)
  
video1
video2

  この岩石はかんらん岩で、Amazonで取り寄せた24種の岩石薄片プレパラートのうち、一番見栄えのする色の変化を見せました。

  こんな微細な世界でも自然は、更に大袈裟に言えば宇宙は、不思議だ、素晴らしい、美しい、壮大だ、、、と感じてしまいます。

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苧環(をだまき)の花のこと/新井 彰

  コロナの影響で、毎日のように通っていた近くのスポーツジムがクローズになってしまったので、脚の悪い家内のリハビリを兼ねて近所を2人でウォーキングすることにしました。
  日によって経路を変えてウォーキングしていると、庭に草花を育てている家が意外に多く、丁度花の咲く季節でもあり目を楽しませてくれます。その中に、この綺麗な花はあまり見たことがないけど何という花なのだろうと思う花がありました(写真)。おだまき.png
おだまき(苧環)
  LINEの、私達家族7人だけがメンバーとなっているトークに「これは何という花でしょう?」と書き込んで写真を送ったら、間もなく次女からレスポンスがあり「お父さんの写真の花はオダマキです。形が苧環(オダマキ、糸を巻く器具)に似ているのでこの名前がついたらしいよ」とありました。

  あー これがオダマキなのか。オダマキと言えば直ぐ思い浮かぶのは、静御前が頼朝の前で舞を舞って歌ったという

  しずやしず しずのをだまきくり返し 昔を今になすよしもがな

です。それから次に私が思い出すのは、何年か前に「伊勢物語」を拾い読みして読んでいたら、伊勢物語の三十二段が しずのをだまきという表題で、

  いにしえの しずのをだまきくり返し 昔を今になすよしもがな

というそっくりな歌があるのを発見し、びっくりしたことです。

この歌の解説の最後に、

なお、この歌は「しずやしず」と初句を換えて静御前が頼朝の前で義経を偲んで白拍子の舞を舞いつつ歌った心意気を伝えて、有名である。とあり、伊勢物語の歌が元歌であることが分かります。いま伊勢物語の歌の解説を読み直してみると、

しず: 倭文。古代の織物で麻、苧(を)等の糸を青や赤に染めて横糸にし、乱れ模様に織り出したもの。「しず」が古代の織物なので「いにしえの」は「しず」の枕詞。

をだまき: 「を(苧)」は糸の材料。「たまき」は玉巻き。麻や苧を細く長く糸によりあわせて、中が空洞になるように丸く巻いたもの。糸を順々に巻き絡みつけておいて端から次第に引き出すので、糸を巻きつけ、また繰り出す意から、「くりかえし」の序詞にする。

とあって、今になってやっと歌の全体の意味が分かった次第でした。

静御前が歌った歌の方が、しず や しず しずの・・・と「しず」が「くりかえ」されてよりリズム感があるし、義経・静御前のドラマチックなエピソードともあいまって元歌より秀歌として有名になったのでしょう。

  次に私の頭に浮かんだ事は、この「オダマキの花」は髙橋郁雄大兄の「季節の花便り」に既に紹介されているのではないだろうかという事でした。そこで今までの大兄の「季節の花便り」を遡って読み直して行きました。やっぱりありました。2010616日の「5月の花便り」に:

苧環(オダマキ)(5月13日撮影、伊豆の国市・大仁瑞泉卿にて)
 苧環とは、中が空洞になった糸巻きのこと。形が似ていることから、この名前がついたという。白拍子の静御前が鎌倉八幡宮で頼朝の前で舞を舞った時に歌った歌に「しづやしづ しづのおだまき 繰り返し、昔を今に なすよしもがな」があるのが、有名のようです。
(花言葉=必ず手に入れる・愚か・断固として勝つ)、花色には紫・赤・白があるようですが、各々に花言葉があるようです。(紫の花言葉=勝利への決意・捨てられた恋)(赤の花言葉=素直)(白の花言葉=あの方が気がかり)

  10年も前に完璧な解説で紹介されています、さすがです。