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  • 安達芳夫先生を偲ぶ/生駒俊明

    東京大学名誉教授、安達芳夫先生は平成21年5月22日、肺炎のため享年86歳にて永眠されました。ご生前にひとかたならぬお世話になりましたものの一人として、謹んで哀悼の意を表します。

     先生は、大正12年1月4日香川県にお生まれになりました。旧制第六高等学校理科甲類を経て、昭和19年9月東京帝国大学第二工学部電気工学科を卒業され、昭和21年5月東京帝国大学第二工学部講師に任ぜられました。昭和22年7月東京帝国大学助教授に昇任され、昭和24年5月に生産技術研究所発足とともに同研究所勤務となられました。そして昭和38年1月東京大学教授に昇任されました。昭和58年4月定年により退官後は、昭和63年3月まで電気通信大学教授、平成5年3月まで大同工業大学教授として教育、研究に従事されました。さらに大同工業大学を退職後は社団法人日本プリント回路工業会の技術顧問としてご活躍になりました。

     先生の永年にわたるご研究の特色は、電子管と半導体電子デバイスの分野において常に時代の要請に呼応し、デバイス特性を支配する基礎的な物理現象と電子材料の研究からデバイス応用に至るまで、広範な研究を精力的に実践されたところにあります。

     先生の初期のご研究は、電子管における陰極材料から真空中への熱電子放出に関するものでしたが、その後、トランジスタの発明直後から半導体電子工学の分野に専門を移されました。まさに先見の明といえましょう。ゲルマニウム単結晶の成長で日本では当時最も純度の高い半導体単結晶を得るのに成功されました。またトランジスタの重要性にいち早く着目され、その交流特性やスイッチ特性を実験的に明らかにされ、さらにトランジスタをはじめとする電子部品の信頼性に関しても極値統計的手法の応用を図り、その信頼性を表す新しい関数を導入するなどの研究を行われました。

     また電界効果トランジスタの重要性を看破し、まずシリコン電界効果トランジスタの低周波雑音の研究を行い、低周波雑音と界面準位との相関を実験・理論の両面から明らかにされました。さらに化合物半導体の界面状態に関しても研究を進め、マイクロ波用ガリウム砒素電界効果トランジスタを試作し、当時の世界でトップレベルの動作周波数が得られることを示されました。さらにガリウム砒素中の結晶欠陥の物性を理論・実験の両面から詳しく研究し、高速素子や発光素子として重要な化合物半導体デバイスの進展に基礎的学問の面から貢献されました。

     振り返りますと先生は常に飾らないご性格で決して偉ぶるところがなく、いつも熱心に真摯な姿勢をもって後進の指導にあたられました。当時の研究室は現在の大学の研究施設と比較するとかなり劣悪な環境ではありましたが、半導体黎明期に先生とトランジスタの研究でご一緒できましたことを誇りに思っております。

     また先生は、学会や電子部品の標準化などの活動にも永年にわたって惜しみなく時間と精力を注がれました。特に昭和61年より4年にわたり日本プリント回路学会(現エレクトロニクス実装学会)の会長を務められ、さらに電子通信学会(現電子情報通信学会)の評議員、同学会規格調査委員会TC93デザインオートメーション専門委員会委員長などを歴任されています。

     このようなご功績に対して、安達先生は平成11年秋の叙勲において、勲三等旭日中綬章を受章され、またご逝去にあたり正四位に叙せられました。

     ここに安達先生のご功績と温かなお人柄を偲び、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

    (昭和38年電子卒、43年博士課程修了、東京大学名誉教授) 東京大学名誉教授、安達芳夫先生は平成21年5月22日、肺炎のため享年86歳にて永眠されました。ご生前にひとかたならぬお世話になりましたものの一人として、謹んで哀悼の意を表します。

     先生は、大正12年1月4日香川県にお生まれになりました。旧制第六高等学校理科甲類を経て、昭和19年9月東京帝国大学第二工学部電気工学科を卒業され、昭和21年5月東京帝国大学第二工学部講師に任ぜられました。昭和22年7月東京帝国大学助教授に昇任され、昭和24年5月に生産技術研究所発足とともに同研究所勤務となられました。そして昭和38年1月東京大学教授に昇任されました。昭和58年4月定年により退官後は、昭和63年3月まで電気通信大学教授、平成5年3月まで大同工業大学教授として教育、研究に従事されました。さらに大同工業大学を退職後は社団法人日本プリント回路工業会の技術顧問としてご活躍になりました。

     先生の永年にわたるご研究の特色は、電子管と半導体電子デバイスの分野において常に時代の要請に呼応し、デバイス特性を支配する基礎的な物理現象と電子材料の研究からデバイス応用に至るまで、広範な研究を精力的に実践されたところにあります。

     先生の初期のご研究は、電子管における陰極材料から真空中への熱電子放出に関するものでしたが、その後、トランジスタの発明直後から半導体電子工学の分野に専門を移されました。まさに先見の明といえましょう。ゲルマニウム単結晶の成長で日本では当時最も純度の高い半導体単結晶を得るのに成功されました。またトランジスタの重要性にいち早く着目され、その交流特性やスイッチ特性を実験的に明らかにされ、さらにトランジスタをはじめとする電子部品の信頼性に関しても極値統計的手法の応用を図り、その信頼性を表す新しい関数を導入するなどの研究を行われました。

     また電界効果トランジスタの重要性を看破し、まずシリコン電界効果トランジスタの低周波雑音の研究を行い、低周波雑音と界面準位との相関を実験・理論の両面から明らかにされました。さらに化合物半導体の界面状態に関しても研究を進め、マイクロ波用ガリウム砒素電界効果トランジスタを試作し、当時の世界でトップレベルの動作周波数が得られることを示されました。さらにガリウム砒素中の結晶欠陥の物性を理論・実験の両面から詳しく研究し、高速素子や発光素子として重要な化合物半導体デバイスの進展に基礎的学問の面から貢献されました。

     振り返りますと先生は常に飾らないご性格で決して偉ぶるところがなく、いつも熱心に真摯な姿勢をもって後進の指導にあたられました。当時の研究室は現在の大学の研究施設と比較するとかなり劣悪な環境ではありましたが、半導体黎明期に先生とトランジスタの研究でご一緒できましたことを誇りに思っております。

     また先生は、学会や電子部品の標準化などの活動にも永年にわたって惜しみなく時間と精力を注がれました。特に昭和61年より4年にわたり日本プリント回路学会(現エレクトロニクス実装学会)の会長を務められ、さらに電子通信学会(現電子情報通信学会)の評議員、同学会規格調査委員会TC93デザインオートメーション専門委員会委員長などを歴任されています。

     このようなご功績に対して、安達先生は平成11年秋の叙勲において、勲三等旭日中綬章を受章され、またご逝去にあたり正四位に叙せられました。

     ここに安達先生のご功績と温かなお人柄を偲び、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

    (昭和38年電子卒、43年博士課程修了、東京大学名誉教授)

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