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  • 人材のグローバリゼーション/桜井貴康

    近年、電気電子工学科の人気が低下していることは周知のとおりである。これは、本学だけの問題ではなく、日本の大学で共通している現象で、比較的機械系で人気が高い。しかし、そもそも、わが国では少子化が進んでいて、その中で理工系離れが進んでおり、その中での電気電子の不人気が取りざたされているわけである。それでは、電気電子は閑散としているかというと、そんなことは全くなく、例えば、私どもの研究室などは場所がないほど学生で賑わっており活気に溢れている。これは、人気不人気の統計が日本の学生に注目しているからで、海外学生からの人気は極めて高い。私なども、ほとんど毎日のように大学院入学希望の海外学生の研究室への受け入れを、研究室にもう場所がないという理由でお断りしている状況である。現在、研究室では半数以上が外国人、特に、中国系や韓国からの留学生が多い。

    図1はわが国の留学生数が、このところ急速に増加しているという状況を示しており、表1は、中でも、本学の電気・電子工学専攻の博士課程の留学生比率は40%近くになっていることを示している。私の経験では、大学院を出た学生は90%以上が日本企業に就職する。これが続けば今後多くの外国人が日本企業に就職する。これはうれしい数字であり、少子化による人材不足を補ってくれる可能性も秘めている。私どもの研究所でも、イスラム教信者の学生のために礼拝場所を用意したり、各種のフォーマットを英語化するなど国際化に勤めているが、今後大企業でも、外国人社員の対策は益々求められることだろう。

    一度、日本企業に就職する留学生であるが、わが国では永住権を保証する米国のグリーンカードに対応する制度がない。従って、何年かに一度ビザを更新する必要があり、次の更新はされるかされないか不透明さを抱えながら生活することになる。家族ができ、子供もできると、この不安定な身分は不安につながり、日本を出てゆく例もある。折角、教育を受け、日本語も堪能になった人材が会社を辞め第三国に流出してしまうのは悲しい。これの対策には、国民の合意や法的整備など国のやるべきことも残っている。今後、益々深刻化するエンジニア不足に、人材のグローバリゼーションで対処するためには、大学の取り組み重要なのは当然のことながら、産官学一体となった取り組みが必要な時期になっているように感じられる。

    (桜井 貴康:生産技術研究所・教授)

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