【1号】第21回 同窓懇親会記事

5月19日午後1時より、戦後永らく米軍に接収されており、昨年暮に返還された一ツ橋学士会館において、第21回の東大電気工学科同窓懇親会が催された。まず講堂に一同参集して同窓会発会式が行われ、山下英男教授(大12.3)から発会式挨拶を兼ねて、同窓会準備会の経過報告、名簿発行の経緯、会計報告などが行われた。ついで会則案および評議員案が提出されて、いずれも満場一致拍手の中に可決された。その後、梶浦浩二郎氏(大11.3)が発言を求められて同窓会発会の祝訶を述べられ、更に理事会などが軌道に乗るまでには、なお色々な仕事が残されているが準備会役員で引続き代行していただきたいと要請された。

以上、和気藹々の中に発会式を終え、引続いて現況報告会に入った。工学部について、山下英男教授から第1表の如き報告があり、次に山田直平教授(昭6.3)から、新制大学院に関する第2表の如き現況報告が行われた。森脇義雄教授(昭8.3)からは生産技術研究第3部に関する現況報告(第3表)があり、星合正治教授(大11.3)は、 3年間生産技術研究所長の職にあり、ロケットを始めとして多くの業績を拳げられたが、本年3月所長を退官されたこと、またElectronicsの講座が増設されて、教授、助教授の定員が各1名ずつ増加し、斎藤成文助教授(昭16、12)が近く昇任される予定であることなどが報告された。

現況報告会終了後、直ちに大食堂に移り、ビールパーティが賑やかに行われた。恒例のテーブルスピーチは、古賀逸策教授(大12.3)の司会で行われた。渋沢元治先生(明33.7)は奥様の3回忌の法要のため欠席されたので、録音テープにふきこんだメッセージが披露された「会員が随分増加したが、春秋2回に分けてもよいから全員出席できるようにしたい」との相変らず元気なお声が、スピーカーから流れ出て一同感銘深く拝聴した。

次に今般文化勲章を受賞された八木秀次先生(明42.7)は、まず同窓会の発会を祝され、Electronics、原子力などは皆電気工学の領分と考えることができるから、各部門の人々と連繋を密にして、広範囲な分野で大いに頂張ろうと、若者を凌ぐ御元気な発言があった。また高井亮太郎氏(大9.7)は、「若い人達は老人を敬うのはよいが、決して恐れず新しい知識を活用して大いに頑張ってもらいたい」と後輩を鼓舞された。

次に大山松次郎先生(大8.7)が立たれ、電力中研も施設の増設など資金需要が多く、借金して回っており、事務員のような仕事をしているが事務員になり下らず、大いに働きたいと最近の心境をお話になった。経済企画庁で活躍しておられる大来佐武郎氏(昭12.3)は、電気以外の分野に進出する人も、卒業生中の1~2%は出てもよいのではないかとの所感を述べられた。原子力委員の候補にのぼった瀬藤象二先生(大4.7)は、東芝にいる者が政策を決定するような役につくことはできないと、委員講退の理由を説明され、米英共に原子炉の売込みに躍起になっているが、本当のところをよく研究して上手に利用しないと、なかなか商売のうまい連中だからだまされる恐れがあるとの感想を述べられた。

次に新卒一同を代表して佐藤一夫君(原子力研)が、電気工学の名に恥じないように頑張りますと頼もしい後輩ぶりを発揮してくれた。防衛大学の麻生忠雄氏(Ⅱ昭23.3)は、防衛大学の情況を説明して、後輩の進出を希望し、三菱電機の加藤威夫氏(大9.7)は、 Three S Teamの一員として渡米した際の感意を、西洋料理から原子力に至るまで色々と述べられた。

最後に中途から出席された星合正治先生が、同窓会も盛んになり、もっと広い室が欲しい程になったが来年も大いに盛大にやろうと挨拶されてテーブルスピーチを終り、出席者中最長老の須山正膚氏(明40.7)の音頭で電気工学科の万歳を三唱し、 3時間48分なごりを惜しみつつ散会した。当日の出席者は334名(出席予定者420名の79.5%)であった。

<1号 昭32(1957)>

コメントはこちらから