【9号】東京大学宇宙航空研究所創設について/高木昇

昭和30年来、東京大学生産技術研究所では観 測ロケット研究班を結成し、これが中心となっ て観測ロケットによる宇宙科学の研究にかなり の成果を収めてきた。しかし宇宙科学の進歩は きわめて急速であり、これに対処するための将 来計画を勘案すると、現状のままでは不十分で、 なお一層の発展が期待できる組織が研究者の間 で要望されてきた。

昭和37年5月、日本学術会議第36回総会で は、宇宙科学の推進計画の実施と宇宙科学研究 所の設置についての勧告が行なわれた。その具 体的方策の要点は (イ)一般地上観測を主体とする研究、並びに 宇宙工学の基礎的研究の拡充強化 、(ロ)ロケットその他を利用する研究を組織化 するための宇宙科学研究所の設置、 の2点に集約されている。

同じく昭和37年5月、宇宙開発審議会で諮問 第1号「宇宙開発推進の基本方策」に対する答 申の中で、宇宙開発の体制として研究所の新設 とそれが広く関係各分野の科学技術者の利用に 供しうるものであることを勧めている。

以上の情勢から文部省は東京大学に宇宙科学 研究所の新設を要望してきた。東京大学ではこ れを慎重に考慮検討し、従来の航空研究所を発 展的に改組し、これに生産技術研究所の観測ロ ケット班を移し、更に宇宙科学部門を新設する 宇宙航空研究所を昭和39年度より新設するこ とになった。

すなわち本研究所の目的は宇宙科学、宇宙工 学及び航空に関する学理及びその応用の研究を 行なう共同利用の研究所であって、更に観測部 を設けてロケットの発射実験を行ない、基礎開発 研究の成果が直ちに得られるようにしてある。

研究所完成時には39の研究部門となり、その うち、宇宙科学7部門、宇宙工学8部門が増強 される予定である。39年度には旧航研と生研か ら部門の振替えのみ認められたが、40年度には 新設3部門、振替え1部門が実現した。完成に はあと新設7部門、振替1部門を必要とし、今 後更に完成に努力する予定である。

実験場は東大生産技術研究所が着手したもの を宇宙研に移管し、その整備を進めている。鹿 児島県内之浦町にある鹿児島宇宙空間観測所で は観測ロケットの打ち上げを行ない、秋田県能 代にあるロケット実験場ではロケットエンジン の地上試験を実施している。

39、40年は太陽活動静穏年にあたり、国際的 規模での観測が要請されているために、予算も 大型になり、39年度は観測ロケットに12億円、 実験場整備に5億円、計約17億円、40年度は ロケット費用が20億円、実験場整備費5億円、 計25億円が得られ、それにこたえる成果をあげ たいと考えている。

<9号 昭40(1965)>

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